「自分のためにスケートを楽しみたい」羽生結弦が今季プログラムに秘める思いとは
羽生結弦がいよいよグランプリシリーズ初戦を迎える。
第3戦「グランプリシリーズ・フィンランド大会」に出場する羽生にとって、この地は縁起の良い場所だ。
羽生とフィンランドの関係は、10歳で初めて出場した国際試合から始まる。
フィンランド・タンペレで開催されたサンタクロース杯で初優勝を飾り、2012年フィンランデイア杯では、公式戦で初めて4回転サルコウを決めた。
2017年世界選手権のフリーでは、自身の持つ当時の世界最高得点を更新し優勝。王座を奪回した。
「グランプリ初戦はフィンランド。自分にとって思い入れのある地ですし、自分が初めて国際試合で行ったのはフィンランドで、それから自分の海外でのスケートの試合が続いている感覚があります。原点回帰ではないですが、その土地、環境によって、自分の気持ち、最初の時の気持ち、ホープ&レガシーをやった時の2017年世界選手権の気持ち、そういったものを、思い出して滑れるのかなと思っています」(羽生)
◆今季プログラムは“憧れの選手”の曲を使用
そして、今シーズンのプログラムも、羽生にとってはとても思い入れ深い特別なものだ。
というのも、ショートとフリーの2つのプログラムは、ともに子供の頃に憧れた選手が使っていた曲を使用している。
ショートプログラムは、元全米王者であり、トリノ・バンクーバー五輪代表となったジョニー・ウイアー氏が2004年から06年シーズンにフリーで滑っていた「秋に寄せて」を使用する。
羽生が「僕のスケート人生の中でもすごく印象に残っているプログラムのひとつ。彼のスケートに見入って、そこからスピンに手をつけたりやわらかい表現だったり曲のとり方だったり、ランディングだったり、演技をするきっかけになったプログラムの曲」と語るほど、彼の演技に大きな影響をあたえたプログラムだ。
羽生と交流があったウイアー氏は、ソチ五輪の羽生のフリー「ロミオとジュリエット」の衣装のデザインも手がけていた。
このショートの振付を担当した振付師ジェフリー・バトル氏は、自身も過去に使用したことがあり、大好きな曲だったことから、この選曲を聞いた時に驚いたそうだ。
この曲の振付をする前に、羽生と“秋について”長いこと話し合った時のことを、バトル氏はこう振り返る。
「ユヅ(羽生)にとっての『秋』と僕の思う『秋』はとても意味が違う可能性だってあるわけだから。ユヅにとって、秋は振り返りの時期、内省の季節だったようです。ノスタルジックな感じだったみたい。彼が達成したこと、それから彼に起きた出来事、人生を考えたら、すごく分かる気がするし当然ですよね。だからテーマとなるのは、そういった『思い出』とか『記憶』みたいなことでした」
そこで生まれたのが、アルバムをめくる動きから始まる冒頭のシーンだ。
古いアルバムを見ながら「思い出」や「記憶」が蘇ってくることを表現し、そこから2分30秒の物語が始まっていく。
フリープログラムは、子供の頃にヘアースタイルまで同じにするほど憧れたエフゲニー・プルシェンコ氏が「ニジンスキーに捧ぐ」で使用した曲から選んだ。
このプログラムは、プルシェンコ氏が2004年ロシア選手権で、芸術点オール6点満点を出した伝説のプログラムとして有名であり、同氏の代表作でもある。
羽生はそのプログラムを初めて見た時の印象について「ニジンスキーを滑っている時の圧倒的なオーラだったり、ニジンスキーのポーズだったり、ひとつひとつその音に合わせた動き、ジャンプ、すごく惹かれた記憶あります」と語っている。
今回はその中から、エドウィンマートンの「アートオンアイス」と「マジックストラデイヴァリウス」の2曲を羽生自ら編集し、プログラム名を「Origin(オリジン)」と名づけた。
「この曲自体が、自分がスケートに没頭した始まりであったりとか、自分がこれから挑戦したいアクセルであったり、スケートを楽しむこと自体であったりとか、自分のスケート人生の起源というか、根源的なものを感じながら滑りたいと思っています」(羽生)
振付のシェイリン・ボーン氏は、「この曲でやるからには、独自の違ったソウル(魂)が感じられるものにしたいと考え、何度も何度も曲を聞き込んで考えた」そうだ。
平昌五輪で五輪2連覇を達成した今、「自分のために滑りたい」と語った羽生。
思い出の地・フィンランドで、思い入れ深いプログラムに合わせて「自分のために滑る」羽生のグランプリシリーズ初戦に期待したい。
※放送情報:テレビ朝日系『フィギュアスケートグランプリシリーズ世界一決定戦2018』
<フィンランド大会>
2018年11月3日(土)18:56 ~ 21:20 男女ショート
2018年11月4日(日)21:00 ~ 23:05 男女フリー