決勝Tで210分間無得点…“初ゴール”決めるのは大迫、香川、乾、それとも本田?
未知の扉を開けることができるのか。サッカーW杯の日本は2日(日本時間3日未明)、決勝トーナメント1回戦でベルギーと対戦。日本サッカー史上初の8強入りを目指す。
「赤い悪魔」ベルギーは、世界ランク3位の優勝候補。欧州予選から今大会のグループリーグ3戦まで、22試合連続で負けなしだ。欧州屈指のタレント集団で、市場価値を示す移籍金は、専門サイト「トランスファーマーケット」によるとチーム(23人)総額980億円相当、実に日本の約10倍になる。
圧倒的な下馬評不利でも、西野朗監督(63)は前日会見で「勝負は紙一重だと思う。勝機はピッチのどこかに落ちていると思う。それを全員で拾っていきたい」と「ジャイアントキリング(大番狂わせ)」を誓った。
新たな歴史を刻むためには“不名誉”な記録を打破しなければならない。6大会連続出場の日本の16強入りは2大会ぶり3度目だが、決勝トーナメントでまだゴールがない(1次リーグではロシア大会を含む全18試合で13人が計18ゴール)。
2002年日韓共催大会ではトルコと対戦して、試合開始早々のコーナーキック(CK)で喫した失点を挽回できず0-1で敗退。2010年南アフリカ大会では、パラグアイ相手に延長戦でも0-0のまま決着がつかず、PK戦で涙を飲んだ。つまり、210分間連続で無得点が続いている。
波乱続きの今大会。決勝トーナメント1回戦で姿を消したアルゼンチンのFWリオネル・メッシ(31)、ポルトガルのFWクリスティアーノ・ロナウド(33)の2大スターでさえも、ともに4大会連続出場ながら決勝トーナメントで得点なしのジンクスを破ることができなかった。果たして、日本勢は初のゴールを奪えるのか。
ベルギー戦の先発は、グループリーグ(H組)のコロンビア、セネガル戦の主力メンバーに戻す見込み。点を奪いに行かなければ、初の8強入りもあり得ない。
歴史に名前を刻むのは、ワントップのFW大迫勇也(28)かMF香川真司(29)、MF乾貴士(30)、再び「スーパージョーカー」を担うMF本田圭佑(32)か。それとも14人目のW杯得点者が現れるのか。3バックのベルギーに対して両サイドからの切り崩し、ボランチのMF柴崎岳(26)の縦パスがカギを握る。
一方、守備陣は1次リーグで3試合連続の失点。ベルギー戦では、今大会4得点のエースFWロメル・ルカク(25)を抑えなければならない。190cm、93kgの体格で「冷蔵庫」と呼ばれるルカクは、両親がコンゴ共和国からの移民で少年時代、貧困と人種差別に苦しんだ。自宅のアパートではネズミが走り回り、母親が牛乳を水で薄めて食卓に出すほどの貧しさ。テレビがなくてサッカーを見ることができず、試合に出るたびに相手チームの親から出身地を問われる屈辱も味わったという。それほどの極貧環境からはい上がり、2011年から英プレミアリーグへ。昨季、エバートンからマンチェスター・ユナイテッドに移った時の移籍金は110億円、年俸は20億円相当(推定)。まさにサッカーに人生を賭けた男を食い止めるのは至難の業だが、DF吉田麻也(29)、DF昌子源(25)が体を張って封じる決意だ。
日本は1次リーグ最終戦のポーランド戦で、前の試合から先発メンバー6人を入れ替え、試合の終盤は時間稼ぎに徹した。他会場の結果に委ねる「他力」の試合運びは、世界的な批判を浴びた。
16強入りへやむを得なかったとはいえ、評価を得ていた「侍サッカー」のイメージは失墜。ただし1次リーグ突破に全力を使い果たした過去2度と違って、今回は「余力」がある。再びアグレッシブな戦いでレッド・デビルズに挑み、サムライ・ブルーの誇りを取り戻す。