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波乱の連続のなかトヨタが1位2位に!3連勝近づく【WRC:ラリー・ターキーDAY3結果】

現地時間の9月15日、WRC(FIA世界ラリー選手権)第10戦「ラリー・ターキー」のデイ3が開催された。

土曜日はSS8からSS13まで6つのグラベル(未舗装路)SSを走行したのだが、各ドライバーは木曜日のシェイクダウンの時点でかなりタフなサバイバルラリーの可能性を示唆しており、この土曜日はまさにその予想通りとなった。

©WRC

この日はスタートから波乱の連続だった。

まず、トップを争っていたヒュンダイのティエリー・ヌービルが最初のSS8走行中に左前輪のサスペンションにトラブル発生。路面からのショックを吸収するダンパーとスプリングが破損して、マシンのボンネットから飛び出た状態で走行。大きくタイムロスしてなんとかSS8を走りきった。

ヌービルは、「まったく原因がわからない。何かが壊れた。ただ何もぶつけてはいないんだ。原因がわからない。ただ不運だったとしか言いようがない」と答えたあと、路上でマシン修理をし、電話でメカニックの指示をうけながら後輪のサスペンションパーツを外して、左前輪にパーツを取り付けるという対応をした。しかし、SS9の走行開始に間に合うこともなく、チームはその後デイリタイアを発表した。

このヌービルのリタイアで一気に楽になったのが、トップのセバスチャン・オジェ(フォード)のはずだったが…。

続くSS9で、今度は王者オジェにトラブルが発生。ステアリングからサスペンションへと繋がるリンケージやサスペンションにトラブルが発生したのか、WRC公式TVには右前輪がまっすぐにならないまま走るオジェのマシンが映し出された。

こちらもタイムロスしながら、なんとかSS9を走行直後に路上で修理を開始。しかし、オジェには味方がいた。オジェの後から走行したエルフィン・エバンスが、SS9走行後も現場を離れることなく、オジェの側にマシンを駐車し、エバンスがチームに電話したのだ。

WRCでは他のドライバーが直接手を触れることはルール上できないが、指示をすることは違反ではない。そこで、マシン修理はオジェたち自身が、エバンスはチームの指示を身振り手振りも入れて説明しながら修理をサポート。このエバンスの献身的なサポートにより、なんとかオジェはマシンをサービスパークにまで戻した。

ここからは、フォードのメカニックたちが凄かった。

戻ってきたオジェのマシンからトランスミッション、フロントサスペンションのほぼすべてを外して新パーツに付け替えた。この短い時間でマシンは見事に修理された。オジェはSS10スタートラインの予定時刻に6分遅れたため、走行タイムに1分間加算のペナルティを受けてしまったものの、1分のペナルティなら十分逆転可能。そして、オジェはSS10で2位に6秒4の差をつけるステージ勝利を獲得。チームやチームメートの献身ぶりに結果で答え、まさに王者の王者たる姿を見せつけた。

しかし、続くSS11でオジェはマシンリタイアとなる。原因は単純なコースオフ。低速コーナーで曲がりきれず、マシンを半分道から落とす形でリタイアとなってしまったのだ。この状況について、オジェがインタビューに答えた。

オジェ:「マシンにダメージはない。ミラーくらいかな。僕のWRC人生のなかでも、もっとも馬鹿げたミスをしてしまった。ヘアピンのようなタイトなコーナーが続く低速区間だった。全然スピードは出ていない。ただ、僕がコ・ドライバーの指示をよく聞いてなかった。ブレーキが遅すぎたんだ。マシンがコースオフして樹木にぶつかった。それだけなら良かったのだけど、マシンをバックさせて再びコースに戻ろうとしたとき、マシンを半分落としてしまったんだ。今日はSS9のトラブルをチームがリカバリーしてくれて、まだまだ戦える状態でSS10に復帰した。それなのに、こんなミスをしてしまった。でも、これもモータースポーツ。良い日もあれば悪い日もある。だからまた良い日があるさ」

このように語り、自分自身を納得させていた。

この他にも、SS11でシトロエンのクレイグ・ブリーンのマシンから煙が出て、マシンをコース上にとめた後に出火してマシンが全焼するというトラブルや、ヒュンダイのアンドレアス・ミケルセンは4輪駆動のマシンが後輪駆動となってしまうトラブルで大きくタイムをロスするなど、サバイバルラリーの様相を見せてきた。

◆トヨタ、1位・2位に

こうした上位陣のトラブルの結果、SS11終了時点でトヨタのオット・タナックがトップに浮上。2位には同じくトヨタのヤリ‐マティ・ラトバラが続いた。

しかし、トヨタ3台目のエサペッカ・ラッピはSS10でマシンをコースオフさせ、マシン前半分が道から崖側へ落ちるという状態になり、デイリタイアを選択した。他がトラブルに見舞われるなか、トヨタのマシンもオーバーヒートや油圧問題など、問題は抱えつつも走行不能になるトラブルはなく、サバイバルラリーに生き残る形で上位を獲得した格好だ。

結果、土曜日のリザルトは1位タナック(トヨタ)、2位13秒1遅れでラトバラ(トヨタ)、3位1分10秒5遅れでヘイデン・パッドン(ヒュンダイ)、4位3分22秒2遅れでティーム・スンニネン(フォード)、5位6分25秒4遅れでアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)となっている。

トップに立ったタナックは、「この後はラトバラとの争いだね。それにしても、このラリー・ターキーは驚くべきラリーだ。タフなラリーになるとは予想していたが、それにしてもハプニングの連続だ。正直僕たちのマシンもパフォーマンスがあるわけじゃない。ただ、最後までしっかりマシンをコースに残すことを考えて走っている。その結果として現在ワンツーなのだと思う」とSS13後のインタビューに答えた。

2位のラトバラも、「SS13はタイヤがもう駄目になっていて、タナックには差をつけられると思った。ただ、今日は良い仕事ができたと思うよ」と2位浮上を喜んだ。

王者オジェ、ランキング1位のヌービルがデイリタイアを選択したことで、タナックには3連勝の可能性が出てきた。また、トヨタはマニュファクチュアラー争いでトップのヒュンダイを逆転しそうな勢いだ。果たしてトヨタは怒涛の3連勝を決めるのか、最終日も目が離せない。

ラリー・ターキーの最終日は、SS14からSS17、合計4本のSSを予定。日曜日、SS14の現地スタート時間は午前10時8分(日本時間は午後4時8分)を予定している。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>