元日本代表・鈴木啓太の新たな挑戦は「うんちの研究」――腸からアスリートを支える
テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。
現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。
ロシアワールドカップで日本中を熱狂させる、サッカー日本代表。今回修造が訪れたのは、そのOBでもある鈴木啓太のもとだ。
鈴木啓太といえば、浦和レッズ一筋16年、現役時代には数々の国際大会を経験したトップアスリート。そんな鈴木はいま、これまでとはまったく違った切り口で2020年のアスリートを支えることに取り組んでいるという。
修造:「鈴木さんは今、何をやっているんですか?」
鈴木:「アスリートの腸内細菌の研究をしています。“うんち”ですね、簡単に言うと」
修造:「今日は僕が“うんち”になればいいんですか?」
鈴木:「えーとですね…。うんちにはならなくて大丈夫です(笑)」
鈴木はなんと、“便”でアスリートをサポートするという。しかし、便と選手のパフォーマンスには、一体どんな関係があるのだろうか?
◆「強い腸で、強いメンタルを」現役選手も協力する最先端の研究
鈴木は、次のように話す。
「一般の方にも言えると思うんですけど、たとえば大事なプレゼンがあるといった緊張するとき、下痢になってしまうことがあると思います。それって、腸と脳が繋がっていると言われていて、頭で感じるストレスとお腹で感じるストレスっていうのは、そのままダイレクトに現象として現れると。だからこそ、腸が強いことによってメンタルも鍛えられる、強くなるかもしれない。逆の発想です」
これに修造が、「そういうことを論文などで出している人っているんですか?」と尋ねると、鈴木は「いないんですよ。そのことについては、(まだ)ない。だから僕らは、その発見をしたいんです」と答えた。
強い腸を持つことで、メンタルも強くする――そんな目標を掲げた鈴木は、現役引退して間もなく、大学とアスリートの腸内細菌の共同研究を行う会社を設立(※現在、香川大と共同研究)。
拠点となる研究室ではさまざまなアスリートの便を集めており(便から取り出した菌を巨大冷蔵庫に保管)、その数なんと17競技400人分だという。
その中には現役の日本代表経験のある選手も在籍しており、女子ラグビー・冨田真紀子選手もそのひとり。冨田選手も当初、「本当に便で自分のコンディションが良くなるのか」と驚いたというが、少しずつ手ごたえを感じているという。
「アスリートって、パフォーマンスが良いときの記録を残しておきたいと思うんですよ。自分の腸内の細菌の状態を数値化できるっていうのは、『あのときのパフォーマンスは腸の状態が良かったから、ああだったんだ』って、そこに着目しやすい。東京オリンピックに向けてイチバン良い数値を残すためには、そうやって客観的なデータがあるほうが助かるなって思います」(冨田選手)
◆松岡修造の腸は、“一般人以下”であり“一般人の10倍”
そして今回は、元トップアスリートの松岡修造も特別に便を分析してもらった。独自の分析方法で出てきたデータの数々の中でも、鈴木はある数値を指摘する。
「多様性というのがあって、菌の種類がたくさんいると良いと言われているんですね。ある研究の報告によると、アスリートは多様性に富んでいるという研究結果も出ています」
これは、腸内細菌の種類の多さを示す「多様性指数」。修造の数値は77.0で、一般人の平均よりもやや低い数値だ。ちなみに、2015年に引退した鈴木の数値は、さすがの193となっている。
一方で、今回の分析では修造の腸内細菌にある特徴が見つかった。
鈴木はそれについて、「わかめとか海藻類を分解して栄養にする、そういう菌が多いってことが分かったんです」と説明する。海藻からの栄養を吸収し、エネルギーに変えられる腸内細菌。修造のそれは、一般人の平均と比べると実に10倍以上だった。
修造:「多い? それは“熱さ”とかは関係ない?」
鈴木:「“熱さ”は関係なかったですね(笑)」
修造:「関係ないか…。じゃあ、修造じゃなくて“海苔造”ですね」
鈴木:「松岡海苔造さんですね!」
こうしたデータを継続的に取っていくことで、自分にとって最適な腸内環境を見つけ出していくことが鈴木の最終目標。2020年に向けて、研究はまだ始まったばかりだ。
鈴木:「将来、こういう選手になりたいっていう子供たちがいるわけじゃないですか。その子供たちが、どういうように食事を摂っていったら、どういうようにお腹の状態を作っていったらこのアスリートに近づけるんだろうとか、そういったとこまでやっていきたいんです」
修造:「いいじゃないですか!例えば、“錦織圭さん腸”とか、“羽生結弦さん腸”って言ってね。でも、なんで鈴木さんは便に着目したんですか?」
鈴木:「昔から、母親から“絶対腸は大事だから。人間って腸が大事だから大切にしなさい”って言われて、食事とかにも気を遣ってきたんですよ。僕もそれが一番大事だと思っていて」
修造:「それは、お母さんに感謝ですね」
鈴木:「本当にそうです。母に感謝ですね」
2020年に向け、“腸内からアスリートを支えたい!”という目標をもつ鈴木。そんな彼の今後の活動の展開に注目だ。<制作:TOKYO応援宣言>
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
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