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巨人・菅野智之を“怒った”大学の先輩。菅野が今も忘れぬ一度だけの説教

7月13日(金)・14日(土)に行われる「マイナビオールスターゲーム2018」。

今回、選手が選ぶ“選手間投票”で出場するのが、巨人をけん引するエース・菅野智之だ。

今シーズンから巨人の選手会長に就任し、名実ともにリーダーとしての自覚をもってチームを引っ張っている菅野。後輩への指導では、「言いたくないことを言わなきゃいけないことも絶対ある」として時に厳しい言葉を与えることもあるが、その姿勢の礎には、ある恩人の存在がある。

菅野の出身大学といえば、東海大学。菅野にとって東海大は、伯父である巨人の前監督・原辰徳の母校であり、入学当時の総監督は、祖父である原貢さんが務めていた。

否が応でも注目される環境にいた新入生の菅野だが、そんな彼を特別扱いせず、さらに厳しさをもって大切なことを教えた先輩がいた。当時4年生だった中西大器(たいき)さんだ

©テレビ朝日野球

東海大学で主に中継ぎ投手として活躍した中西さん。現在は都内の会社に勤めているが、菅野は当時から10年以上経った現在もなお、「大学時代の先輩・中西大器さんと過ごした日々がなかったら、今の僕はいません」と中西さんに対して強い恩義を感じている。その理由とは、いったい。

 

◆中西さんのチーム内での立場と姿勢

菅野は、当時の中西さんのことをこう振り返る。

「野球以外のところで、普段の生活から何から何まで教わった気がします。誰よりも練習していましたし、ランニングひとつにしても必ず先頭を走って、背中でチームを引っ張るという姿を1年生ながら見ていました。今の自分の成長にすごく繋がっているんじゃないかなと思います」

また、当時のコーチも中西さんについて次のように話す。

「監督や僕がちょっと(チームを)注意したいときがあったんですけど、そういうときに事前に中西君なんかが変わってくれて。悪役というか、学生間で本当はやりたくない役だったと思うんですけど、自分が悪者になって注意をしてチームを良くしていこうというような、そういうことに徹してくれていました。そういうところで(菅野)智之もいい影響を受けたんじゃないかなと思います」

コーチの話す中西さんの姿勢は、まさに現在の菅野が言う「言いたくないことを言わなきゃいけないことも絶対ある」という後輩へのスタンスと通ずるものだ。

菅野と中西さんの2人はまた、寮では同じ部屋だった。

2人で過ごす時間が多いなかでも中西さんは、たとえば原辰徳や総監督の原貢さんなどの話はしたことも聞いたこともなかったという。中西さんは、あらゆる面で菅野を特別に扱うことはしなかったのだ。それは、後述する一度だけ叱った出来事へも通ずる。

そして、菅野は中西さんの寮での過ごし方にも大いに影響を受けたという。菅野は、こう振り返る。

「今だから言えるんですけど、夜(寮に)いない先輩が結構多いんですよ(笑)。夜どっか行っちゃう先輩。でも大器さんはすごく真面目な方だったので、必ずいる。僕としては、すごくそれが、毎日のなんでもない時間なんですけど、一緒に過ごす時間が良い時間だったなと思っています。野球だけのことじゃなくて、いろんな話を聞かせてもらったりしました」

 

◆一度だけ叱った、国頭キャンプ

©テレビ朝日野球

そんな菅野と中西さんは、最も印象に残っている思い出として、共通のものを挙げた。それは、沖縄・国頭でのキャンプのこと。中西さんが一度だけ菅野を叱ったという出来事だ。

中西さんは、次のように振り返る。

「彼(菅野)がいま覚えているかわからないですけど、彼は最初入ってきたときは僕と一緒で中継ぎで、(キャンプで)正直に言うと“格下”な対戦相手と試合するとき、彼はブルペン待機だったんですね。

そのとき、他の選手と話すのはいいんですけど、ちょっと試合に関係ないことを話していたりと、なんとなく僕の目からは緊張感が抜けてるなというか、準備がちょっと疎かになっているんじゃないかなという試合がありました。

結果、(その試合で)彼は終盤に登板することになって、結果は細かく覚えていませんが、試合後のピッチャーだけのミーティングの際に叱ったというか、準備に対する姿勢ということについて話したことを覚えています」

中西さんはさらに、「特別扱いはしないと言いながらも、やっぱりいい方向に導いてあげたいなというのが当時ありました。特別じゃないと言ったらウソになるかもしれませんね」と話す。

©テレビ朝日野球

技術について教えることは何もなかった菅野に、後にも先にも一度だけした説教。菅野は、これを強烈に記憶していた。同じ出来事について、中西さんと6年ぶりに再会した菅野はこう振り返った。

「僕すごく覚えているのが、大器さんは覚えてるかわからないですけど、最初の沖縄(国頭)キャンプに呼ばれたとき、試合中のブルペンで笑顔まじりに投げてたら、試合終わった後に大器さんに怒られて。みんなの前で『あれはダメだぞ』って。

結果的には抑えられたんですけど、フォアボールでランナーを出してしまって、『結果抑えられたかもしんないけど、そういう隙とか油断がフォアボールに出てるんじゃないのか』って言われたのもすごく覚えてます。結果じゃなくて過程やプロセスを大器さんはすごく大切にされる方だったなって。

僕はそれが土台にあるから、今いる若手とかにも、もちろんプロというのは結果が全ての世界かもしれないですけど、でもそれだけじゃなくて、大器さんの教えが根付いているから、そういう(過程やプロセスの)ところにどうしても目がいっちゃうんです」

大学1年生の1年間だけを一緒に過ごした先輩が、たった一度だけした説教。それを忘れず、自身の野球人生に活かし、日本一の投手となった菅野智之。

今の自分を作った中西さんと過ごした日々に感謝の思いを抱き、それを胸に球界を沸かせ続ける菅野智之からますます目が離せない。<制作:テレビ朝日野球>

※放送情報:「マイナビオールスターゲーム2018」両日ともテレビ朝日系列にて放送
・第1戦 京セラドーム大阪
7月13日(金)よる7時〜 ※一部地域を除く

・第2戦 リブワーク藤崎台球場(熊本県)
7月14日(土)よる6時30分〜