
「こんなマンガみたいなどんでん返しが…」大学駅伝で大逆転!弱小校が絶望的な“7分”を覆した奇跡
11月2日(日)に開催される駅伝の大学日本一決定戦「全日本大学駅伝」。今年は史上稀に見る大混戦が予想される。
学生三大駅伝の開幕戦「出雲駅伝」を連覇した國學院大學をはじめ、Wエースを擁する早稲田大学、箱根王者・青山学院大学、歴代最多16回の優勝を誇る駒澤大学など、熾烈なトップ争いが展開される見込みだ。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、この戦いに挑む注目の2校を特集した。
◆スピードだけでは勝てない「粘り強さ」を磨いた中央大
1校目は、選考会から勝ち上がった大学駅伝屈指のスピード集団・中央大学。
全日本にエントリーした上位8人の平均タイムは、5000mと10000mどちらもトップを記録し、トラックの成績では群を抜いている。
全日本の出場権がかかった関東地区選考会では、2位に1分の差をつけ1位通過。日本選手権の5000mにも実業団に交じって7人が出場した。
 
そんな生粋のスピード校は今シーズン、新たな改革をおこなった。チームを率いる藤原正和監督はこう話す。
「例年とはかなり流れを変えて、しっかりと走り込み重視でやってきました。中央大学の良さであるスピードを活かす駅伝をするためには、泥臭いことをやらないと粘り強さは出てこない」
夏合宿では、持ち味のスピードを活かすため、走り込みを重視して距離を踏んだ。去年と比べ、月間走行距離はチーム平均で100kmほど伸び、個人では300km増えた選手もいるほどだ。
主将の吉居駿恭も「夏合宿はかなり量を踏んでやったので、しっかりと乗り越えられたのは自信にもなりました」と手応えを感じている。
 
藤原監督は「上半期で磨いてきたスピードと駅伝力の融合を見せられるようにやっていきたい。全日本はまだ勝ったことがないので、ひとつひとつ戦っていきたいと思います」と意気込む。
最大の武器であるスピードに加え、粘り強い走りを磨いた中央大学。伊勢路で悲願の日本一を目指す。
◆部員4人の廃部寸前だった志學館大 奇跡の復活
もうひとつの注目校は、九州地区代表の志學館大学だ。
関東には100人近くの部員を抱える大学もあるなか、鹿児島県に本籍を置く同校は部員わずか14人。全員が地元・鹿児島出身の薩摩隼人だ。
 
今年、学生三大駅伝のひとつである出雲駅伝にも初出場を果たし、勢いに乗っている彼らだが、実は2年前、全日本出場を懸けた九州地区選考会に出場すらしていなかった。
当時の部員はわずか4人。「九州の駅伝だと7人がメンバーになるんですけど、到底足りない人数。部活に来る人数も来たり来なかったり…」と、前迫勇太監督は振り返る。
2019年までは大会に出場するも、新型コロナウイルス感染症の影響などもあり、部員数が減少。廃部寸前ともいえる状況だった。
転機となったのは2023年。高校時代に全国大会に出場したこともある中村晃斗の入部だった。
今年の日本インカレでは、1500mと5000mの2種目でそれぞれ5位と4位に入賞し、関東勢に割って入った3年生エースだ。
 
中村は入部当時の志學館について、「部活っていう状況でもなく、サークルみたいな。本当に廃部みたいな(笑)。自分が最後なのかなと考えているところもありました」と正直な印象を語る。
もともとは関東の大学に進学する予定だったが、怪我で結果を残せず、挫折したことが志學館に入学するきっかけになったという。
「このまま関東に行ってもずっと同じことの繰り返しだなと感じていて、だったら鹿児島に残って、1人で突き詰めようと思いました。誰もいないところで1人でやりたいと思って、志學館に決めたんです」(中村)
入学当初は、駅伝ではなくトラックで活躍するため、1人練習に取り組んでいた。すると、高校時代に中村と走った地元の有力選手たちが志學館への進学を希望するようになった。
後輩たちは、中村の存在が大きな影響を与えたと語る。
「もともと中村さんという存在を知っていて、県内の強い選手も集まると聞いていたので、県内でやるなら志學館がいちばん環境がいいのかなと思いました」(2年・辻田鉄人)
「県内でいちばん強いのが中村さんだったので、鹿児島県でいちばん強いチームというよりは、いちばん強い人がいる志學館に行こうかなと」(2年・齊藤莉樹)
 
こうして2024年、8人の新入生を迎え、一気に駅伝に向かう体制が整った志學館。自分の背中を追う後輩たちと過ごすなかで、1人で競技に向き合ってきた中村の心境にも変化が起こる。
「2年前じゃ考えられなかった。駅伝も少しは楽しいなと感じてきていると思います」(中村)
◆7分差を覆す「マンガみたいな」大逆転
迎えた6月、全日本の九州地区選考会。たった1枠の出場権を争った志學館は、最終3組を残し、10校中全体5位。トップの第一工科大学との差は、絶望的ともいえる7分以上もひらいていた。
「普通だったらもう絶対無理だよねって諦めるレベル。でも4人が最終組に走るので、選手たちには『みんな1周差つけてこい』と伝えました」(前迫監督)
運命の最終組には、中村と2年生3人が出走。1人当たり2分近くを稼がなければならない状況で、志學館は序盤から中村を筆頭に先頭集団でレースを展開。
中盤も誰ひとり落ちることなく力走を続け、中村がトップでゴールに飛び込むと、2年生の3人もライバルに1周以上の差をつける会心の走りを見せた。
結果、7分もの差をひっくり返す奇跡を起こし、伊勢路への切符を掴み取った。
「まさかこんなマンガみたいなどんでん返しが起こるなんて想像していなかったです。これだけ鹿児島の選手でも戦えるんだと証明できれば、(地元高校生たちの)新たな選択肢のひとつになってくると思うので、そういった道を切り開くのが今年の全日本のテーマなのかなと思います」(前迫監督)
 
中村も大舞台への意気込みはじゅうぶんだ。
「関東が強いのは自分たちもわかっていますし、8位入賞できるかと言われたら本当に厳しいと思うんですけど、(自分が)区間上位で行って、『こういうチームもあるんだ』と思ってもらえるような走りができればいいと思います」
鹿児島から全国へ。マンガのような逆転劇を演じた志學館が初めての伊勢路へ挑む。
※番組情報:『全日本大学駅伝』
2025年11月2日(日)あさ7:45~、テレビ朝日系列地上波にて生中継










