GPファイナル初Vへ、宇野昌磨が挑む“鬼門”のジャンプ 異例トレーニングで掴んだ自信
明日12月7日(金)開幕するフィギュアスケートの『グランプリ(GP)ファイナル』。
羽生結弦が右足首の負傷で欠場となる中、男子選手として唯一、日の丸を背負って立つのが宇野昌磨だ。
宇野は今年2月の平昌五輪で、代名詞の大技・4回転フリップを決めて、見事に銀メダルを獲得。
金メダルの羽生と共に表彰台に上り、名実ともに日本フィギュア界をけん引する存在になった。
更なる高みを目指すため、今シーズン宇野は新たな課題と向き合っている。
◆4回転ジャンプは「じゃんけん」
今季の初戦、ロンバルディア杯の試合終わりのコーチ、トレーナーとともに行った反省会で、宇野は演技の細かな減点について確認していた。
「シートを見て、自分が一応ノーミスしたら何点出るのかなと。僕のアクセルだったら、転ぶと7点くらい、いや8点くらいマイナスです」(宇野)
こんなにも細かく計算をしているのには、理由があった。
「僕は本当にノーミスが少ないんです。その時にできる最大の演技をしたというのは何回かあるのですが、ノーミスがほぼないんですよ」(宇野)
去年まで結果を残してきた試合でも、ジャンプの失敗など、“出来栄え点”で減点されることが多かった。
特に平昌五輪では、羽生がジャンプで合計18.77の出来栄え点を獲得していたのに対し宇野の出来栄え点は5.65。その差は13.12点と大きく溝を空けられていた。
原因は、宇野がリスクを取ってプログラムを高難度に設定していることにあった。
ショートとフリーで合わせて6本の4回転ジャンプに挑んでいるが、大技がゆえに失敗も多く、その結果出来栄え点で減点を受けてしまっていたのだ。
中でも昨シーズン、特に成功率の低いジャンプがあった。
「(4回転ジャンプは)自分のなかではじゃんけんだと思っています。うまくはまったら勝てるし、負ける時もある。特にフリップはそんな気持ちで跳んでいます」
2年前、宇野が世界で初めて成功させ、今や代名詞ともいえる4回転フリップが、ノーミスを目指す宇野にとって、鬼門になっていたのだ。
実際に昨シーズンの4回転フリップ成功率を見てみると、成功は16本中わずか8本と、成功率50パーセントだった。
◆米で行った“異例”のトレーニング
そこで今シーズン、その確率を上げるために宇野が訪れていたのがアメリカ・シカゴだった。
師事したのは、ジャンプの指導を専門とするアレクサンドル・ウリアシェフコーチ。
そこには休むことなく、ひたすらにジャンプを繰り返す宇野の姿があった。
少しでも休もうとすると、はっぱをかけられる。中でも特に厳しく行っていたのが、曲かけ練習だ。
フリーの曲をかけて4分間滑り通した後、宇野は息が整う間もなく、すぐに2分50秒のショートの曲かけ練習を行った。
通常フリーを一本こなすだけで体力は限界を迎えるが、合計で7分近い時間を続けて滑る“異例”のトレーニングに挑んでいた。
その狙いについてウリアシェフコーチは、こう語った。
「この合宿の目的は『ジャンプ』と『スタミナ』の強化です。スタミナは繰り返し跳ぶことでつけさせています。ジャンプを跳ぶには技術よりもメンタルの強化が重要です」(ウリアシェフ)
長い時間を休みなく滑ることで体力を強化し、それと同時に、ジャンプを跳ぶうえで必要な精神面の強化も行っていたのだ。
「基本的に練習ではミスをしないというくらいになったら、試合でもノーミスがちらほら出てくるんじゃないかと思います」(宇野)
体力がつきた極限状態の中で、宇野は4回転サルコウ、さらにトリプルアクセルと次々とジャンプを決め、そして最も難しい4回転フリップまで成功させていた。
◆ファイナル初Vへ、目指すは“ノーミス”
こうした過酷な状況での成功体験が本番での自信に繋がり、今シーズン、少しずつ成果が表れ始めた。
GPシリーズ初戦のカナダ大会では、4回転フリップをショート・フリーともに成功させ、見事に優勝。
さらにNHK杯でも4回転フリップを決めると、2位に20点以上もの大差をつけて優勝を果たした。
4回転フリップは、GPシリーズ前の大会を含め、挑んだ6本中5本で成功。その確率はなんと83%と、昨シーズンの50%から大幅に改善していた。
さらに、出来栄え点についても成功した5本の平均が3点を超える加点をもらうなど、着実に成長を遂げている。
「ノーミスに近い演技をしなければ自分は満足しないと思ったので、完璧になるべく近い演技を、僕は望みます。これが今の、そしてファイナルの目標です」(宇野)
世界一を決する大舞台の『GPファイナル』で、“ノーミス”に挑み、初優勝を狙う宇野に注目したい。
※番組情報:『フィギュアスケートグランプリファイナル2018』
12月7日(金) よる7時30分〜 テレビ朝日系列(一部地域を除く) 男女ショート
12月8日(土) よる6時56分〜 テレビ朝日系列 男子フリー
12月9日(日) よる9時〜 テレビ朝日系列 女子フリー