『ヒモメン』第4話はミラクル大連発!“無職”が放つ“無色”の言葉が突き刺さる
7月にスタートし、8月11日(土)までに第1~3話が放送された土曜ナイトドラマ『ヒモメン』。
今夜8月18日(土)放送の第4話について、小劇場特化型メディア「ゲキオシ!」編集長でブログ等での独自のドラマレビューも人気を集めるライター・横川良明さんに、放送前に観た感想を寄稿してもらいました。
これまで様々なピンチをヒモらしい“ミラクル”で切り抜け、周りをちょっとだけハッピーにしてきた史上最強の“ヒモメン”、翔ちゃんこと碑文谷翔(窪田正孝)。
しかし、ついに恋人・春日ゆり子(川口春奈)の怒りが爆発。翔ちゃんは部屋から追い出され、職はもちろん家まで失ってしまう。ここから翔ちゃんの運命はどうなるのか……というのが、前回第3話(8月11日放送)のラストだ。
今回わかったことだが、どうやらこの翔ちゃんという男、ピンチになればなるほど、さらにとんでもないミラクルを呼んでしまう体質のよう。8月18日(土)放送の第4話は、破局の危機という過去最大のピンチを前に、過去最大のミラクルが次々と巻き起こる、そんな1時間となる。
◆翔ちゃんがエリート技術者に? 小さな勘違いが大きな“ミラクル”を呼ぶ
ゆり子の心を取り戻すため、医師の池目先生(勝地涼)のアドバイスに従い就職試験を受けることになった翔ちゃん。
しかし、ゆり子に恋する池目先生の狙いは別にあった。ろくな職歴もスキルもない翔ちゃんのことだ。面接を受けたって採用されるわけがない。敢えなく不合格となることで、ゆり子をガッカリさせ、ふたりの仲を修復不可にさせようというのが池目先生の魂胆だ。何て陰湿なんだ、池目先生…!
ところが、ここから“翔ちゃんミラクル”がフルスロットル。上海から来た優秀な技術者と勘違いされ、めでたく入社。最先端のAIロボ開発に参画することとなる。
こうした小さな勘違いから偽物が本物と間違われ、なぜかそのまま話が進んでいくというのはコメディの必勝パターン。古くはアメリカの傑作コメディ映画『サボテン・ブラザース』から、近年では三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』まで、古今東西、様々な名作があるが、『ヒモメン』だって負けてはいない。
あべこべのはずが、なぜか不思議と会話が噛み合い、周囲はすっかり翔ちゃんを救世主扱い。ちょっとしたドジも、ゆり子の気を引くためのお芝居も、すべてがいい方向に作用してしまい、ただのヒモの翔ちゃんがまさかの“デキるエリートエンジニア”に。
こうした“偽物モノ”は、「ありえねー!」とツッコミつつ頭を空っぽにして楽しむのが一番。お約束をきちんと押さえつつサクサク話が進んでいくので、上記に挙げたような偽物モノが好きな人にピッタリのお話になっている。
◆働く現代人の心を突き刺す、無職の翔ちゃんの“無色”の言葉
さらに、イライラするのになぜか周りをほんのちょっと幸せにしている翔ちゃん…その魅力もここに来てようやくわかってきた。
要はこの翔ちゃん、僕たちが普段やりたくてもできないことを堂々とやってのけたり、普段思っていても言えないことを簡単に口に出しちゃうところに爽快感があるのだ。
別に僕たちだって一生働かずに暮らせるなら働きたくない。でも、実際問題そうはいかないから、眠い目をこすって朝起きて、疲れた身体にムチ打って満員電車に乗り込むのだ。
そんな僕たちから見たら、臆面もなく「働きたくない」とソファに転がる翔ちゃんは天敵であり、理想。社会のクズと心の中で罵りつつ、どこかでこんなふうに自分を貫けたらと思う気持ちもゼロではない。
もちろん仕事が大好きという人もいるけれど、それにしたって働いていれば何かしらストレスはたまる。特に今回、翔ちゃんの“ミラクル”に巻き込まれてしまうAIロボ開発室室長の手柴(長谷川朝晴)はその典型。好きな仕事をしながらも、自分は何もせず手柄だけを横取りする上司に鬱憤を募らせるザ・サラリーマンだ。会社勤めの人ならば、手柴の歯がゆさもきっと共感できるはず。
そんな手柴に翔ちゃんが放った台詞がいいのだ。
普通に考えたら、そう簡単にいかないよ、と悪態をつきたいところ。でも、なぜだろう。“無職”のバカげた発言のはずなのに、何のしがらみにも組織の論理にも汚れていない“無色”の言葉だからこそ、すっかり澱んだ色をした心に真っ白なキャンバスを張り替えてくれるのだ。
これまで窪田正孝演じる翔ちゃんの“クズだけど可愛い”魅力で女心を癒してくれた『ヒモメン』。でも今回は、王道コメディの展開を楽しみながら、ちょっと自分の仕事との向き合いを考えさせられる、そんな爽快な仕上がりになっている。一瞬だけ日曜劇場かと思ったわ。
◆翔ちゃんと名コンビ結成? 愛せる敵キャラ・池目先生の魅力が大爆発
そして今回、強烈な存在感を放っていたのが勝地涼演じる池目先生だ。
いろいろ考えたんだけど、この池目先生、実は普通にいい人なんじゃないだろうか。いきなり転がり込んできた翔ちゃんを文句も言わず家に上げて、何なら(たぶんお手製の)パスタまで振る舞ってあげちゃう。就職のアテも探してあげるし、スーツも鞄も貸してあげるし、ネクタイの結び方まで教えてあげちゃう。
やっていることだけを見れば、ガンジーか池目先生かっていう優しさだ。ド変態ということを除けば…!
生活能力ゼロな翔ちゃんに対し、家も綺麗で、仕事もデキる池目先生。え、こっち選んだ方が良くない? このスペックでこの年までフリーって、超掘り出し物件じゃない? 間違いなくゆり子が池目先生を選ぶことはないんだろうけど、そんな報われないところも含めて、何だかどんどん池目先生を応援してあげたくなっている。
表情筋フル活用の顔芸に加え、キザな口調からとぼけた台詞回しまでハンドリング自在な勝地涼の演技が、池目先生の魅力を倍増。今のところ翔ちゃんの最大の被害者だけど、こうなったらとことん報われないまま終わるか、せめて最後に最高の春が訪れるか。ヒモメンとは真逆の生き方をする池目先生の今後にも注目したい。
『ヒモメン』第4話は、今夜8月18日(土)23時45分から放送。すっかり翔ちゃんの魅力に夢中なあなたも、「仕事って何だろう…」と最近ため息がちなあなたも、テレビの前で思う存分笑って、すっきりしてほしい。<文/横川良明>
※番組情報:『ヒモメン』第4話
2018年8月18日(土)午後11:45~深夜0:35、テレビ朝日系24局