棚橋弘至、全力で走り続けた26年。「受け入れることができない自分が…」涙ながらに語っていた“引退”への大きな葛藤
2026年1月4日(日)、東京ドームで引退試合を迎える新日本プロレス・棚橋弘至(49歳)。
1年前に突然発表された現役引退、そしてそこから始まったカウントダウン――しかし、その裏には大きな葛藤があったという。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、棚橋の引退へのファイナルロードに完全密着した(※本記事は全3回の第1回)。
【映像】棚橋弘至、半年前に涙ながらに語っていた“引退”への大きな葛藤
1999年、22歳で新日本プロレスに入門した棚橋は、その7年後に新日本の象徴である「IWGPヘビー級王座」を獲得。
その後は史上最多8度の戴冠に加え、当時史上最多だった11回連続防衛、さらに「G1 CLIMAX」史上最多の通算101勝をあげるなど、数々の金字塔を打ち立ててきた。
しかしデビューから26年にも及ぶ闘いで、棚橋の両膝は悲鳴をあげていた。
棚橋:「靭帯が8本中5本ないので、試合前に痛み止めを飲んでなんとか乗り切ってきたんです。1月4日までにしっかりコンディション整えて」
引退を迎えるその日まで、まだ闘いが残っている。
ボロボロになりながらもリングの上で闘い続けてきた棚橋。そんな彼が引退する理由とは…
棚橋:「(会社から)『新日本プロレスの社長をやってくれないか』ということでびっくりして。それだけじゃなくて『社長に専任してほしい』『だから引退はしてほしい』と」
そうして棚橋は2023年に新日本プロレスの社長に就任、同時に現役引退を決断したのだった。
引退まで189日に迫った6月29日、自らがプロデュースする大会「TANAHASHI JAM~至」が名古屋で開催された。
棚橋:「日本全国をまわりながら『応援していただいてありがとうございました』という感謝の気持ちをみなさんに伝えられたら」
リング上には師匠である藤波辰爾や、丸藤正道などゆかりのある選手たちが集結。大会は大盛況で幕を閉じたが、試合後に棚橋から思いもよらぬ感情が溢れ出る。
棚橋:「もう辞めるんだって決めたんですよ。決めたんですけど、決めた自分と受け入れられない自分がいつもいて。もう本当に情けないよね…」
思わず目に涙を浮かべながら語る棚橋。心の中では“引退”の二文字を受け入れることができない自分がいたのだ。
そこには、これまで棚橋が背負ってきた大きな重圧があった。
◆「ストロングスタイルというのは呪い」
1972年にアントニオ猪木さんが創設した新日本プロレスは、ゴールデンタイムで生中継されるなど一大ブームを巻き起こした。
しかし、棚橋が入団した当初は観客動員数が低迷し、一時は倒産寸前まで追い詰められていた。
そんな暗黒の時代に団体再生のため棚橋は、派手なコスチュームでスキップをしながら入場。試合後にはエアギターのパフォーマンスをし、さらにはエクステをつけるという異色のスタイルだった。
棚橋:「俺は今までにないチャンピオンになりますよ。エクステだってつけるし、女の子にだって応援されたいし、俺はプロレスのためだったら何でもするから」
しかし待っていたのは、観客からのブーイングだった。さらにチャンピオンであるにもかかわらず、声援は対戦相手にばかり。
棚橋:「昔から応援してもらっているファンには、僕のアピールやファイトスタイルが新日本プロレスらしくないということで、チャンピオンなんですけどブーイング。チャラ男というか金髪ロン毛にしてエクステもつけて『俺ってかっこいいでしょ』みたいなレスラーでした」
新日本プロレスといえば、黒のショートパンツを纏い、真っ向勝負を行う“ストロングスタイル”が主流。
そこに対して、かつて棚橋は「ストロングスタイルというのは呪いなんですよ、新日本にとって」と発言していた。
棚橋:「ストロングスタイルにもう神通力がなくて、『ストロングスタイルだから観に行こう』というファンへの訴求力もないし、なんとなく“ストロングスタイル=強い姿勢”って言われても、僕はそれに全然縛られる必要もないと思ったので」
そう考えた棚橋はオフに地方へと足を運び、大会のプロモーション活動を始めた。
棚橋:「一人でも多くの方に来ていただく。直接僕と話したり会ったことがあると会場に来て自然と応援してもらえるんですね。プロレスに来てもらうのを待つのではなく、こちらからプロレスがあることをお届けするという気持ちでした」
地道な活動により、異色のスタイルも徐々に受け入れられ始め、ファンからはしだいに“棚橋コール”が巻き起こる。さらに、これまで圧倒的に少なかった女性までもが会場に足を運ぶようになった。
その様子を当時実況では「これは昭和のストロングスタイルの時代にはなかった光景」と評していた。
“脱ストロングスタイル”――この大きな改革により新日本プロレスは倒産の危機からV字回復を遂げたのだ。だからこそ今でも棚橋はファンとの交流の場に積極的に足を運び続けている。
第2回では、そんな棚橋に救われた1人の女性のエピソードを紹介する。
※『GET SPORTS』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)
※放送情報:
『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)
『新日本プロレス1.4東京ドーム!棚橋引退&ウルフデビューSP』
2026年1月4日(日)よる10:15~、テレビ朝日系(※一部地域を除く)
『ワールドプロレスリングLIVE2026 WRESTLE KINGDOM 20 in 東京ドーム 棚橋弘至引退』(生中継)
2026年1月4日(日)午後4:00~、CSテレ朝チャンネル2
※公式動画配信サービス「NJPW WORLD」
2026年1月4日(日)午後4:00~生配信
「NJPW WORLD」ではLIVE配信のほか、1万本以上のコンテンツを配信中!