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とろサーモン・久保田、“20代”を語る。「人は後ろ(過去)を見ながら前に進む」

お笑いコンビ「とろサーモン」の久保田かずのぶさん(39歳)。

ときに“クズ”とも言われる行動や考え方を包み隠すことなく世間に見せ発信する久保田さんのSNSには、中傷から共感まで、さらには“悩み相談”のコメントも多く書き込まれるそう。

そんな久保田さんが、自身の経験をもとに若い人たちに語りかけます。今回は、「逃げる」ということから話が始まりました。

©テレ朝POST/テレビ朝日

とろサーモンの久保田かずのぶです。

芸人といえば皆さん、恥ずかしさなんて超越した気持ちの強い人間ばかりかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。

芸人でも、「ビビッて自分の思うことを言えない」「周りに他の芸人がたくさんいると喋れない」「緊張して勝負から逃げてしまう」…という人は沢山います。でも当然、芸人は逃げてはいけない。まあ、最近僕は『逃走中』という番組で逃げて“大炎上”と騒がれましたが…。

さて置き、芸人はこの世界に飛び込んだときに決めた「面白いことをする」という道筋から逃げてはいけない。「逃げる」ということはすなわち、応援してくれる支持者を裏切ることだし、自分をも裏切ること。これはどの世界でも言えることだと思いますが、そもそも逃げる人のことなんて誰も応援したくなりません。

ファン、家族、友だち、同僚、上司、後輩だって、逃げずに強く前向きに進もうとする人のことを応援したくなるものですよね。たとえ失敗続きだとしたって。

◆「逃げる」ってどういうことか

とまあ前提を言ったところで、僕は前から“逃げてしまう人”に言いたいことがあったんです。

「逃げる」って、どういうことか。「もう逃ーげよ!」「もうやーめよ!」って投げ出してしまうことって、どういうことか。

それはね、ある意味で「人目を気にしなくなる」ということなんです。

頭に浮かぶ、逃げずにまだ戦っていたときには多少なりとも気にかけてくれた人や応援してくれていた人たち…。諦めて逃げるというのは、そういう人たちの目を気にしなくなるということです。もう「どうでもいいや」ってなるんですね。

でもね、思うんですよ。逆境、アウェー、向かい風……どうか自分だけやと思わないでください。逃げて殻に閉じこもることで、いまよりもっと抜け出せなくなるのです。

もし「人の目なんてどうでもいいや」ってなるんだったらね、それこそ人の目を気にせず、恥ずかしさ捨てて格好悪くてもガムシャラに前だけを見て走ってください。

人は、落ちるだけ落ちると、もう怖いものがなくなるんです。そこなんです。“辞めよう”じゃない、“死のう”でもない。生きるんです! いま底にいるなら、もう上がることしか待ってないから。

「なんだ久保田?また究極論か?」…そう思って逃げてしまう人。いやいや、ここまで読んでくれてるじゃないですか。俺からはまだ逃げてない。

多分あなたも、前に走るきっかけが欲しいのではないでしょうか?

©テレ朝POST/テレビ朝日

◆「意識高い系」という言葉の正体

とくに、20代のみなさんに伝えたいことあります。

最近では悲しいことに、「意識高い系」なんて言葉が生まれてしまいました。でも分かっておきたいのは、この言葉は日々を頑張って一生懸命に生きている人たちが作った言葉ではありませんよ。“意識低い系”が作った言葉です。

社会で戦うことから逃げた者、人の目からも逃れた者が、意識の高い人たちのやっていることを見て「自分も出来ていたのではないか」と思いたくないために、自分に嘘をつき、相手を否定する。

それによって「自分とあいつらは対等なんだ」という存在意義を見つけ出し、自分の居場所を見つける。けれど、孤立する。これはつまり、ネットニュースのコメントに分かったかのような誹謗中傷を書き込んでいる人たちですね。

そういうヤツらは、“意識低い系”なのか? いや、違います。生きていることに意識が“ない”人間です。

恥ずかしがらずに頑張っている人のことを「熱くなっちゃって…」なんて否定するけど、一生懸命に熱く生きている人間がそんなにむさ苦しいかな? そんな人だって、時には冷たい涙を流し、冷静になり、それでも何か守るもののために熱を出して労働し勉強するんです。

ただただずっと冷めていて温もりも感じないヤツの意見なんて、クソなんですよ。(クソのがまだ温かいですわ)

僕は20代の人たちを見ていて、若い人たちとSNSで接していて、そう思っています。「若い時代の苦労は買ってでもせぇ」ですね。

◆「人は時に後ろを見ながら前に進む」

©テレ朝POST/テレビ朝日

20代のみなさん。人の目は気にせず、たくさん苦労してください。自分の好きな仕事で苦労している人もいるでしょうね。大人は、「人の10倍努力しろ」なんて馬鹿なことを言う。そんなことないんですよ。今やっていることを、人より好きになればいい。好きなのにまだダメなら、あなた以上に好きな人がいるんです。

就活中のみなさん、僕のような39歳M-1チャンピョンの芸人の話なんて今は響かないかもしれないけど、僕の見てきた経験上、20代で楽な道を選んだ人や稼ぎまくった人は、30代で地獄しか見ません。どうか若いうちは、あえて大変だと思う道を、いわゆる苦労を選んでみては?

繰り返しになりますが、「若い時代の苦労は買ってでもせぇ」。

“買ってでも”はまさにその通りで、20代で最も財産になるのは、苦労した経験だと思います。それを経て、30代になると本当の財産が手元にやってくるようになるんです。

僕の言葉では響かないのであれば、ここでちょっと詩人の言葉を借ります。フランスの詩人ポール・ヴァレリーは、こんなことを言っています。

「湖に浮かぶボートを漕ぐように、人は後ろ向きに未来へと入っていく。目に映るのは、過去の風景ばかり。明日の景色は、誰も知らない」

僕は、この言葉が大好きです。

本来、人体は後ろ向きではゴールになかなかたどり着けない。前向きで踏み出さないと、進んでいけない。

それでも“生きる”ということにおいては、人は後ろ、つまり過去を見ながら前に進んでいく。本当にその通りですね。

前述しました。若いうちはガムシャラに走るんです。傷つくだろう泣くだろう辞めたくなるだろう。そういう経験を振り返りながら30歳40歳になると、過去の経験だけを糧に未来に向かっていけるんです。その糧のウェイトが大きければ大きいほど、掴む幸せも大きい。

どうして20代のときに苦労したほうがいいか?

それは、若いときに恵まれすぎたりお金もったりしてラクしてしまったら、過去を振り返っても苦労した経験がないから。良い思い出しかないから。「20代のとき苦労したなあ。あれができたから、まだ頑張れる」って思えなくなる。未来への進み方が分からなくなる。

人生、ずっとは上手くいきません。だから、過去に苦労した経験があればあるほど、歳をかさねたときに前へと進んでいけるようになります。振り子の理論ですね。

ラクをすればそのぶんの“しわ寄せ”はくる。苦労すればそのぶん“幸せ”がくる。歳をとり、顔に幸せのしわが寄るために生きてみたい。僕はそう思います。

<撮影:長谷英史、構成:宇佐美連三>

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