【世界ラリー(WRC)】2017年シーズン開幕! トヨタがいきなり2位表彰台獲得
2017年の世界ラリー選手権(WRC)開幕戦となる「ラリー・モンテカルロ」が、1月19~22日に開催された。
今年は18年ぶりにトヨタがWRC復帰という大きな話題があり、また昨シーズン限りでWRCを撤退したチャンピオンチームのVWドライバーたちがフォード・トヨタ・シュコダとさまざまなチームへ移籍したことから混戦になると予想されていたが、実際にラリーがスタートしてみると、予想だにもしないドラマチックな展開が待っていた。
開催地モンテカルロは、1911年に初めてラリーを開催した地。モナコ公国の中心部にあるカジノ前がスタート会場となる。ここにフォード・ヒュンダイ・シトロエン、そしてトヨタという4大自動車メーカーがマシンを並べる姿は壮観で、多くの観客の注目を集めた。
そしてスタートしたラリー・モンテカルロ。
しかし、いきなり悲しい事故が発生する。スタート直後のSS1で、立ち入り禁止区域で観戦していた観客に、雪上でスリップしたマシンが接触し、観客が亡くなるという事故であった。主催者はすぐにSS1のキャンセルを発表する。
そうしてSS2が事実上のスタートとなり、初日はSS3までの2つを走行。トップにはヒュンダイのティエリー・ノイビルが立ち、2位にフォードのセバスチャン・オジェ、トヨタのユッホ・ハンニネンが3位につけた。
トップのノイビルは、「今年はルールが新しくなり、ドライバーやチームにとっても大きな変化があった。これほど面白い変更になるとは……想像以上だったよ。ただ、路面状態はかなりトリッキーだね。あと、今日はたまたま王者オジェがミスをしたからリードを築けた。オジェでもミスをするくらいに、本当に路面コンディションがトリッキーなんだよ」と、トップに立つも戦う難しさを語っていた。
2位につけた王者オジェは、「本当に路面が滑りやすくて、どこでグリップするのか、路面の見た目で判断をつけるのが難しかった。でも、マシン自体はすごくいい。僕はVWからフォードに移籍して、いいチームに移籍したと実感している。仕事ぶりも素晴らしい。まずは表彰台を狙っていくよ」と意気込みを見せた。
2日目は、トップを走るヒュンダイのノイビルが引き続きリードを保ち、2位に王者オジェ、そして3位にはオジェのチームメートで同じフォードのオット・タナクが入った。
前日3位だったトヨタのハンニネンはクラッシュし、その日のラリーをリタイア。翌日からペナルティを受けての復帰を選択し、大きく順位を下げた。代わりに、同じトヨタのヤリ‐マティ・ラトバラが4位に浮上した。
3日目、上位陣に変動が起きる。トップを快調に走行していたヒュンダイのノイビルが、3日目最後のステージとなるSS13にて、低速コーナーでマシンを大きく外側に外してしまいリヤタイヤを激しくヒット。順位を一気に落とし、トップを王者オジェに譲った。
2位にはフォードのタナクがつけ、フォードのワンツー体制となる。3位にはトヨタのラトバラが入った。
トップになった王者オジェは、「ほんの1カ月前にフォードに加入して、時間のないなか準備してきて、いま暫定とはいえトップに立っていることに驚いている。もちろん良い気分だ。ノイビルは残念だったけど、彼のマシンは本当に速い。彼にとっては、ちょっとの不運であり、僕たちはちょっとだけ運が良かった」とコメント。
3位に上がってきたトヨタのラトバラは、「新チームの初ラリーで表彰台に届きそうというのは、チームがどれだけ素晴らしい仕事をしてきたかの証明だと思う。ただ、僕たちは明日に集中しないといけない。僕もセバスチャン(オジェ)と同じように、ほんの1カ月でここまで来た。新しいマシンの印象は凄くいい。僕は2013年の最終日、ほんの700メートルを走行してクラッシュした。でも、今回はそうしたことのないよう僕自身準備できているつもりだよ」と振り返る。
王者オジェ、3位のラトバラはともに、昨シーズンまでいたVWから新しいチームへ移籍しての開幕戦。どちらも新チームのために結果を残すことに集中すると語った。
最終日は、初日の事故以降の新たなSSキャンセルが発生した。観客の安全性を高めるために、初日以降スタートが遅れることはあったが、ラリーは無事に開催されていた。しかし、最終日のSS16がキャンセルという発表があった。理由は、観客が多く集まりすぎて安全を確保できないというもの。
山道にそれほど多くの人が集まるということで、WRCの人気の高さを改めて感じさせるとともに、パワーアップして速くなったWRCマシンと観客の安全性を確保するための苦労が見え隠れしたキャンセル発表であった。
結果、最終日はSS14、SS15、SS17という3つのSSが行われた。そして、トヨタには幸運の女神が微笑む。
2位につけていたフォードのタナクが乗るマシンが、SS14でトラブルに見舞われ、4気筒エンジンのうち2気筒が動かないという状態でラリーを継続することになり、最終日に順位をひとつ落とし、トヨタのラトバラが2位に浮上したのだ。
トップを走行する王者オジェは、そのままSS17までを走りきり、新チームにいきなり勝利を提供。2位にはトヨタのラトバラが入り、トヨタの18年ぶりのWRC復帰戦を表彰台で飾った。3位にはマシントラブルに見舞われたフォードのタナクがなんとか入り、表彰台を守りきった。
勝利したオジェは、「素晴らしい気分だ。開幕戦でいきなり勝利できたのだから。でも、僕たちが今季強いと断言するのは時期尚早だね。まだ、各チームのマシンの潜在能力がどれほどのものか、お互いに見えない部分もある。でも、次のスウェーデンは、僕たちのマシンは得意なコースだと思うので、自信を持って次のラリーに備えることができるよ」と語った。
そして、2位に入ったトヨタのラトバラは嬉しさを爆発させた。
「ファンタスティックな結果だ! 先月の加入以来、トヨタチームは僕にモチベーションを与え続けてくれている。正直、このラリーでの僕の目標はなんとかトップ6に入ることと、ミスをしないことだった。でも、結果は皆さんご存知の通り、マシンは素晴らしいし、結果も素晴らしい。もちろん、この結果は幸運に恵まれた部分もある。でも、それがラリー・モンテカルロだし、僕は素直にそれを嬉しく思うよ。あと、僕の母国であるフィンランドでマシンが作られていることも僕を最高な気分にさせてくれている。次のラリー・スウェーデンも頑張りたい。マシンにポテンシャルがあることは、ここモンテカルロで証明できたからね」
こうして、2017年のWRCは開幕した。チーム同士が争うマニュファクチュアラーズチャンピオンシップを見ると、トップはフォードで40ポイント、2位トヨタで24ポイント、3位ヒュンダイで20ポイント、4位はシトロエンで10ポイントとなっている。
ヒュンダイは途中で脱落したが速さは光っており、この先もフォード・ヒュンダイ・トヨタが争い、そこにシトロエンが食い込む展開が予想される。
次戦の「ラリー・スウェーデン」は、2月9日から12日にかけて北欧スウェーデンで開催される雪上ラリー。また違った迫力を感じさせてくれるラリーが展開されることは間違いないので、ぜひとも注目してもらいたい。
<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>
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