生田智子、長澤まさみの母に「東宝シンデレラというオーディションやってますよ」
1996年3月、ジュビロ磐田に所属していたプロサッカー選手・中山雅史さんと結婚して静岡での生活を始めた生田智子さん。2011年からは東京で暮らし、アスリートの妻、母、そして女優として多忙な毎日を送っている。
◆事務所の大先輩、司葉子さん、宮本信子さんと
-長澤まさみさんが東宝シンデレラに応募したのは生田さんと中山さんがきっかけだったそうですね-
「それはわからないですけれど、まさみちゃんのお母さんに『うちの事務所は東宝シンデレラというオーディションをやっていますよ』と話したのは記憶にあります。でも、本当に受けてグランプリになったと聞いたときは驚きました。まだ小学校6年生でしたからね」
-生田さんも同じ事務所(東宝芸能)にいらっしゃるので、長澤さんのご両親も心強かったでしょうね-
「どうでしょうか(笑)」
-後輩の方の面倒見がいい事務所というイメージがありますね-
「私も若い頃に先輩方に食事に連れて行っていただいたり、色々なことを教えていただいてすごくお世話になったんです。時々お会いする機会があると、『せっかく同じ会社にいるんだから、みんなで話しましょう』という流れを先輩の皆さんが作ってくださるんです。
司葉子さんや宮本信子さん、昨年亡くなられた星由里子さんのように、めったにお会いできない東宝の大先輩の女優さんと色々なお話をさせていただいています。歴史がある会社なので、歴代の大先輩たちがそういう空気を作って下さったんだなと思います」
-先輩に面倒を見てもらった後輩がやがて先輩になって、また後輩の面倒を見て…ということが受け継がれているのがいいですね-
「そうですね。司さんも宮本さんもお会いすると『あら元気?』と優しく声をかけてくださって、普通にお話しをさせていただいています。大先輩なのに後輩に親しげに声をかけてくださるというのはありがたいです。
星さんとはお仕事はなかなか一緒になることはなかったんですけれども、旅番組に一緒に行かせていただいたことがあって、そのときのことはすごく印象に残っています。旅に行くと普段は聞けないようなお話を聞くことが出来るので、とてもいい思い出です」
-東宝芸能は本当に大切に女優さんを育てているという感じがしますね-
「そうですね。昔いらっしゃった副社長さんが、『みんなうちの事務所からお嫁に行ってね』という方だったんです。会社の皆さんがそう思ってくださっているんじゃないかなって思います」
◆母親目線になってしまう?
近年は母親役が多くなったという生田さん。一昨年公開された映画『未成年だけどコドモじゃない』ではヒステリックな母親、3月15日に公開される映画『君は月夜に光り輝く』では“不治”の病を患った娘の母親、そして公開中の映画『あまのがわ』ではひとり娘を持つシングルマザーのキャリアウーマンを演じている。
「最近は母親役を演じることが多くなったこともあって、どうしても親目線で見てしまうんですよね。共演した若い俳優さんたちは気になってしまうんです。食事もちゃんととっているのか心配になります。『あまり言っちゃいけないな』と思うんですけど、自分の子どもと同じように思えて(笑)」
-公開中の映画『あまのがわ』ではバリバリのキャリアウーマンで、何事にもきちんとした母親役でしたが、実際は?-
「全く逆ですね。きちんとしなければと思いますけれどダメです(笑)。それにキャリアウーマンというのは経験したことがないので、『こうなんじゃないかな』というイメージをふくらませて演じました」
-クールで端正なルックスなのでキャリアウーマンが合いますね-
「きつくてしっかり者の役柄が多いんですけど、実際は真逆ですね。スタッフに聞いてもらえばよくわかると思いますけど、きょうも朝からずっと面白い話をしていて、『サザエさんみたい』って言われました(笑)」
-『あまのがわ』の撮影はいつ頃だったんですか-
「一昨年の11月です。もう1年以上経っていますから、やっと公開という感じですね。最近は舞台あいさつなどで監督やキャストの皆さんとお会いする機会があるので、懐かしい気持ちになります」
-撮影で印象に残ってることは?-
「冒頭の空港のシーンですね。初日に撮影したのが空港のシーンだったんです。娘をおばあちゃんのところに連れて行くというシーンだったんですけど、そこで母娘の関係ができたかなという感覚はありましたね。桃子(福地桃子)ちゃんがものすごく頑張っていたので、その姿を見て自然に母親の気持ちになれましたね」
-実生活でもお子さんがいらっしゃいますが、オーバーラップすることはありました?-
「かぶりますね。女の子なので、『あと数年経ったらこうなるのかなぁ』とか思いました。今中学生なので、史織ちゃんの年齢になるまで、あっという間でしょうね(笑)」
※映画『あまのがわ』
母(生田智子)と2人で暮らす高校生の史織(福地桃子)は、母に大好きな祭の太鼓を禁止され、何もかもイヤになって不登校となり、心を閉ざしてしまう。祖母の入院をきっかけに祖母が暮らす屋久島を訪れた史織は、偶然出会った会話ができるロボットに次第に心を開いていく。しかし、そのロボットには秘密が…。
◆お皿を投げつけ、大暴れ??
-映画『未成年だけどコドモじゃない』のお母さん役も印象的でした-
「そうですね。娘には『その通りだよ』って言われちゃいました(笑)。お皿を投げつけたりはしませんけど、叱ることはしょっちゅうなので」
-出て行った夫に顔が似ているから息子が嫌いというのはすごいですよね-
「息子役が中島健人君ですからね。『健人君の顔が嫌いってどういうこと?』って(笑)。実際の健人君はすごく素敵な方で、短い時間ではありましたけど、色々お話させていただきました」
-すごく迫力があるシーンでした-
「そうですね。あんなに激しい役は初めてでした。撮影には割れないお皿を用意していたのに割れてしまったんです。割れないと思っていたので、予備のお皿もそんなに用意していなかったんですよね。それで急遽(きゅうきょ)別の物にあたることになったんです。でも、割れたお皿の破片がカメラの前に飛んで、『今の良かったですよ』ってカメラマンの方がおっしゃっていました。偶然ですけど、そういうこともあるんですね(笑)」
-普段のストレス解消法は?-
「フラメンコです。基本的に踊りが好きなんです。子供の頃から習っていましたし、部活もダンス部で大学も舞踊科だったので。からだを動かすということはとても楽しいですし、踊りは日々の生活のことを全部忘れさせてくれて“無”になれるんですよね。そのことだけ考えられる時間なので、それが好きです」
-フラメンコの発表会やステージもあるのですか-
「はい、出ています。先生が10代からの友だちで、大学では後輩という長い付き合いなので。今は彼女の生徒さんたちのカンパニーの一員に入れていただいています。ステージや発表の場に向かって頑張っています。フラメンコは年齢を重ねると重ねただけ、また違う魅力とか味が出てくるものなので、年をとってもできるんですよね。ただ、シルエット的には若い人が衣装を着た方がやっぱり美しいですけどね(笑)」
◆結婚記念日のバラの花束はゲンかつぎ
中山さんと結婚23年目を迎えた生田さん。2011年には、プラチナのように永遠に色あせず絆を深めている夫婦に送られる「第4回 プラチナ夫婦アワード」を受賞。結婚記念日には中山さんが年を重ねるごとに本数を増やしてバラの花束を生田さんにプレゼントするというエピソードも紹介された。
-毎年結婚記念日にはバラの花束をプレゼントしてくださるそうですね-
「はい。近年は赤1本で10歳と数えて、あとは白でということになっています(笑)」
-中山さんは続けているところがすごいですね-
「それはゲンかつぎだと思います。ゲンかつぎをしないと安心できないタイプなんですよ (笑)。年末は自分がトイレとお風呂の掃除をしないとダメだとか。たとえば、若いときは試合に行くパンツはこれだとか。試合に勝ったときに持っていたバッグは負けるまでそのバッグを持ち続けていましたからね。以前よりは少なくなったかもしれませんが、今も色々あるんだと思いますよ(笑)」
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快活に話す笑顔が美しい。アスリートの妻、ティーンエイジャーの子を持つ母、女優として多忙な日々のなか、フラメンコのレッスンに通い、アスリートフードマイスター3級の資格に続き、ギフト・ラッピングコーディネーターの資格も取得。チャレンジ精神旺盛でかっこいい。(津島令子)
ヘアメイク:室岡洋希(スリーピース)
スタイリスト:加藤 万紀子
衣装協力:セットアップ RE syu Ryu
映画『あまのがわ』公開中
配給:アークエンタテインメント
監督:古新舜 出演:福地桃子 杉本彩 生田智子 水野久美 他