“アート”でトイレの捉え方を変える!2020年に向け仙台からトイレの概念を覆す動き
テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。
現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。
今回は、2020年東京オリンピックの会場のひとつとなっている宮城県仙台市を訪問。これまでにない斬新なアイディアで2020年を盛り上げようとしている、とある会社を訪ねると…。待ち合わせ場所は、なんと「トイレ」だった。
中には、この会社の代表を務める赤間晃治さん。しかし、何故トイレが待ち合わせ場所だったのか?
赤間さんが座っているトイレをよく見ると、見事な「富嶽三十六景」が描かれている。
さらに、赤間さんの部屋を訪ねると、そこには所狭しと赤間さんの作品が飾られていた。日本らしい浮世絵のデザインもあれば、ドバイが絶賛したという煌びやかで気品あふれるものまでがズラリ。
修造も、「これはなんかもう、気品あふれる感じで、見ると絶対に笑顔になりますね」と感心する。
実はこの“アートトイレ”、芸術の都・イタリアのコンペでも入賞したことがある逸品なのだ。その成果もあり、現在はベガルタ仙台のホームスタジアムや東北の玄関口・仙台空港駅などでも導入され始めている。
それにしても、トイレでオリンピックを盛り上げるとは、一体どういうことなのか? 赤間さんは語る。
「2020では、世界中の人たちに驚いてもらうこと、そして、日本のように(トイレを)とてもきれいに使うこと、すごくきれいな空間に保つことを世界中に伝えたいと思っているんです。日本のトイレは、空間がもう凄すぎるということを“おもてなし”として世界中に届けたいと思います」
◆被災の経験を糧に。震災から生まれた新たな形のトイレ
トイレで世界におもてなしを発信したいという赤間さん。では、何故トイレを使って「おもてなし」をしようと思ったのか? その発想が生まれた背景には、仙台という場所が深く関わっている。
赤間:「僕たちはもともと水道事業もやっていますので、東日本大震災のときは発生2日目くらいからライフラインで水道復旧というものを行ったんです。だけど、トイレを設置しても、みなさんが殺到するのであっという間に詰まってしまったり汚くなってしまったり…。
それで皆さん、水を飲まなかったりとトイレを使わない工夫をしようとし始めてしまって、それで入院の方が出たり、お子さんの場合は体力の弱い方から病気になってしまったりと、健康被害にまで直結してしまいました。
そのときに、部屋のように“汚したらまずい、拭かなきゃいけない”とちゃんと思えるような、大切にできるトイレが出来ないだろうかということで、私はこの事業を始めたんです」
震災後、来る日も来る日もトイレの清掃と修理に追われた赤間さん。きれいに使ってもらうにはどうすれば良いかを考え抜いた結果が、「アートトイレ」だったのだ。トイレという場所への捉え方や感じ方を、アートによって変えようとしている。
◆開発に3年を費やした「アートラッピング」
トイレは毎日何度も使うため、耐久性や実用性を考慮し“ラッピング”でアートを施すことに決めた赤間さんだったが、実際にトイレにラッピングする作業は試行錯誤の連続。なぜなら、細かい凹凸が沢山あるトイレに、シワなく気泡なくシートを張るという作業は、至難の技なのだ。
しかし、赤間さんは3年がかりで、この複雑な立体に美しくシールを張る方法を編み出す。
修造:「普通の人だったら、たぶん諦めちゃうでしょうね。赤間さんの根底には、何があるんでしょうか?」
赤間:「根底には、“笑顔”ですね」
修造:「笑顔?」
赤間:「震災以降、取り戻さなきゃいけなかったのは“笑顔”なので。それがすぐに戻ってくるような環境をもっと増やしたいです」
さらに赤間さん、2020年に向けて新たなトイレの形も模索しているという。それが、“プロジェクションマッピッグ”だ。
外壁を使いながら、アートトイレの周辺の世界観をグラフィックで演出するという、これまでとは全く逆の発想だという。修造も、「ほんとだ。色が変わってく」と驚きを隠せない。
トイレに、水だけでなく映像も流す“トイレのプロジェクションマッピング”。これまでのイメージを覆す、まさに「きれいに使いたくなるトイレ」が生まれようとしている。
赤間さんは、「トイレに絵を描く変なおじさん」と子供たちから言われることもあるとおどけるが、そんな“トイレを愛した男”の「トイレで世界中を笑顔にする」という宣言の達成に期待だ。
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系