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ル・マン24時間:トヨタとアロンソ、それぞれが目指す「勝利への栄光」

フランスの首都パリから南西にクルマで約2時間強走ったところにある小さな街、ル・マン。年に一度、この小さな田舎町が世界中の注目を集める週末がある。それが「ル・マン24時間レース」。6月16日(土)~17日(日)、今年もこのレースが行われる。

©TOYOTA GAZOO Racing

インディ500、F1モナコGPと並んで世界3大レースのひとつと言われるこのル・マン24時間レース。その名の通り、24時間走りきったチームの最大走行距離を競う。

モータースポーツは、走行するマシンのためだけに数百の人々の力が結集しなければ勝てないスポーツであり、多くの関係者が「究極のチームスポーツ」と表現するが、ル・マン24時間はなかでも最も勝つことが難しいレースと言われている。

このレースに1985年から参戦しているトヨタ自動車。今年は、世界が驚くタッグを組んだ。2005年/2006年F1ワールドチャンピオンのフェルナンド・アロンソとだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

トヨタは、1991年にマツダが日本車メーカーで唯一成し遂げた総合優勝に続くため。アロンソは、過去に名ドライバーのグラハム・ヒルだけが成し遂げた世界3大レース制覇を実現するため。

それぞれが最大の挑戦を続けており、今シーズンのWEC(世界耐久選手権)では驚きのタッグを組むことになったのだ。

今年のトヨタは、7号車と8号車の2台体制で挑む。

©TOYOTA GAZOO Racing

7号車には、日本人2人目のF1日本GP3位表彰台を獲得した小林可夢偉を筆頭に、イギリス人のマイク・コンウェイとアルゼンチン人のホセ・マリア・ロペスが乗る。

©TOYOTA GAZOO Racing

8号車には、スイス人のセバスチャン・ブエミ、スペイン人のフェルナンド・アロンソ、そして、トヨタが初挑戦した1985年のマシンに乗った中嶋悟の息子、中嶋一貴が乗る。本人は意識していないそうだが、トヨタ・アロンソと同様、中嶋一貴にとっては親子2代で続く挑戦の最中であるのだ。

 

◆アロンソ「僕たちの仕事が報われることを願う」

まずは水曜日(13日)、フリー走行と予選の1日目が行われた。

土曜日と日曜日に行われるル・マン24時間レースは、本番に向けて(前週の)日曜日と月曜日は車検、火曜日はファンイベントとしてドライバーのサイン会、水曜日はフリー走行と予選1日目、木曜日は予選2日目、金曜日は全ドライバーが参加する街なかでのパレード、そして土曜日の午後3時に本番のレースがスタートし、日曜日の午後3時にチェッカーフラッグという流れで開催される。これがル・マン24時間の1週間に渡るスケジュールだ。

©TOYOTA GAZOO Racing

さて、肝心のその模様だが、アロンソは初日の走行を終え、世界中から集まったメディアとのインタビューでこう語った。

――陽が落ちてからの走行はどうでしたか?

「まあ大丈夫だったよ。ただ、夜間走行は大事だからね。明日もさらに練習する時間があるし、本番に向けて対策を練っていくだけだ。具体的にはブレーキングポイントの違いなどを把握すること。

しかし、素晴らしいところだよ。昼間のタイムと夜のタイム、それぞれに挑戦しがいがある。僕も可能な限り速く走るさ」

――これで昼と夜、初めてル・マンのすべてを走ったわけですが、感触は?

「問題ない。ただ、テストはテスト。今週末はレーシングスピードでの走行で、違いはある。それに車体にも気をつけることが必要だ。実際のレースに走らせるマシンだからね。それはチームにとってもそうで、実際に走る車体であらゆることを学ぶ。そしてドライバーにとっては、より夜間走行に慣れる時間が必要。だから、明日さらに練習を重ね、本番に向けてじゅうぶん準備したいね」

――あなた自身、今回の挑戦でドライバーの夢であるトリプルクラウン(世界3大レース制覇)に近づけると感じますか。

「まあ、どうなるか。レースは本当に長い戦いだ。未来を考えることは無駄というか、誰もがレースで勝ちたいと思っている。そしてル・マン24時間レースは、途中で何があっても不思議じゃない。ただ、僕たちはじゅうぶん準備をすることが求められ、トヨタはこれまでのところしっかり準備を進めている。だから、この週末は僕たちの仕事が報われることを願いたいね」

このように、控えめながらも世界3大レースのひとつを制覇することに自信を覗かせている。

 

◆中嶋一貴「幸運も願って」

©TOYOTA GAZOO Racing

もうひとり、チームメートであり、こちらは親子2代の悲願となるル・マン24時間レース制覇が掛かる中嶋一貴は、こうインタビューに答えた。

――予選初日、素晴らしいタイムでしたね。

「難しい予選でした。クリアラップが取れないことがほとんどでしたから…。この僕のタイムも、完全なクリアラップではなかったです。ただ、3分17秒台へ入ったのは、大きなタイムアップでした。

そして同じようにトリッキーだったのは、セットアップです。現時点では良い方向にきています。だから、まずはスタートにあたり、僕たちの本来あるべきポジション(最前列)からスタートしたいと思います。ですから、僕たちにはもっと準備が必要だと思いますし、その仕事を明日もしていくだけです」

――明日はさらに激戦になりますか?

「でしょうね。明日はトラフィックの状態によりますが、もっとタイムは縮まると思います。ただ、それには運も必要なので、どうなるか…ですね」

――ときにトラフィックは興奮、もしくはストレスを引き起こす要因になりますか。

「ストレス…。まあ、そうだと思いますが、それはレーシングドライバーなら誰でもだと思います。とにかくトラフィックが混雑していて、そこにはストレスを感じます。ただ、それも含めてル・マンに合わせなくてはなりません。僕はただ、プッシュしていくだけです。あと幸運も願って(笑)」

このように、ここまでなかなか微笑まない勝利の女神を引き寄せるには運も重要だと笑った。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

 

※なお今回トヨタ自動車では、ル・マン24時間レース挑戦の模様をTOYOTA GAZOO Racingサイト内にてダイジェスト配信。24時間すべてを追うのは大変という人に向け、6回に分けてスタートからゴールまでを追っていく。(こちらから)

また、東京と横浜では生中継に合わせたイベントを開催するとのことだ。(※詳しくはTOYOTA GAZOO Racing公式サイトまで)