テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
menu

渡辺いっけい、20代の頃は「自分さえ目立てば…」三谷幸喜に“教わったこと”で変化

©テレビ朝日

大阪芸術大学在学中に「劇団☆新感線」で俳優活動をスタート。上京後は「状況劇場」に所属し、数々の舞台に出演。1992年にNHK連続テレビ小説『ひらり』で人気を博し、『ガリレオ』シリーズ(フジテレビ系)『ドクターX~外科医・大門未知子~第3シリーズ』(テレビ朝日系)をはじめ、数多くのドラマや映画、舞台でおなじみの個性派俳優・渡辺いっけいさん。

2018年10月、藤山直美さんが3年ぶりに復帰を果たした舞台『おもろい女』では2015年の初演に続き、直美さん演じる天才漫才師“ミス・ワカナ”の夫で相方でもある玉松一郎を緩急自在に熱演して話題に。この舞台は2017年に再演される予定だったが、直美さんの初期の乳がんが発覚し、治療に専念するために延期になっていた。

※舞台『おもろい女』
1965年放送のテレビドラマで、森光子さんと藤山寛美さんが『ワカナ・一郎』を演じ、78年には森光子さん主演で舞台化して500回近く上演。昭和初期に大活躍した天才漫才師ミス・ワカナ(藤山直美)が15歳で芸人に入門。相方の玉松一郎(渡辺いっけい)と出会い、結婚、別離、戦争を経ながら漫才で人気の頂点を極め、35歳の若さで壮絶な最期を迎えるまでをドラマチックに描く。

©テレビ朝日

◆観客の熱気に圧倒されそうに…

-私も拝見させていただきましたが、劇場はものすごい熱気でしたね-
「そうなんです。お客さんの圧がすごくて負けそうになりました。初日は特にね。本当に皆さんが直美さんを『待ってました!』という拍手だったんです。『すごい役者さんだなぁ』って改めて思いました」

-初演のときに「直美さんと一緒にやるのがものすごく楽しみだ」ってお話しされていましたね-

「直美さんとの共演は初めてだったので、楽しみでもあり、緊張ももちろんありました。舞台のポスターは3年前の初演のときに撮ったもので、初対面の日にいきなり撮影をしたんですよ。

まだ会話もちゃんとしていないときに2人でカメラの前に立たせられて、横にいる直美さんと目を合わさずに、カメラを見ながら、『初めまして。よろしくお願いします』って言いながら撮影したんです。

そのときの2人の写真が、いまだにポスターで使われているわけですから、『本当に役者というのは不思議な仕事だなぁ』って思いますね」

-心身ともにかなりハードだったと思いますが-

「これは深い話でもなんでもないんですけど、僕は人のために生きるみたいなことを多分そんなにやったことは無いんですよ。

僕が演じた一郎という役は、ミス・ワカナという天才漫才師に惚れて、男と女としてもいろいろあったけど、夫婦ではなくなっても一緒に漫才を続けている。つまりミス・ワカナの才能をずっと守り続けた人というのと重なる何かだなと思うんですよね。

渡辺いっけいという、この我の強い役者が直美さんと一緒にやることで、自分じゃなくて直美さんをまず考えるみたいな。口では言っていてもそんなに普通はやらないんですよ。シレッと自分のことだけをやるんですよ、普段は。

でも、今回は本当にそうじゃないところでやっていたような気がします。終わってみるとね。経験として、それは悪いことじゃないという気がするんです。そんないろいろな思いがあったので、全公演を無事に終えることができてホッとしました」

©テレビ朝日

◆舞台上で腕から流血…アクシデントも芝居に活かす藤山直美さん

-直美さんとの共演はいかがでした?-

「初演のとき、やる前はテレビとか映画で見て『とんでもない女優さんだ』と思っていましたし、周りの役者さんたちが『藤山直美さんとやるんだろう? 大丈夫? 大丈夫?』って言っていましたからね(笑)。

年齢的には直美さんの方がちょっと上で先輩にあたるし、『そんなに和気あいあいとできるものなの? どうなの?』っていろんな情報があって(笑)。

でも、始まってみたら、一度も『ここはこうしましょう』とか、『ここをこうしたいからこうしてくれ』とかいうことがなかったんです。

夫婦でコンビの役なんですけど、事前の打ち合わせみたいなのが一切なくて、稽古場でお互いに思ったことをやり、本番に入ってからも、『ちょっとこうしませんか』ということが、初演から今回の再演の千秋楽まで一度もありませんでした」

-息もピッタリで、かなり入念に打ち合わせをされていたのではないかと思っていました-

「一度だけ、僕があるシーンで『きょうはこうしてみようと思うんです』って言ったら、『いちいち言わんといてください。好きにやってください』って言うんですよ。

小劇場出身の僕からするとそういうことは今までなかったんです。なるべくコンセンサス取ってやってきた人間なので、そこが一番驚きでしたね。

あの人はジャズプレーヤーだなぁと思いました。ジャズって僕もよくわかってないんですけれども、アドリブの部分があって、でもキメはちゃんとしていてとか。でも、その日の気分でいっちゃうときはいっちゃうみたいな。で、それを周りもわかっていて、セッションしていく。そういう人なんじゃないかな。

『いかようにでもできるけれども、きょうはこれでいかしてもらいます』みたいなね」

-どんな芝居をしても臨機応変受けて立つという感じですか-

「そうですね。アクシデントがあったりすると乗るっていうか。僕が自宅で飼い猫にひっかかれたか、かまれたかで腕に深い穴ができてしまって傷パッドを貼っていたんですけど、はがしたら本番中に出血しちゃったことがあったんですよ。

そのときに直美さんがアドリブで『布巾取って』って言って、セットに備え付けてあった布巾を取らせて、僕の傷を巻いたんですよ。すごく自然に芝居の流れのなかで『血出てるやん』って言って。楽しむんですよね、アクシデントを。

僕もそういうのが嫌いな方じゃないので、いろんなことがあったら一緒に楽しみながら、フォローしあいながらみたいなことが多少できたと思うんですけれども」

©テレビ朝日

◆若い時は自分が目立つことしか考えていなかった

今やシリアスな役柄からコミカルな役まで幅広く演じわける実力派俳優として知られるいっけいさんだが、若いときには舞台は品評会、自分さえ目立てば良いと思っていた時代があったという。

「関西弁でいうところの『いらんことしい』というか、若い頃は特に正規のセリフじゃなくて何か面白い言葉を入れて、とにかく表層的な笑いが欲しくて、こねくり回すタイプだったので、『お前は入れすぎて本筋がわからなくなるから減らせ。一行にいくつも放り込むな』って言われたことがあって。

でも、やるのが自分の個性だと思っていたので、お構いなしになっていたんです。20代の頃とかは」

-その頃は自分が良ければいいと?-

「そうです。そういう時期がありましたね。チームワークじゃなくて、品評会だと思っていたんですよ、舞台に出ることが。完全にそうだと思ってやっていましたから(笑)1本芝居に出たら『あいつ、誰だ?』って言われなきゃ負けだと思ってやっていたんですよ。

同じ舞台に出演している先輩に『渡辺君、芝居はみんなで作るものなんだよ』なんて飲みの席で諭されたりしたんですけど、もう右から左に流していましたからね。『何、言ってやがんだ?』って(笑)。

野田秀樹さんをはじめ、いろいろな劇作家の方の舞台に出るようになって、27歳でバイトをしなくても食えるようになったので、図に乗っていたのでしょうね」

-とにかく自分の爪あとを残さなくてはという感じですか-

「そうですよ。ひどかったですよ。今、目の前にそのときの自分がいたら、『芝居はみんなで作るものだよ』って言っていますね。でも、多分聞かないんですよ。若い僕は(笑)」

-そういう期間はどのぐらいあったんですか-

「2年ぐらいかなぁ。で、ある時期に何人かから『見たほうがいい』って勧められて下北沢の本多劇場に見に行ったのが東京サンシャインボーイズの『ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな』(演出:三谷幸喜)という芝居だったんですよ。

最初は『なんでみんな絶対これを見ろって言ったんだろう? 負けていると思う役者さんは正直いないし、この人抜群にうまいという人もいない』と思っていたんですよ。

でも、ストーリ-に引き込まれて、すごいしびれたんですよね。抜群の終わり方も含めて、すごいなぁと思って。スタンドプレーをしようとする役者は誰ひとりいなくて、ただお話の面白さを忠実に表現しようとしているんですよ。

そしたら僕以上に周りがすごくて、鳴りやまない拍手ってよく言いますけど、本当に鳴りやまなくて。その鳴りやまない拍手を聞いたときに自分のなかで溶けていくものがあったんです。

気づいたんですよ、品評会じゃないんだって。その後、テレビでその人たちと共演することになるんですけど、まだ誰もテレビに出ていないときでした。

だから東京サンシャインボーイズは僕のなかで大事な何かですね。三谷(幸喜)さんには絶対に言わないですけどね、こんな話は(笑)。

たまにテレビ局の廊下で三谷さんに会ったりすると、へらず口をたたきますけど、僕は。お仕事も結局ご縁がなくて、今のところ、僕はないんですけど、僕のなかでは大事な人なんですよ。芝居はみんなで作るものだということを教えてもらいましたね、あの人には」

©テレビ朝日

◆1月スタートの木曜ミステリー『刑事ゼロ』でいじられる?

ドラマ、舞台に大忙しだった2018年。テレビアニメ『おしりたんてい』(NHK・Eテレ)では初挑戦となったアニメの声優としてレギュラー出演。2019年1月10日(木)からは木曜ミステリー『刑事ゼロ』がスタート。

ある事件がきっかけで刑事になった直後から20年間の一切の記憶をなくしてしまった主人公・時矢暦彦(沢村一樹)が、敏感になった五感と洞察力を頼りに、思いもよらないアプローチで事件を解決へと導いていく。

いっけいさんは時矢が所属する捜査一課13係の刑事たちをまとめている根本留男係長役で出演。『おもろい女』の地方公演のため、いっけいさんだけ遅れて撮影入りすることに。

-皆さんはもう撮影に入っているそうですね-

「まぁ、そういうこともありますからね。緊張感を楽しみたい。ただ、キャストの方たちとは割と仕事を一緒にしてきましたし、瀧本美織ちゃんとうたのだいすけお兄さん(横山だいすけ)以外はみんな共演経験がありますからね。

まぁいじられるんじゃないですかね。寺さん(寺島進)とかに『何だよ、今頃来て』って(笑)」

-どんな現場になりそうですか-

「健康的な現場になるだろうなって予感はあります。沢村君とか寺さんとか、人間性を含めてですよ。健康的な良い現場になりそうな予感がすごくします」

-設定がちょっと変わっていて普通の刑事ドラマとはまた違うものになりそうですね-

「面白いですよね。よくあんなことを考えつく人がいるなと思います。

主人公はある事件がきっかけで20年間の記憶を失うんですけど、そのことに困惑しながらも五感を研ぎ澄ませて事件を解決していく。

記憶を失う前のすごくよくできたときと、記憶を失った後、沢村君が“ゼロ状態のダメ男”をやるといいあんばいだと思うんですよ。彼はなんだかんだ言ってもかっこいいので。

かっこいいけどちょっととぼけたところもうまいから、面白い感じでお客さんを引っ張っていける感じがします」

-最後に今後はどのように?-

「そうですね。やっぱりどこか裏切っていきたいというのがあって、『えっ? こんな役をやるの?』っていうような役が舞い込むように、そういう作品に呼んでいただけるように、やっていきたいなって思います。

『いつものいっけいさんで』というのは、もう僕のなかでは飽きているので。あと、映画もやりたいですね」

シリーズ化されているドラマも多数あるが、どんなに映像の仕事が忙しくても、年に1本は舞台に出演したいといういっけいさん。

「自分にとって舞台は何なのかわからないが、生きていくことに近い何かがあるんじゃないかと思う」と話す。映像に舞台…2019年も多忙な日々が続く。(津島令子)

©テレビ朝日

※木曜ミステリー『刑事ゼロ』(テレビ朝日系)
1月10日(木)午後8時より放送スタート
初回は2時間スペシャル

ある事件がきっかけで、刑事になった直後からの“20年間の記憶”を失い、“ゼロ状態”になったベテラン刑事(沢村一樹)が、敏感になった五感と洞察力を頼りに、思いもよらないアプローチで事件を解決へと導いていく…。

出演:沢村一樹 瀧本美織 寺島進 横山だいすけ 猫背椿 渡辺いっけい 財前直見 武田鉄矢

LINE はてブ Pocket +1
関連記事
おすすめ記事