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トヨタのタナック、今季初優勝!「全てがうまくいった」【WRC:ラリー・スウェーデン最終結果】

WRC(FIA世界ラリー選手権)、第2戦「ラリー・スウェーデン(2月14日~17日開催)」の最終日が開催された。

週末を通じて日中の気温が高く、午前と午後の路面コンディションがまったく違う難しいラリーとなり、多くのドライバーが苦しんだ中、優勝を飾ったのはトヨタのオット・タナックだった。

©TOYOTA GAZOO Racing

総合結果は、1位オット・タナック(トヨタ)、2位エサペッカ・ラッピ(シトロエン)/トップから53秒7遅れ、3位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同56秒7遅れ、4位アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)/同1分5秒4遅れ、5位エルフィン・エバンス(フォード)/同1分8秒2遅れ、6位クリス・ミーク(トヨタ)/同1分38秒8遅れ、7位セバスチャン・ローブ(ヒュンダイ)/同1分49秒7遅れ、8位ポンタス・ティデマンド(フォード)/3分37秒7遅れ、となった。

◆トヨタ、タナックともに首位浮上

最初のSS17でステージトップを獲得したのは、トヨタのヤリ-マティ・ラトバラ。金曜日最後のSS8で雪壁にぶつかることがなければ、間違いなく表彰台を争う位置にいたが、その後も土曜日のSS9でステージトップを獲得するなど、この週末を通じてWRC最多出場となる197回目のドライバーらしい速さを見せた。

また、このSS17では4位にいたヌービル(ヒュンダイ)が、ミケルセン(ヒュンダイ)を逆転して3位に浮上。これにより、2位ラッピ(シトロエン)との差は2秒5となり、この2人のドライバーの間で一切手を抜けない真剣勝負が続いた。

SS18ではエバンス(フォード)がステージトップを獲得。2位にはラッピ(シトロエン)が続き、ステージ5位となったヌービル(ヒュンダイ)との差を4秒4差に広げた。

しかし、最後のパワーステージで十分逆転可能なタイムであり、更にパワーステージはステージ1位から5位のドライバーにドライバーポイントが加算されることもあるため、さらに勝負は混沌としていった。

そして最後のパワーステージ。ステージトップを獲得したのはタナック(トヨタ)。これにより優勝の25ポイントに加えて、パワーステージの5ポイントも加算するフルポイント獲得で、優勝を決めた。

©WRC

ステージ2位にはヒュンダイのヌービルが続き、シトロエンのラッピはステージ5位に沈んだが、ヌービルとの差は3秒差に詰められただけで、見事総合2位を守った。

この週末は、セバスチャン・オジェ(シトロエン)、ラトバラ(トヨタ)、ティーム・スンニネン(フォード)と、ランキング争い上位のドライバーたちがデイリタイアになったこともあり、ドライバーズランキングは大きく変動した。

ドライバーズランキング1位にはタナック(トヨタ)/47ポイントが浮上。2位ヌービル(ヒュンダイ)/40ポイント、3位オジェ(シトロエン)/31ポイント、4位ミーク(トヨタ)/21ポイント、5位ラッピ(シトロエン)/19ポイント、6位ローブ(ヒュンダイ)/18ポイントと続く。

マニュファクチュアラーズタイトルもトヨタが逆転してトップに浮上した。1位トヨタ/58ポイント、2位ヒュンダイ/57ポイント、3位シトロエン/47ポイント、4位フォード/30ポイントとなった。

◆タナック「全てがうまくいった」

ラリー後の公式記者会見は以下の通り。

©TOYOTA GAZOO Racing

<タナック>

─―キャリア7勝目、そして初めての「ラリー・スウェーデン」勝利ですね。さらにチャンピオンシップもリードしました。満足の行く週末だったのではないですか。

「正直、最初から上手くいった週末だった。僕にとって最高に上手くいったのは金曜日の午前中。僕たちは間違いなく最高に良い状態で戦えたし、ドライビングを楽しめた。そこで小さくともリードできたのは大きかった。

午後は不利になることがわかっていたからね。金曜日午後が一番タフだった。ただ、そこで事故もミスもなく走り切ることができた。この午後も良くまとめたと思う。その日トップのスンニネンとはたった2秒差でいられたから。

土曜日の午前からは、自分たちのベストを最低限のリスクで走ることができた。マシンの状態も良く、そこからすべてが良くなっていった。いくつかのステージでは、戦う相手もなく多少つまらなく感じたほどだった。

マシンは素晴らしい。すべてが上手く回った。こうしたコンディションで、マシンのドライビングを楽しむことができたんだ」

─―最後のパワーステージではどの程度リスクを取りましたか。

「リスクらしいリスクは取らなかった。ただ、綺麗に走ることに専念した。ほぼ完璧とも言えるステージを、良いライン取りとリズムで走り切れた。本当に全てがうまくいった」

─―限界を引き出した箇所はありましたか。

「僕が思うに、限界まで引き出したステージはない。多分、一番限界に近かったのはパワーステージだ。それでも限界という感じではない。通常は、コンマ秒を争うが、今回の僕たちは最高の状態で推移していった。

僕たちは土曜日の路面コンディションが非常にトリッキーだった。ああいったコンディションで攻めた走りをするのは好きじゃない。もし僅差で戦っていたら、常に限界まで引き出していたと思うよ」

<ラッピ>

─―激しいバトルを制して2位獲得です。この「ラリー・スウェーデン」は自身5度目となる表彰台獲得。そしてシトロエン移籍後初の表彰台です。ラリーを振り返ると金曜日が大きな分岐点でしたね。(金曜日SS5で横転に近いスピンをして、ステージトップから35秒9遅れとなった)

「そうだね。僕にとっては表彰台に上がれたことだけで満足しなくちゃいけない。

まるで眼鏡を掛ける前と眼鏡をかけた後くらいに、金曜日と土曜日とであまりにも状況が違っていたからね。すごく不運だったのが金曜日の後は一気に幸運になり、結果、差し引きゼロで今に至る感じだね」

─―いま一度、あの時の気分を説明してもらえますか。

「あの時(スピンの瞬間)は、(何もできず)まるで助手席に座らされたようなものだった。「あー、終わったな」と。何が起きているかさっぱりという感じだった。
ただ、マシンが止まってくれるのを待つだけでね。

それが、止まった後にギヤを1速に入れて発進したら、普通にスタートできたんだ。すべてが問題なく動いてくれた。コ・ドライバーのジェーンが「何処か壊れたに違いない」と言っていたのだけど、実際には何処も壊れていなかった。そのままラリーを継続できたんだ」

─―今日は限界まで引き出しましたか。

「間違いなくね。もっと攻めることもできたと思うけど、そうするとミスも犯すようになる。

僕が思うにあの状況下ではペースは完璧だったと思う。僕はとにかく最後までフィニッシュしたかった。とにかくこの2位を守りきるよう対応したんだ。だからハッピーだよ」

<ヌービル>

─―3位で、表彰台を獲得しました。これは次の「ラリー・メキシコ」に向けて良い結果だったのではないでしょうか。

「結果の中の良い部分だけに視線を向けた意見だね。この週末は本当に難しかったよ。僕は色々と苦労させられたし、土曜日の午後と今日はマシンのドライビングもトリッキーだった。

すごく小さなミスが何度もあった。決して全開というわけでもないのに。だからラッピを捕らえるのは難しかった。それでもなんとかミケルセンを上回って表彰台を獲得できた。それは次のラリーイベントに向けて良い結果だと思う」

─―たしかに色々ありましたね。昨日は360度ターンというスピンもありました。

「前にも言ったけど、僕のスピンは才能、ラッピのスピンは幸運、それでもラッピには10点満点を渡すよ。あれは凄かったからね。

(エサペッカ・ラッピが割り込み記者に語る)
「僕が彼になんて伝えたかを教えるよ。僕は、雪壁から離れたところにマシンが止まることが才能だよって、言ったんだ」(注:これは金曜日のSS5でヌービルもスピンをして雪壁にはまったことで、ラッピより遅いタイムを出したことを軽く皮肉ったもの)

「金曜日はいい感じだと思っていた。それから少し苦労させられて…。自分でも(この週末)表彰台を獲得しなきゃいけないことは分かっていた。

ただ、同時に分かっていたのは、最後のパワーステージで5ポイント獲得は難しいと。正直、トヨタとタナックを負かすのは難しいと分かっていた。今回、3位には満足している。だけど、常にもっと上位を目指しているよ」

─―そして次は「ラリー・メキシコ」です。

「最初に走るマシンにとってはチャレンジなものになるね。つまりタナックにはもっとも難しいものになるし、僕やオジェにとっても楽じゃない。

ただ、目標はポイントを獲得すること。次は(チームメートの)ダニ・ソルドが戻ってくる。チームにとって良い週末になることを願うよ」

こうして、「ラリー・モンテカルロ」、「ラリー・スウェーデン」と続くウインターラリーは終了。次の「ラリー・メキシコ」は一転して灼熱の大地を走るグラベル(未舗装路)ラリーだ。

昨年、一昨年と、トヨタはこの「ラリー・メキシコ」の暑さ対策が鬼門となっている。マシンの速さは間違いないが、灼熱のなかでマシンの信頼性をどこまで確保できるかが勝負の分かれ目となるだろう。

ただ、それはどのチームにとっても同じ条件。派手な砂塵飛び交う「ラリー・メキシコ」は今後のチャンピオンシップを占うひとつの試金石となるはずだ。

「ラリー・メキシコ」は、3月7日〜10日で開催される。首都メキシコシティから約400km離れた都市レオンを中心に開催されるシーズン初のグラベル(未舗装路)ラリー。どんな戦いが行われるか、楽しみだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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