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松木安太郎、解説の極意。「芝生でスライディングって痛くないの?」まで丁寧に解説

『サッカーAFCアジアカップ2019』で、アジア王座奪還を目指す日本代表は17日、グループ最終戦であるウズベキスタン戦を2−1で勝利し、3連勝!グループ1位で決勝トーナメントに進出した。

そして、今日21日の夜には、ベスト8をかけて強豪サウジアラビアと対戦する。

◆あえて「背番号」で選手を呼ぶ理由

初選出の選手や敵チームの情報など、今回の『アジアカップ』ではこれまであまり知られていない情報を耳にする人も多いはず。その詳細をテレビ中継で解説するのが、テレビ朝日サッカー解説の松木安太郎氏だ。

©テレビ朝日

松木氏といえば、難しい専門用語を使わず、ファンに近い立場の熱のこもった解説が代表試合のたびにTwitterなどで話題になるほど、多くの人が“気になる解説者”として知られる存在。

なぜ彼はここまで“やさしい”解説を続けるのか。かつての名選手が、あえて“やさしい”サッカー解説を続ける理由、そして代表戦に関する素朴な疑問をぶつけてみた。

――松木さんの代表試合の解説は、しばしばTwitterを中心に話題となります。選手としては読売クラブや日本代表で活躍、Jリーグ創設後はヴェルディ川崎で監督を務めJリーグ王者に導いています。にもかかわらず、ここまで“やさしい”解説を続けるのはなぜでしょうか。

松木:「私はサッカー解説を始めて20年以上経ちますが、実は解説の仕方は当時からまったく変えていないんですよ。特に日本代表戦は老若男女、多くの方が視聴しますから、とにかく分かりやすく、丁寧に説明すること。これだけを意識しています」

――サッカー好きにとってはもっと戦術や技術など専門的な話を聞きたいという方も多いと思うのですが。

松木:「実は戦術や技術的な話はしているんですよ。でも、そう思われないことが多い。

それは難しい専門用語を使っていないからでしょう。私は1人でも多くの人にサッカーの試合を楽しんでほしいんです。

だとすれば、サッカー経験者や予備知識がある方にしか伝わらない専門用語はなるべく使わないほうがよい。使うとしても、適宜説明を加えながら使います。

『解説が何を言っているかわからない』という理由でサッカーに興味をなくす視聴者を、私はつくりたくないんです」

――今のスタイルに至ったきっかけがあるのでしょうか。

松木:「きっかけは、私自身がサッカー以外の競技を見た時ですね」

――どういうことでしょうか?

松木:「時々サッカー以外のスポーツ中継を見ることがありますが、その時は“どうしたらこの試合を楽しめるか”解説を聞きながら研究するんです。

たとえばクリケット。多くの日本人は馴染みが薄いと思います。そんなクリケットの試合実況、解説を聞いて、内容がすべて入ってくる人は少ないはずです」

――そうですね。

松木:「それでもクリケット未経験者がクリケットの試合中継を楽しめたとすれば、それは実況や解説によるところが大きいはずなんです。

専門用語は使わずに試合を解説すれば未経験者でも理解できる、楽しめる可能性が広がるんですよ。私が日本代表戦の解説で、背番号を添えて選手名を呼ぶのもそのためです。選手の顔と名前を覚えながら試合を楽しむのは難しい。でも背番号なら追いやすいですよね」

◆ゴールを決めた直後の“滑り込みパフォーマンス”は、ひざが痛くないの?

――なるほど。では、そんな松木さんに、サッカーについてあまり詳しくない人からの疑問に答えて頂いてよろしいですか?

松木氏:「どうぞ」

――まずは、「ヘディングは身長差で決まるんじゃないの?」という疑問です。

松木:「たしかに、身長が高い選手のほうが有利です。しかし、サッカーは“相手の運動能力を100%発揮させない動き方”も求められるスポーツなんです。

相手選手をヘディングしにくい体勢にするため自分の体を寄せたり、相手選手より前に立ってタイミングよくジャンプすれば先にボールに触れることができます。

つまりヘディングは高さだけではない。タイミングやジャンプ力によって競り勝てるかどうかが変わってくるんです。

また、仮に相手にヘディングされても、自分の体を寄せて態勢が崩れていればいいヘディングをすることは難しくなる。日本代表の長友佑都選手は小柄ですが、ヘディングのタイミングがすごくうまい選手として知られています」

――続いて、プレーとは直接関係がないのですが、ゴールを決めた直後、芝の上をひざから滑りこんでゴールパフォーマンスをしている選手をよく見かけます。あれは…ひざが痛くないんですか?

写真提供:©アフロ

松木:「お答えしましょう(笑)

私が選手だった30年前は現在ほど滑る芝生ではなかったんですよ。そのため、痛くてとてもできなかった。

サッカーの芝は、夏芝と冬芝と季節によって分かれていて、特に冬場はスタジアムによっては枯れていることもありますから、スライディングをすればお尻や太ももがこすれて痛いですし、当然ゴールを決めたときに膝を曲げて滑るのも難しい。

昔はなおさらです。でも、良質な芝のグラウンドの場合は違います。だからあそこまで選手は滑れるし、痛くないんです」

――なるほど。国際試合が開かれるスタジアムの芝はどこも良質ですよね。

松木:「そう。加えて、彼らがよく滑る理由は試合開始前に水を撒くからというのもあります。

これは、ボールスピードをあげて、パスを回しやすくするためです。芝生の長さや水を撒くか否かでパスの回り方が変わってきます。また水を撒いていなくても、雨が降っている試合ではかなり芝が滑るので、ゴールを決めた選手の滑りも当然かなりよくなります。

芝生の状態や試合当日の天候に注目してみるのもおもしろいですよ!」

分かりやすい言葉や表現で、素朴な疑問にも丁寧に答えてくれた松木氏。20年以上続けている解説の極意をここでも垣間見ることができた。

今日21日の夜、ベスト8進出をかけてサウジアラビア代表と対戦する日本代表。

“負けたら終わりの一発勝負”となる決勝トーナメント、より白熱した熱狂する試合が予想されるがそんな中でも松木氏の解説、ゴール後の選手が“芝を滑るパフォーマンス”にも注目してみたい。

※放送情報:「テレビ朝日開局60周年記念 AFCアジアカップ2019
・対サウジアラビア戦 1月21日(月)よる7時50分~
テレビ朝日系列、地上波にて生中継