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渡辺いっけい「筧利夫とすごいショックを受けた」同志社大にいた生瀬勝久の衝撃デビュー

©テレビ朝日

大阪芸術大学在学中、学生劇団だった「劇団☆新感線」で俳優活動をスタート。上京後は「状況劇場」に所属し、数々の舞台に出演。個性派俳優として注目を集め、NHK連続テレビ小説『ひらり』(1992年)で人気を博し、ドラマ、映画に数多く出演。

今年は藤山直美さんの復帰舞台『おもろい女』やアニメの声優にも挑戦。2019年1月10日(木)からは木曜ミステリー『刑事ゼロ』(テレビ朝日系)の放映もスタートする渡辺いっけいさんにインタビュー。

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◆漫画家になるはずが、クラスにサルバドール・ダリ?

愛知県で生まれ育ったいっけいさんは、小さい頃から絵を描くことが大好きで、時間を忘れるほど夢中になっていたという。将来の夢は漫画家。「渡辺いっけい」というのもペンネームで考えていた名前。中学までは近所に住んでいる友だちと漫画家になることだけを考えていたが、高校に入ってすぐに諦めることに。

「中学までは漫画家になりたいなんて口に出して言うやつは誰もいなかったので珍しがられていたんですけど、高校に入ってすぐに美術の時間にダリみたいな絵を描くやつがいて。

小笠原君という天才。まだ15歳ですよ。彼が絵を描くと美術室でどよめきが起きましたからね。その子は後々日本一になるんですよ。大きな賞を受賞して。同級生だから今も同窓会で会うんですけど天才なんですよ。

それにもうひとり、今絵描きになっている山口君。今海外とかで展覧会をやったりしているんですけど、確実に僕よりうまいやつがクラスに2人もいたので」

-でも、漫画じゃないですよね-

「そう。『僕は漫画で、絵じゃないから別にいいや』と思っていたんですけど、その2人が放課後にふざけてチョコチョコっと漫画を描いて見せあって笑っていてね。その漫画が抜群にうまいんですよ。それで『これはダメだな。とてもじゃないけど漫画家にはなれない』ってはっきり思って…。

でも、面白いことが好きだから、高校2年の文化祭で友だち2人と女装してキャンディーズのモノマネをすることになったんですけど、出番が来る前に舞台の袖で見ていたときにフッと『役者ってどうなんだろう』って思ったんです。

それで、まずは俳優として演技の基礎を学ばなければいけないと思って大阪芸大に進むことにしました。だから、その絵のうまい2人がいなかったら、まだぐずぐず絵を描いていたかもしれないですね(笑)」

※渡辺いっけいプロフィール
1962年10月27日生まれ。愛知県豊川市出身。
1983年、大阪芸術大学の学生劇団だった「劇団☆新感線」に参加。1985年、大学卒業後、上京。「状況劇場」に入団。解散後、野田秀樹さんの舞台をはじめ、多くの劇作家の公演に出演。1992年、NHK朝の連続テレビ小説『ひらり』で人気を博し、映画、テレビに多数出演。ナレーション、声優としても活動している。

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◆「劇団☆新感線」で俳優としてスタート

-いっけいさんが大阪芸術大学に入学されたとき、「劇団☆新感線」はもう有名になっていたのですか-

「いやぁ、1年生に入った年の暮れにちょっと話題になったぐらいですかね。つかこうへいさんの作品をコピーでやっていて、それが関西だから、許されていたんですよ。学生のお祭りというか、『つかさん祭り』とか、勝手にみんなでやっていたりしたぐらいつかさんブームでね」

-今ではすごいことになっていますね-

「そうですね。何て言うかちょっと複雑ですね。あんなに大きくならなくてもいいのに…って思います。学生のときに大学のサークル活動で劇団やっていた人は多いんですよ。でも、その劇団が、そのままプロの集団になって大きくなって、あそこまで大きくなると笑えないっていうかね(笑)。

この間も出させてもらったんですけど、OBとして自分が出なくても何の問題もないんですよ。30年前かな? 客演で出たときは、まだ自分が出ることで何かできることがあるなと思って出ていたんですよ。でも、もう今はそういうことではないので。すごくそういう意味では複雑ですね」

「劇団☆新感線」を主宰する演出家・いのうえひでのり氏が演出する派手な殺陣が織り込まれた一連の作品は、彼の名前を取って「いのうえ歌舞伎」と呼ばれ、今や最もチケット入手が困難と言われるほど爆発的な人気を誇っている。

2017年春、東京・豊洲にオープンした巨大な円形客席が360度回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」では、こけら落とし公演から「劇団☆新感線」の『髑髏城の七人』のロングラン公演を実施。「花」「鳥」「風」「月」の4シーズンに分けて上演。いっけいさんは『髑髏城の七人 Season月<上弦の月>』(17年11月~18年2月)に出演した。

-豊洲の劇場「IHIステージアラウンド東京」もすごいですね。客席が回るので、入場時と休憩時間では位置が違っていてビックリしました-

「そうですね。僕なんて特に方向音痴なのでパニックになりますよね」

-360度舞台ですから、俳優さんは移動が結構大変で、走り回らなくちゃいけないと聞きましたが-

「そうです。だからセグウェイ(電動立ち乗り二輪車)を使っていた人もいましたね。僕はラッキーだったんですよ。そんなに端から端まで走って移動するということはなかったので。若い連中はそうやって動かされていましたけどね(笑)」

-学生時代に活動した「劇団☆新感線」がここまで人気になると思っていましたか?-

「思っていませんでした。だって、当時はつかこうへい作品をやる劇団でしたから。つかさんの作品を全部一通りやっちゃって、『次はオリジナル路線で行く』って座長のいのうえ(ひでのり)さんが言って…。僕はちょっと間抜けなスペースコミックものとかも出たことがあるんですけど、そういう路線で行くからって(笑)。

当時、いのうえさんはまだ小心者というか人見知りで、『東京なんかよう行かん。俺は大阪を拠点にやっていく。ただ、いっぱしの役者になるんだったら東京に行かなきゃだめだ。行きたいんだったら行きなさい』って言ったんですよ。だから僕は東京へ出たんです」

-鴻上尚史さんの「第三舞台」を受けられて-

「そうです。『劇団☆新感線』でも同じコンビだった同期の筧利夫と2人で受けて、筧が受かって僕が落ちて。でも、僕はその後受けたアンダーグラウンドのしにせみたいな劇団『状況劇場』に入ってしばらくやっていました」

-「状況劇場」は2年ぐらいで解散することになったそうですね-

「そうです。状況劇場が解散になってしまって、『さぁ、どうしたもんか』というときに助けてくれたのが、『第三舞台』に入っていた筧君。『第三舞台』のプロデュース公演があるからといって、上の人にお願いして僕を出してくれたんですよ。

それで木野花さんとか、そのときに出会ったのが勝村(政信)君とか池田成志という同世代の役者たち。25、6の頃なんですけど、一緒にできて。

勝村君とは何年か前にテレ朝のドラマで一緒だったんですけど、ちょっと照れくさくてね。それに『新感線』で一緒だった古田(新太)がゲストで来たりしてね(笑)。そういうのってうれしいんですけど、なんか照れくさいですね」

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◆古田新太さんをだまして「劇団☆新感線」に?

-古田新太さんとは何期違うんですか-

「3期下ですね。僕が4年のときに古田は1年(笑)」

-ドラマ『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?』(フジテレビ系)のときには立場が逆転していましたね-

「そうですよ。あいつは僕をなめているので昔からあんな感じですけどね(笑)。あいつはほんとに面白いというか、できる役者だったので、僕がいのうえ座長に紹介して新感線に関わって、いまだに新感線を支えているんですけどね」

-いっけいさんが新感線に紹介されたのですか-

「そうです。その話はいつもするんですけど、古田はいろんなところで『だまされた、だまされた』って言っていますよ(笑)。僕と筧が劇団を抜けるので『活きのいい若手を連れて来い』っていのうえ座長から命令されてね。筧は橋本じゅんを連れて行って、僕は古田を連れて行ったんです。古田はつかさんの作品をやっている『新感線』を高校生のときに見たことがあって、『たいしたことない』って鼻で笑っていたらしいんです(笑)。

自分で言っているので間違いないんですけど、あいつは『劇団四季』を目指していて、クラシックバレエの基礎をしっかりやっていたんですって。

酔っ払ってよく絡み酒されましたね。『今頃俺は劇団四季のスターだったのに、あなたにだまされて新感線に入れられちゃった。劇団四季で歌って踊って笑わせるスターになっていたかもしれないのに』って(笑)。だから『まあ、いいじゃないか。同じようなことをやっているじゃん』って言ってるんですけどね(笑)」

-いっけいさんをはじめ、その前後の皆さんが今、日本の演劇界を支えているという感じですね-

「古田とか、同志社にいた生瀬勝久という役者さんは、本当に天才だったんですよ。『そとばこまち』という京都の学生劇団があって、それは京都大学を中心とした劇団だったんだけど、辰巳琢郎さんが主宰の頃に同志社の生瀬勝久がスカウトされて『そとばこまち』に入るんですよ。

そのデビュー公演を見たんですけど、それには、今『相棒』シリーズに出ている山西惇君とかも新人で出ていましたね。とにかく生瀬勝久さんがすごかった。衝撃のデビューだったんですよ。華があって、声がでかくて面白くてひとりで引っかき回して…。

それをいのうえさんと筧と僕が並んで見ていたんですけど、筧と僕は特にすごいショックを受けるんですよ。『こんなやつがいるんだ。天才だ』って思ってボーッとしちゃって…」

-いのうえさんは何かおっしゃっていました?-

「『お前ら負けてないからそんな落ち込むな』って言ってくれましたけど、それくらい衝撃的でした。それは巡り合わせなんですけど、生瀬勝久という役者さんとはその後いろいろお仕事もするし、『やっぱりかなわないなぁ』と思う瞬間もある。

でも、幸せだなと思うんですよ。自分が仕事で『良かったね』って評価されたときに、『でも、古田がやっていたらもっと面白いよなぁ』とか、『生瀬さんがやっていたら、もっと違うアプローチで絶対に面白いはずだ』とか、自分に甘くできないことになるんですよ。だから、そういう人が同世代にいるということは幸せなことだと僕は思うんです。自分に満足してあぐらをかけないですからね」

-ご自身のドラマとか映画は必ずご覧になりますか-

「一時期あんまり見ないときもあったんですけど、『絶対見なきゃダメだ』ってある人に言われたので、見るようにしています」

-一時期見なくなったのは何か理由があるんですか-

「自分でお芝居をしているときにどうするかが大体わかるので、新鮮に見れないというか、完成形にあまり興味がなくなった時期はありましたね。でもそれは良くないよって言われて見るようになったんですが、自分が思っていたよりも下手ですごいショックでした。良くないですね。『どこかであぐらをかいていましたね、あなた』って(笑)」

テレビや映画と違い、撮り直しがきかない舞台。失敗するとそれは自分の失敗として恥をかくことになる。だからこそやり続ける価値があると話す。次回後編では藤山直美さんの復帰公演となった『おもろい女』の舞台裏、舞台は品評会だと思っていた若き時代を紹介。(津島令子)

※木曜ミステリー「刑事ゼロ」(テレビ朝日系)
1月10日(木)午後8時より放送スタート
初回は2時間スペシャル
ある事件がきっかけで、刑事になった直後からの“20年間の記憶”を失い、“ゼロ状態”になったベテラン刑事(沢村一樹)が、敏感になった五感と洞察力を頼りに、思いもよらないアプローチで事件を解決へと導いていく…。
出演:沢村一樹 瀧本美織 寺島進 横山だいすけ 猫背椿 渡辺いっけい 財前直見 武田鉄矢

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