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「そりゃ楽しかった」女優・長谷直美が50代半ばで始めた“5万8千円”共同生活

©テレビ朝日

多数のドラマ、映画に出演し、人気絶頂だった長谷直美さんは、1994年末、突如、芸能活動を引退した。フランスに勤務する日本人男性と結婚するためだ。翌年、長女を出産。夫婦関係は順調そうに見えたが、その15年後に離婚した。

離婚理由については「ささいなことの積み重ね」と多くを語らない。ま、夫婦のことは他人には分からない事情もあるだろうから、それはいいとして、驚くのは長谷さんがそのまま日本には帰らず、“未知の国”イギリスに渡ったことだ。

 

◆離婚後はイギリスで演技の勉強、国家資格も取得

――どうして、日本には帰らなかったんですか?

「日本に戻ったら、また芸能活動をやりたいと思っていたのですが、その頃の私ったら、離婚して帰ってもただの“出戻り”で、仕事なんて来るはずがありません。15年間も専業主婦をやっていたわけだから、“オーラ”も何もない。それは自分でも分かりました。

“こりゃ、もう一度演技の勉強をするしかない”と。で、どうせやるなら、イギリスの演劇学校で一からたたき直そうと思ったのです」

とはいえ、フランスに15年間住んでいたからと言って、英語がしゃべれるわけではない。イギリスに渡ってから、最初の1年は語学の勉強。見事クリアし、晴れてロンドンの演劇学校に入学した。

「私がいたのは『アドバンス・クラス』と言って、要するに経験者のクラスですね。即興の芝居をさせられたり、シェークスピアなどの古典を暗記させられたり、それは厳しかったですよ。シェークスピアの時代の英語って、現代の英語とも違うんですよね。そこが難しかった。でも、なんとか頑張って国家資格も取得できました」

―――国家資格? イギリスでは役者になるにも国家資格が必要なのですか?

「テレビや舞台などのオーディションを受けるための条件として、『国家資格のレベルいくつ以上』というのが決まっているんです。

レベルは最高位の10まであって、テレビに出てセリフもなく、ただニコニコしてるだけだったら『レベル4以上』とか、舞台で古典劇をやるんだったら『レベル8以上』とか、日本でいう帝国劇場のような大きな舞台だったら『レベル9以上』とか。私はおかげさまで『レベル8』に合格できました」

ロンドンの演劇学校の同級生たちと

イギリスが認めた資格を引っさげて、長谷さんは12年5月、日本に帰国。で、すぐにでも「都心の高級マンションにお引越し?」と思ったら、そうはならないところが、いかにも“長谷さん流”。

「帰国してしばらくは『食事代を5万円入れる』という約束で、藤沢市(神奈川県)に住む姉の家に居候していたんですが、毎日のようにプロモーションを兼ねて東京に出なければならない。それがバカにならなくて、一日3000円ぐらいかかっちゃうんですよ。月にしたら7~8万円。

こりゃ大変、と思って“もっと安いところはないか”と探してたら、あったんですよ。蔵前(東京・台東区)の『シェアハウス』。

電気代込みで月5万8000円。『男子禁制』だったし、それぞれに個室もあってプライバシーも完璧。住んでるのは若い女の子たちばかりでワイワイガヤガヤ、そりゃ楽しかったですよ」

©テレビ朝日

その年の10月、『ハローダーリン~二人っきりの解けないバランス』で帰国後初舞台。13年4月には『警視庁南平班~七人の刑事~』で22年ぶりにドラマ復帰を果たした。同年11月から12月にかけては伝説のバンド、「SHOGUN」と組んで「長谷直美×SHOGUN」名義でライブツアーも敢行した。

 

◆「エヘヘ、実は元アイドル歌手なんです」

――長谷さんと歌? なんかピンと来ない気もしますが…

「エヘヘ、こう見えても、実はデビュー時はアイドル歌手だったんです。『私は天使じゃない』(74年)って曲。正直、あんまりヒットしなかった。でも、私ぐらいの年で、あの頃デビューした人って、ホントはみんなレコード出してるんですよ~。

以来、ボーカルにコンプレックスはありましたが、主婦だった頃、ヒマだったから、キーボードを勉強して、みようみまねで曲作りをやってたんです。それをSHOGUNのリーダーの芳野藤丸さんに聴いてもらったら“面白いんじゃない?”ってことになって…」

――芳野さんとは以前から知り合い?

「私が出演していたドラマ『俺たちは天使だ!』(79年)で、主題歌『男達のメロディー』を歌っていたのがSHOGUNさん。

フランスに行った頃、一時期連絡は途絶えちゃったけど、日本に帰ってからフェイスブックを初めて、そこで探したらすぐに藤丸さんが見つかったので“友達申請”しました」

「SHOGUN」とのライブの打ち上げで(左端が芳野藤丸さん)

13年10月に『Ange アンジュ』をリリースしたほか、今年3月にはヒットメーカー・及川眠子さんプロデュースによる『欲望のダンス』(作詞・及川眠子、作曲・黒住憲五)も発売した。

「来年の春に向けてプロモーションを強化します。もう一花咲かせますよ~」

もちろん、芝居も順調だ。16年2月に初演した舞台『悪い女はよく眠る』は『続・悪い女は――』『したたかな女達』とシリーズ化し、映画『悪い女はよく稼ぐ』(2018年10月公開予定)もすでに撮り終えている。

舞台「悪い女はよく眠る」で共演した仁支川峰子さんらと

現在は映画『TOKYO24』(寺西一浩監督、19年春公開予定)を撮影中。

――『TOKYO24』での長谷さんも“悪女役”とか?

「それが東京都知事役なんです。舞台は東京オリンピックの喧騒(けんそう)も終えた東京都。AIや仮想通貨が日常となった時代で、私が演じる東條真知子は死んだ息子をAIでよみがえらせようと試みたり、ある汚職事件で警察に追われる身になったり…。

12月にはこの作品を引っさげてモナコ国際映画祭に行ってきます。寺西監督は16年のモナコ映画祭でも最優秀監督賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演女優賞など7冠を達成してますから、年末にはみなさんにうれしいお知らせができると思ってます」

インタビューの最後は往年の「カーコ」や「マミー刑事」を彷彿(ほうふつ)とさせる表情でニッコリとほほえんだ。

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