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「VARは、審判の仕事をなくす?」―JFA審判委員長が語る、サッカー審判の役割と意義

『サッカーAFCアジアカップ2019』でアジア王座奪還を目指す日本代表の戦いは、今日28日の夜、いよいよ準決勝を迎える。

決勝進出をかけて対戦するのは、FIFAランク29位(日本は50位)で優勝候補筆頭に挙げられているイラン。「事実上の決勝戦」と言われるほど注目を集めるこの一戦は、王座奪還に燃える日本にとって“運命の大一番”となる。

そんな中、今大会で準々決勝以降導入されたVAR(ビデオ・アシタント・レフェリー)が大きな話題となっている。

VARとは、映像を活用してゴールやファウルなどの判定を補助するシステムのことで、昨年2018年のロシアワールドカップで同大会史上初めて導入された。現在開催中の『サッカーAFCアジアカップ2019』でも、準々決勝以降、同大会史上初めて導入されている。

1月24日(木)に行われた準々決勝・日本対ベトナム戦ではVARが2度適用され、吉田麻也のシュートがノーゴール判定になったり、日本側にPKが与えられた。25日(金)韓国とカタールの一戦でもVARが重要な場面で適用され、1点を追いかける韓国の同点弾かと思われたシーンは、オフサイド判定でノーゴールとなるなど勝敗を左右することになった。

©テレビ朝日

2019年シーズンのJリーグの一部試合でも導入が決定するなど、今後ますますサッカー界に浸透していくと思われるが、ふとこんな疑問は生まれないだろうか。

「VARは、審判(レフェリー)の仕事をなくすのでは?」

今回はそんな疑問について、日本サッカー協会(JFA)の小川佳実審判委員長に率直に聞いてみた。

◆「レフェリーは“グレー”な部分を整理」

小川審判委員長は、そもそもレフェリーとは、語源になっている「refer」という単語の意味の通り、「委ねられている人」だと語る。

「レフェリーは判定ミスも含めて、“委ねられている人”です。多様な映像システムが出てきているなかで、以前よりもミスをしないというのが難しくなっているのは事実ですが、立場としては“委ねられている人”であることは変わりありません」(小川審判委員長)

そして、その「委ねられ方」が、他のスポーツに比べて特徴的だという。

「テニスなら、ボールがコートに入ったか入ってないか、バレーならボールが手に触れたか触れていないかなどが、審判に求められる判断の大部分を占めると思います。つまり、審判のジャッジが“白か黒の世界”であることが多いのです。

これに比べ、サッカーは“白か黒の世界”ではなく、“グレー”のケースがとても多いのが特徴です」(小川審判委員長)

テニスやバレーでも、サッカー同様にビデオ判定が導入されており、基本的には映像を見れば白黒の判断がつく。

しかし、サッカーではその映像を見ただけでは、白黒の判断がつかない“グレー”のケースが多いというのだ。

例えば、前出の日本対ベトナム戦。VARが適用され、吉田選手にハンドがあったとしてゴールが取り消しになった。

この際、“ハンド”についてサッカー競技規則に「競技者が手または腕を用いて意図的にボールに触れる行為はボールを手で扱う反則である」と書いてある通り、それが“意図的”であったかどうかを、映像を基にレフェリーが判断する必要があった。特に今回のケースは、直接、得点に繋がったことから難しい判断であったことは確かである。

©テレビ朝日

そういった意味で、「審判に最も判断が委ねられている競技」なのではないかと小川審判委員長は言う。

「VARのようなテクノロジーに全てを委ねるのではなく、テクノロジーを使って最終的にレフェリーが判断する必要があります。サッカーのレフェリーは、“グレー”な部分を整理する役割を、一番求められていると思います」(小川審判委員長)

◆「VARのサポートが必要ないということが一番望ましい姿」

2010年、14年とワールドカップの審判を務め、現在はJリーグで活動するプロフェッショナルレフェリーの西村雄一氏は、VARが導入されても審判の役割は変わらないと言う。

「そもそもレフェリーが判定を間違わなければ、VARの必要はありません。VARのサポートが必要ないことが一番望ましい姿だと思っています。我々審判は、自分たちの能力を高めるということを変わらず、今まで通りやっていかないといけません」(西村氏)

「VARは、審判(レフェリー)の仕事をなくすのでは?」の問いに対して、小川氏は「最終判断はあくまでも審判」、西村氏は「今まで通り(仕事を)やっていく必要がある」と、今後も「変わらない」という共通見解を示した。

『AFCアジアカップ』の決勝進出をかけた今日1月28日(月)の日本対イラン戦でも、VARが使用される機会があるかもしれないが、レフェリーの判断に注目したい。

※放送情報:「テレビ朝日開局60周年記念 AFCアジアカップ2019
・準決勝 対イラン戦 1月28日(月)よる10時55分~
テレビ朝日系列、地上波にて生中継

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