中嶋一貴、ポールポジション獲得も「予選が占める割合は1%」と冷静【ル・マン24時間】
世界3大レースのひとつ、ル・マン24時間レース。このレースに挑戦している中嶋一貴は、2014年に日本人として初めてのポールポジションを獲得した。そして昨年は小林可夢偉がコースレコードでポールポジションを獲得。しかし、勝利までは至らなかった。
最後には勝利の女神の微笑み、つまり“運”も大切なのかもしれない。
今年ふたたび、中嶋一貴がポールポジションを獲得した。タイムは3分15秒377。まずは記者会見で、今日の走りを振り返った。
(以下、中嶋一貴コメント)
「昨日よりタイムが向上したのは、走りだしたタイミングが良く、トラックコンディションに恵まれたからです。QF3が始まる直前に前のほうでコースオープンを待ちました。走り出すとLMP2クラスが前に数台いましたが、ほぼ問題なくパスすることができて、ポールタイムに繋がりました。
これはチームスタッフの仕事のおかげなので、彼らに感謝したいと思います。QF2からQF3へと短い間でも、しっかり準備してくれました。マシンの方向性としてはQF1から大きく変える部分はありませんでした。
タイムは、本当にトラックコンディションが良かったことが大きいと思います。昨日は思ったほど良かったわけではなく、今日は思ったとおりの走りが出来ました。
そして、レースに向けてマシンも良い方向になったことが重要です。予選はそこまで重要ではなく、あくまでもレースがすべてです。その意味では、予選が占めているのは1%程度だと思います。週末すべてを通じて、という意味ですが……。
僕もチームもそれがわかっているし、レースはタフですから、最高の価値を目指して進むだけです。マシンは予選ではなく、よりレースに向けた状態で仕上がったと思います。
2度目のポールポジション、と言われるのですが、正直、すでに気持ちはレースに切り替わっています。ただ、ポールタイムにはホッとはしました。フィーリングではもう少しいける部分もありましたが、うまくまとまったと思います。
新たなコースレコードを記録出来たかは不明ですが、近い状態にいけたと思います。完全にコース状況はクリアでした。あんな状況はなかなかないですね。前にいた数台は普通に走れば、いいタイミングで抜けた感じでした。路面温度が低い状態でのタイヤ、予選3回目は途中で雨がパラパラと少し降りましたが、あらゆるものが試せたと思います。ポールのアタックラップはソフトタイヤではなく、真ん中の硬さのタイヤでコースに出ました。
土曜日にスタートするレースは、淡々とスタートから最後まで行きたいと思いますが、淡々と何事もいくほど簡単ではないので、何事か起きるとは思っています」
あくまでも本番はレース。この1年間、あらゆる事態を想定してチームは準備を進めてきた。そしてドライバー自身が感じるように、予選が占める割合は1%に過ぎないという。冷静沈着な対応で、チームもドライバーも、ル・マン24時間レース初制覇を目指す。
◆ドライバーたちのルーティーンは?
そのためにドライバーやチームスタッフが毎年新たな挑戦をするなか、個人的なルーティーン(準備する作業や動作)は決めているのか、それとも毎年変わっていくものなのか、ドライバーたちに聞いてみた。
中嶋一貴は、「チームとしては新しいことを取り入れたりしていますが、個人的には変わったことはしていないですし、メンタリティ的にも同じという感覚です。ゲン担ぎ的なこともしていないですね。ただただレースに集中することだけです」と平常心派。
小林可夢偉は、「今年はなにもしてないです。というか、最初の年はすごく準備したんですよ。それこそ、食事から何から、すべてに気をつかって。でも実際にやってみたら、そうした準備したからって何も変わらないなって。それに気づいたんで、年々やらなくなって、今年はまったく」と反動が出たパターン。
7号車・可夢偉のチームメートのマイク・コンウェイは、「うーん、個人的にはとくに気にしていることはないな。それより、チームは色々と変更があって、それこそシステムのサインが変わったりだとか、意外と覚えることがあるんだ。だから、個人的な部分はいつもどおりのほうが楽だと思うよ」と、最も納得できるといえそうな説明をしてくれた。
このように、ドライバーたちはル・マンだからといって特別な準備はしていない。逆に、そうした準備がプレッシャーやいつもと違う行動に繋がり、結果を出せないのかもしれない。
さて、ル・マン24時間はいよいよ金曜日の夕方にル・マン市街中心地でドライバーズパレードを行い、土曜日の午後3時にレースはスタートする。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>
※なお今回トヨタ自動車では、ル・マン24時間レース挑戦の模様をTOYOTA GAZOO Racingサイト内にてダイジェスト配信。24時間すべてを追うのは大変という人に向け、6回に分けてスタートからゴールまでを追っていく。(こちらから)
また、東京と横浜では生中継に合わせたイベントを開催するとのことだ。(※詳しくはTOYOTA GAZOO Racing公式サイトまで)