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トヨタ、ラトバラが総合トップに浮上! タナックはパンクの不運【WRC:ラリー・スペインDAY3結果】

現地時間の10月27日、WRC(FIA世界ラリー選手権)第12戦「ラリー・スペイン」のデイ3が開催された。

©WRC

土曜日はSS8からSS14までの7つのSSが行われ、その結果は以下の通り。

1位ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ)、2位は4秒7遅れでセバスチャン・オジェ(フォード)、3位は8秒0遅れでセバスチャン・ローブ(シトロエン)、4位は9秒8遅れでエルフィン・エバンス(フォード)、5位は12秒7遅れでティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)、6位は16秒5遅れでダニエル・ソルド(ヒュンダイ)と続いた。

◆タナックはパンクの不運

土曜日のラリー・スペインは、金曜日のグラベル(未舗装路)ラリーから、ターマック(舗装路)ラリーへと条件が変わってスタート。

各チームはマシンセットアップをすべて変更して、シーズンでいちばん路面がキレイなターマックに挑戦した。

この日は、フォードとシトロエンが有利で、トヨタはどう競っていくか、というのが大方の予想だった。

しかし、強い雨の影響もあったのが、トヨタはグラベルだけでなくターマックでも速さを見せ、SS8から10までとSS14の合計4本でステージトップを獲得。ヤリスWRCが現在最速のマシンであることを証明してみせた。

ところが、今回も不運がトヨタを襲う。

金曜日に2位に26秒8のリードを築いて土曜日をスタートした暫定トップのタナックは、SS8、SS9とステージトップを獲得。さらにリードを広げていったのだが、SS10走行中に突然パンクした。

素早くスペアタイヤと交換してステージゴールまでたどり着いたが、このステージトップから1分43秒遅れとなり、すべてのリードを吐き出しただけでなく、大きく順位を落としてしまった。

©TOYOTA GAZOO Racing

ステージ直後のインタビューにタナックはこう答えた。

「ただのパンクだ。何が原因でパンクに至ったのかが分からない。ただの段差を乗り越えただけなんだ、なんてことのない普通の段差を」と原因らしい原因が分からないと話した。

段差や小石や岩などをタイヤだけではなく、柔らかいサスペンションセッティングで衝撃を吸収するグラベルラリーのセッティングと違い、サーキットのように滑らかな路面を走るターマックの場合は、サスペンションを締め上げ、タイヤがギリギリまで路面に圧着するようなセッティングにする。

そのセッティングの範囲にもよるが、たまたまその段差は、タイヤが吸収しきれる衝撃の力を超えていたのかもしれない。

そんな路面からの“入力”と呼ばれる力が超えてしまうかは、運による所も多い。まさに不運が今回もトヨタを襲った形だ。

◆ラトバラが首位浮上「明日が楽しみ」

©TOYOTA GAZOO Racing

この結果、この日のトップにはラトバラが立ったのだが、それを急激に追い上げたのが王者オジェだった。

オジェはSS13とSS14で10秒以上差を縮め、最終的に4秒7差に。ターマックを得意とするオジェにとって、この差は無いに等しい。

さらに言えば、3位にいるローブは8秒0差、5位にいるヌービルも12秒7差と、彼らにとってもこの差は十分逆転が可能なレベルだ。

間違いなく最終日は厳しい戦いとなるだろう。それは各ドライバーたちも感じているようだ。

トップのラトバラは公式インタビューでこの日をこう振り返った。

「前回のラリー・グレート・ブリテンの最後に順位を守るべく厳しい戦いをした。あれでひとつギアが上がったような感じだ。あんな感じのラリーは長く出来ていなかった。あのおかげで、リミットを超えるような走りが求められた。それが今回生きているよ。明日はさらに路面がキレイな状態だから、よりターマックらしいラリーになる。ここは僕の好きなラリーだ。感触は良いし、いまは自信もある。だから明日はどうなるか、楽しみだね」と昨日の怒りの顔はすっかり消え、笑顔で最終日への思いを語った。

一方、追いかけるオジェはこう振り返った。

「今日はタイヤの選択を間違えた。トヨタはフルウェットタイヤを用意していた。ラトバラは先週、雨のテストが出来ていた。僕たちにはそのデータがなく、結果としてタイヤ選択を間違えて、トヨタに大きくリードされてしまったんだ。そして、午後はまた強く雨が降ると予想されていたので、タイヤを交換したら今度は降らない。またタイヤ選択を間違えた。明日はどうなるか。ラトバラは速いから、4秒7差は決して小さくないよ。ただ、僕のターゲットは1位だし、チャンピオンナンバー1だ。正直、明日は楽じゃない」と決して楽ではないと答えたオジェだが、笑顔で対応していたあたりに自信が伺えた。

そして、トップから脱落したタナックはサングラスをかけ、顔色を隠す形で公式インタビューに答えた。

「前回に続き、今回も受け入れがたい悔しい結果になってしまった。ただ、ラリーは何が起きても不思議じゃない。その不運が僕たちを襲った形だね。ここラリー・スペインのターマックステージでは、すごく路面がキレイでパンクというのはまず起きない。だから、そんな不運が僕たちを襲ったのは本当に予想外だった。これでドライバーズチャンピオンシップからは完全に脱落したね。それは理解している。明日もトリッキーな一日だし集中するよ。マニュファクチュアラーズチャンピオンシップは良い感じだからね」と気落ちしたタナックだが、チームのために明日はさらなる上位を目指すと誓った。

ラリー・スペインの最終日は、土曜日と同じくターマックラリーとなり、SS15からSS18までの4つのSSが行われる。

SS15は現地時間の28日午前7時35分にスタート。日本時間は午後3時35分スタートとなる。

今季初優勝がかかるラトバラは、前回のようなオジェとの一騎打ちではなく、更に伝説的王者のローブ、チャンピオンシップリード中のヌービルとの戦いとなる。

4つの自動車メーカーのマシンたちが、そのプライドをかけて戦うことになる最終日に注目したい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>