“世界一の清掃人”が語る清掃の極意「テーブルの気持ちを考える」
テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。
現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。
今回修造が訪れたのは、年間利用者が8500万人と世界4位を誇る羽田空港。
ここで赤いつなぎを着て待っていたのが、新津春子さん(48)だ。実はこの方、“世界一の清掃人”と言われている。
新津さんは中国で生まれた残留日本人孤児2世で、17歳の時に来日した。以来、清掃の仕事を始めて30年。現在は羽田空港の清掃責任者を務めている。
そして、世界550の空港を対象に行われた調査で、羽田空港は「世界一清潔な空港」に5回も選出。この誇らしい実績に修造が「とにかく空港はその国のイメージそのものですよね」と語りかけると、新津さんは「私たち清掃員も“日本人の見本”と思って作業しています」と自信を持って答える。
◆「掃除する姿も、きれいに見せる」
今や日本が誇るカリスマ清掃員である新津さん。その仕事ぶりを早速見せてもらった。
トイレのチェックに同行させてもらった修造は、いきなり驚かされることになる。
「ほら、汚れがついているでしょ? こう手で触るとガサガサしていますよね」(新津さん)
新津さんが特に注意して見ていたのが、洗面台や蛇口の裏側。
タブレットや鏡を駆使して、誰も気付かないような裏側までチェックするのが新津さんのこだわりなのだ。(※写真:ゴミ箱の裏も!)
そして、新津さんには清掃のやり方にもこだわりがある。
まずは、モップを手にした修造が自信満々に実践。しかし、「ダメです!」とすかさず新津さんの指摘が入る。
続いて新津さんが披露すると、修造は思わず「きれいだな~、もう。立ち姿もきれいですね」とつぶやく。
新津さんいわく「清掃員は掃除するさまもキレイに見せなくてはならない」と言い、周りに見られていることを意識することが大事なのだそうだ。
さらに姿勢を良くすることで、腰など自分の体にも優しいと新津さんは言う。
◆“世界一の清掃人”を導いた上司の言葉
新津さんが清掃にここまでこだわるのには、ある恩師の存在があった。
「私が日本に来た時、自分の事しかしていなくて…上司に一言、言われて気づいたことがありました。新津さんは一生懸命で良いけれども、やっぱり人の気持ち、人の心を考えていない。優しくないとはっきり言われました」(新津さん)
日本に来たばかりの新津さんにあえて厳しい言葉をかけたのが、今は亡き鈴木優さんだ。
日々熱心に仕事をしていた新津さんにとっては、衝撃の言葉だった。
「テーブルの気持ちを考えていない」(鈴木さん)
新津さんはその言葉が忘れられないという。
鈴木さんいわく、テーブルの表面はいわば顔、脚や側面は体。そう考えると“顔だけ洗うわけにはいかない”という教えだった。
その教えに従い、清掃一筋30年、どんなものでも人として考え隅々までキレイにする。
これこそが、羽田空港を世界一に導いた新津流の清掃だ。
◇
東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020年には、多くの外国人観光客が日本を訪れることになる。
新津さんが意識しているのは、日本に来た人々のためのやすらげる空間作りだ。
根幹にあるのが、自分のことを考える前にまずは相手のことを考えること。
「思う心で、世界中の人にやすらぎを与えたい!」羽田空港の展望デッキに新津さんの強い言葉が響き渡った。
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系