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脚本に取り掛かるまでに半年!「終着駅シリーズ」プロデューサーが語る大事なプロセス

6月24日(日)、「終着駅の牛尾刑事」30周年記念作第2弾『森村誠一ミステリースペシャル ガラスの密室』が放送される。

©テレビ朝日

今年2018年は、森村誠一氏の原作に牛尾刑事が登場して30年(※初出は1987年1月刊行の『駅』)。人気シリーズとして長く続いてきた「終着駅シリーズ」の土台ともいうべき脚本は、どのように構築されているのか?

最新作『森村誠一ミステリースペシャル ガラスの密室』のオンエアを前に、シリーズ第1作からの歴史を知る佐藤凉一プロデューサーが“脚本作り”について、そして“制作者としての思い”を語った。

――あまり知られていない、シナリオ制作の秘話をお聞きします! この『終着駅シリーズ』の脚本作りは、そもそもどんなところからはじめるのでしょうか?

「まず、常に脚本家さんには森村誠一先生の原作を5~6冊以上読んでもらっています。毎回、どの作品を映像化するのかを考えるのがスタート地点です。そこから、脚本家さんと“この原作ならば、こんな風にアレンジできるのでは”とか、“こういうテーマが描けるのではないか”などとキャッチボールを繰り返し、1本に絞っていく作業をします。そして原作を選んだあとは、原作のどこをエッセンスとして描くのか、また時代性も考慮してトリックなどを見直し、プロットを脚本家さんに考えていただきます。

さらにその最初のプロットをもとにして“こういう人物が登場した方が面白いのでは”“こういう事件が起きた方が、謎が深まるのではないか”など、具体的な構成を積み重ねていって、プロットを完成。その上で脚本の執筆に入っていただきます。だから、原作を選ぶところから脚本に入るまで、半年ぐらいかかりますね」

――脚本に取り掛かるまでのプロセスに、半年もかかるとは…!

「原作者の森村誠一先生との信頼関係があるからこそできることなのですが、原作から何をすくい取って、どんなドラマを構築するかという作業が僕らにとっては最も大事な仕事であり、ドラマの“命”だと思っているんです。テーマというとおこがましいのですが、その作品の“土台”や“根っこ”となるものを、とにかく掴まえなくてはなりません。

それは原作を選んだ段階でストンと決まるときもありますが、ストーリーを構築していくなかでどんどん深められていく場合もある。そうするとストーリー自体が変わってきたりして、まさにその作業そのものがドラマのようなものです」

 

◆大事にするのは“牛尾目線”!

©テレビ朝日

――ようやく脚本執筆に入った後、脚本家さんとはどのようなやりとりをされるのでしょうか?

「『終着駅シリーズ』ではベテランの脚本家さんたちにシナリオをお願いすることが多いのですが、熟練の皆さんでも第3稿、第4稿と手直しをしていただきますね。

でも、僕らプロデューサーでもセリフの“てにをは”を変えるだけで一晩悩んだりするので、言葉を生み出すことの呻吟(しんぎん)といいますか、セリフを生みだす作業がものすごく大変なこともわかっているつもり。だから、乱暴に変えたり、やみくもにカットしたりはやりません。お互いにリスペクトしあいながら、脚本を練っていきます」

――半年以上の過程を経て「終着駅シリーズ」のシナリオは完成されていきますが、最も大事にしているのはどんなところですか?

「『終着駅シリーズ』では牛尾の目線、つまり牛尾が捜査上でどんなことに引っかかるのか、そして最後に犯人に何を語り掛けるのかをいちばん大事にしています。また、通常なら捜査線とは別に、ゲスト側のドラマをパラレルで描いたりしますよね。捜査とは別に、視聴者にはゲスト側の情報が入るので、それは展開としてとても面白いんです。でも『終着駅シリーズ』では基本的に牛尾の目線で描いていくので、そこは大きく違う。簡単にいうと、牛尾の目線が視聴者のみなさんの目線になっている、ということですね。

もはや定番になっているかもしれませんが、捜査会議で徳井優さん演じる山路刑事と対立して窮地に追いやられたり、秋野太作さん扮する坂本課長に頭を下げて単独で捜査に行ったり…。そんなふうに牛尾が困ったり、行き詰まったりしたとき、どう打開するかをみなさんと共有したいんです。『あぁ、牛尾刑事また失敗しちゃったな』とか『ついに海岸に立っちゃったよ』(笑)なんて、牛尾刑事と一緒にみなさんがドキドキワクワクしていただけたらいいなと思っています」

©テレビ朝日

――紆余曲折を経て完成した台本…。それを手に取ったときは、どんなことを思うのでしょうか?

「打ち合わせを積み重ねて、すでに何度も繰り返し読んできたはずなのに、刷り上がった台本を手に持つと、何かが違うんですよ。製本された台本を1ページ目から繰って読み直すと、制作者であるはずの自分自身が『いい作品だな~』とジワッときてしまう(笑)。そういうことが往々にしてあるシリーズですね」

――「終着駅シリーズ」には、プロデューサーとしてどのような思いを込めているのでしょうか?

「2時間見終わって何も残らない作品にはしたくないな、と思っています。もちろんこの作品はエンターテインメントであって、文芸作品を目指しているわけではないのですが、見終わったときに10秒でも20秒でもいいから、ちょっと立ち止まって自分の立場や世の中のこと、何かしら考える瞬間が渡せるといいなと思っています。

最新作の『ガラスの密室』も、ラストのナレーションに牛尾の“祈り”のようなものが込められているので、最後まで注目していただきたいですね。とにかく、余韻というか、温もりが残るような作品にしたいということは常に心がけています」

――『ガラスの密室』に続く次回作は、『事件記者冴子』との合作などを含めて“シリーズ通算50作品目”となるそうですが、記念作の構想は?

「まだお話しできる段階にはないのですが、スタッフ一同、50作目に向かってよりよいものを作ろうという心構えや覚悟は持っておりますので、期待していただけたらうれしいですね!」

※プロフィール:佐藤凉一(さとう・りょういち)
1979年テレビ朝日入社。以来、ほぼ一貫してドラマ制作に携わる。「土曜ワイド劇場」では、『終着駅シリーズ』のほか『タクシードライバーの推理日誌』や『監察官・羽生宗一』など数多くの人気シリーズやスペシャルドラマをプロデュース。『臨場』『遺留捜査』『相棒』など連続ドラマも多数、手掛けている。

※番組情報:日曜プライム『森村誠一ミステリースペシャル ガラスの密室』
2018年6月24日(日)午後9:00~午後11:05、テレビ朝日系24局

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