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トヨタ、タイトル獲得へ大きなチャンス。ヒュンダイはつまずく【WRC:ラリー・オーストラリアDAY1結果】

11月16日、WRC(世界ラリー選手権)最終戦となる第13戦「ラリー・オーストラリア」のデイ1が開催された。

©WRC

サウスウェールズ地方の林間コースを走ったこの日、かなり乾燥していることから路面は滑りやすく埃っぽい状態であった。チャンピオンシップを争う上位3台と、マニュファクチャラータイトルを争う上位3メーカーの争いは、初日から激しいものとなった。

デイ1の結果は、1位マッズ・オストベルグ(シトロエン)、2位はトップから6秒8遅れでクレイグ・ブリーン(シトロエン)、3位は同8秒7遅れでヤリ‐マティ・ラトバラ(トヨタ)、4位は同12秒5遅れでヘイデン・パッドン(フォード)、5位は16秒9遅れでオット・タナック(トヨタ)、そして6位には同28秒3遅れでエサペッカ・ラッピ(トヨタ)が続いた。

チャンピオン争いをするセバスチャン・オジェ(フォード)は7位、ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)は10位スタートとなっている。

©WRC

前戦のラリー・スペインで久しぶりの優勝を獲得したシトロエン。元王者セバスチャン・ローブ勝利によるモチベーションは大きな効果を生んだのか、今回、オストベルグとブリーンがワンツーで初日を終える最高のスタートを切った。

トップに立ったオストベルグは、「僕はラリー・グレートブリテンのあと、マシンに乗っていなかったので、マシンの感触を再びつかむにはもう少し時間がかかると思っていた。でも、今回は自信を持って走るまでに時間はかからなかった。ステージごとに自分のドライビングを調整することができたし、最後には本当に走ることを楽しんでいたよ。もちろん、攻めて走っているのだけど、決してリスクは取ってないんだ。つまり、最適な状態で走れているということ。それがこの結果に繋がっているのだと思う」と、好調スタートの秘訣を語った。

チャンピオンシップ上位陣は、それぞれプレッシャーがあったのか、万全なスタートとはならなかった。

とくに、王者オジェを追うヒュンダイのヌービル。SS5をトップで通過し、ここで総合でも7位となりオジェに対して9秒1のリードを得たのだが、次のSS6でコース中のシケイン(低速にさせる障害物)にマシン左側を大きく当ててしまいマシンにダメージを与えてしまった。

これによりステージトップから54秒5遅れとなってしまっただけではなく、オジェにも40秒2の遅れをとり、総合でもオジェに31秒1のリードを許す結果となった。その後も挽回までは至らず、オジェに33秒7までリードを許して初日を終えた。

©WRC

失意のヌービルは、「正直、僕のチャンピオンシップ獲得の可能性が少し小さくなったことは事実だ。でも、希望を捨てたわけじゃない。明日、明後日と何が起きるかは誰にも予測はつかない。僕たちは自分たちの走りを続けるだけだし、その結果として日曜日にどうなるかだ」とまだまだ諦めないことを誓っている。

しかし、ヒュンダイはまだ悪いニュースが続く。

トヨタとのマニュファクチャラータイトル争いだが、トヨタは初日3位・5位・6位と上位に3台が食い込んだのに対し、ヒュンダイは4位にパッドン、10位にヌービル、もうひとりのエースドライバーであるアンドレアス・ミケルセンはSS3で大きくマシンをクラッシュさせてリタイアとなった(チームはなんとか2日目にマシンを復活できるよう対応している)。

©WRC

このヒュンダイのつまずきによりマニュファクチャラータイトル争いで大きくチャンスが広がったのがトヨタだ。エースドライバーのラトバラ、タイトル争いに一分の望みが残るタナック、そして若手のラッピと、3台ともに揃い踏みで初日を終えた。

チームリリースを通じて、3者のコメントが届いている。

〇ラトバラ
「概ね良い1日でした。午前中はミスをしてしまい少しタイムをロスしましたが、午後は安定した走行ができたので非常に満足しています。森林地帯でのグラベルステージをクリーンに走れたことは、きっと重要な意味を持つことになるでしょう。スーパーSSではハードタイヤを装着していたため十分な駆動力が得られず、少しタイムを失いました。しかし、依然トップとの差は小さいので明日も頑張ります」

〇タナック
「全体的に午前中のステージは良好で、良いリズムで走れました。ただし、午後はいくつかミスをしてしまい満足できない結果となりました。午後の最初のステージではゲートに当たり、サスペンションに少しダメージを負いました。その次のステージでは大きなウォータースプラッシュでフロントバンパーが壊れ、通常より空力性能が低下したことで運転がかなり難しくなりました。しかし自分のベストを尽くしましたし、まだタイトル争いは続いています。不可能はないと思います」

〇ラッピ
「午前中はすべてがうまくいき、とてもスムーズでした。出走順が非常に早かったので、もっとタイムロスすると思っていましたが、そうはならず本当に驚きました。ただし、残念ながら午後のウォータースプラッシュで我々の1日は台無しになってしまいました。午前中の1回目の走行時と同じようにアプローチしたつもりでしたが、多くのタイムを失ってしまいました。それでも、走り続けられたのは良かったと思います。1日を通してドライビングが楽しく感じられ、クルマの調子も良いので明日がとても楽しみです」

©WRC

まだまだ波乱は続きそうだ。オジェとヌービルのチャンピオン争い、そこへタナックが食い込むことができるのか。また、トヨタはマニュファクチャラータイトルを獲得できるのか。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>