吉田麻也、主将として臨むアジアカップ。2011年の“退場”も語る<アジアカップ開幕特集>
5日より開幕した「サッカーAFCアジアカップ2019UAE」。日本時間の1月9日(水)夜8時には、日本代表のグループリーグ初戦・トルクメニスタン戦が行われる。
今回“森保ジャパン”でキャプテンを務めているのは、DFの吉田麻也(サウサンプトンFC・30歳)だ。
激闘に次ぐ激闘の末に王者となった2011年のアジアカップのときには代表経験の浅い若手だった吉田だが、2度のW杯や海外での長い経験を経た今、吉田が日本代表のキャプテンを務めることに異論を唱える者はいないだろう。
ベスト8で敗退となった2015年の前回大会…。今大会でアジア王座の奪還を目指す森保ジャパンを率いる吉田麻也が、出場した2011年・2015年の大会を振り返り、また今大会への思いも語っている。
◆吉田麻也、2011年のアジアカップを振り返る
吉田にとって忘れられない戦いのひとつ――それは、2011年大会の準々決勝・カタール戦だ。
開催国カタールの圧倒的なホームゲームとして行われたこの試合、日本は苦戦を強いられた。前半に先制され、なんとか追いつき1‐1の同点で後半を迎えるも、後半18分に吉田を悲劇が襲う。2枚目のイエローカードによる退場だ。
さらに悲劇は続く。この吉田のファウルで取られたフリーキックからカタールがゴールを決め、日本は1‐2でリードされることになってしまった。このとき、退場直後の吉田はまだピッチのすぐ外を歩いており、当然ゴールの瞬間も目にしている。
中継映像には、言葉にならないといった表情で顔を下に落とす吉田が映し出された。本人は、当時の映像を見て笑いながら話す。
「いやぁ、もうこのときは悲壮感がすごいですね。これね、(ゴールを)見ている自分がスクリーンに映し出されてて、すぐ下向いたんです。元はと言えば僕のミスから始まったことなので、それで失点してしまって、正直“これ日本に帰れんのかな”って思っちゃいました」
しかし、10人になった日本はここから劇的な逆転を果たし、壮絶な一戦に勝利した。この勝利を吉田は、選手控室の小さなモニターで観ていたという。
「点が入って、勝って、もう嬉しくて…。嬉しさと申し訳なさと感謝で早くみんなのところ行きたいと思ってたんですけど、退場してるからピッチに入れないんですよ。で、みんなが戻って来て、『お前のせいで何倍も走ったわ』ってボロカス言われましたね(笑)。僕はひたすら謝るだけで、『すいません、ありがとうございました、ありがとうございました!』って、それしかなかったです」
そしてその後の日本代表は、PKまでもつれた準決勝の韓国戦、FW李忠成のスーパーボレーによる決勝点が記憶に残る決勝オーストラリア戦を勝利し、アジア王者に輝いた。
このとき吉田は、実は喜び方も分からなかったという。
「初めてのタイトルだったので、喜び方も全然分かんなかった。何が正解かも分からないんです。すごいふざけてたり、(『やべっちF.C.』司会の)矢部さんに“やべっちー!”って言ったり、変な顔して写真撮ったり。それが結構残ってしまってるので、次(の優勝で)はちゃんとした笑顔で撮りたいですね。そして、ちゃんとしたインタビューをして後世に恥ずかしくないようなものを残したいです」
今大会で優勝すれば、カップを掲げるのはキャプテンの吉田だ。どんな“喜び方”をするのか、楽しみに見てみたい。
◆2011年にあって、2015年になかったもの
また吉田は、2011年のアジアカップで優勝できた要因について、次のように分析した。
「やっぱり、大会を通してチームが成長したこと。どの試合も本当に苦戦してきたので、そこをひとつひとつ乗り越えたことによって個の能力としてもチームとしても大会を通して成長していった。
あとは、こういうトーナメントは“総力戦”ってよく言われますけど、サブの選手がピンポイントで活躍し結果を出せた。
大会が長く続くとチームが固定されてきて出場する選手・しない選手の差が出てくるので、サブの選手もモチベーションを維持するのが難しくなってくるんですけど、チャンスを与えられた選手が結果を出すことによって他の選手も“おれもやってやろう”と思うだろうし、今まで(試合に)出ていた選手も危機感を持つし、すごく良い相乗効果が生まれたんじゃないかなと思います」
では、優勝した2011年にあって、ベスト8で敗退した2015年になかったものとは――。吉田は、「難しいなぁ」と悩みながら語ってくれた。
「2011年はチームがガラッと変わる転換期でもあって、センターバック2人が抜けて僕と今野選手が入ったり、(2010年の)W杯に出ていなかった香川選手が入ったり。そういういろんな変化があってチームがすごく新しかったんですけど、15年は割と14年をベースに戦っていたので、そんなに変化がなかった。活性化してなかった。そこの勢いの差はあったんじゃないかなと。
2015年の大会は、すごく堅実に戦ってきて予選も含め0失点。1点も取られなかったけど、(ベスト8のPKで)負けてしまった。堅実な戦いは出来ていたんだけど、運を引き寄せるような勢いが足りなかったかなと思います」
吉田はこう話したうえで、現在の森保ジャパンは“活性化”という意味で2011年の日本代表に近いとしている。
◆「期待されているなかで結果を当たり前に出す」
2011年、2015年と2回のアジアカップの経験がある吉田。キャプテンとして、今大会でどのようなことを実現したいと考えているのか。
「この大会でキーになるのは、ひとつは、2011年のときのように新しいチーム・新しい選手たちがこれから4年続くチームのベースを作るための土台を、大会を通して勝ち進みながら培っていくということ。
また、W杯を経た後で、新しいチームも勢いがあって、期待値が高い“勝って当たり前”というなかで結果を出せるかどうか。あとは、2015年に逃してしまった“アジアのチャンピオン”というポジションを奪い返せるかどうか。僕はこの3つがポイントだと思ってるので、それらを達成したいですね」
――そのために最も必要なことは?
「繰り返しになりますが、試合を通してチームが成長していくこと。個々としても組織としてもレベルアップすること。総力戦になると思うので、ケガ人が出たり累積(カード)が出たりっていうときに、パッと出た選手が同じレベルもしくはそれ以上のものが出せるかどうか。あとは、そこにプラスアルファの要素を付け加えることができるかどうかじゃないかなと思います」
最後に、アジアでの戦いは難しいか尋ねたところ、吉田は次のように答えた。
「難しいですね。全然違います。アジアにはアジアの難しさがあって、審判も環境も対戦相手もサッカーも違う。かつ、勝って当たり前と思われてるなかで戦うプレッシャーというのは、W杯とはまた違うプレッシャーになってくる。
僕たちに今足りないところは、期待されているなかで結果を当たり前に出すっていうこと。それが出来るということは、日本サッカーにとって次のステップになるひとつの要素だと思うので、僕らが次に乗り越えなければいけない壁かなと思います」
これまで5戦無敗という結果を残しており、吉田の言うように高い期待を持たれている森保ジャパン。多くの国民が期待する「アジア王座奪還」を達成できるのか。一戦たりとも見逃せない1カ月間が始まる。<制作:テレビ朝日サッカー>
※グループリーグ放送情報:「テレビ朝日開局60周年記念 AFCアジアカップ2019」
・対トルクメニスタン戦 1月9日(水)よる7時50分~
・対オマーン戦 1月13日(日)よる10時10分~
・対ウズベキスタン戦 1月17日(木)よる10時20分~
テレビ朝日系列、地上波にて生中継