本田がダメなら香川で…急造の西野ジャパン、世界の戦術から置き去り
西野JAPANは、最後の強化試合まで選手をテストすることになった。ロシアW杯(今月14日~7月15日)を控えて、日本代表は今日12日、パラグアイと国際親善試合を行う。
本番初戦(19日)のコロンビアを想定した相手に、8日のスイス戦(0-2)からガラリと先発メンバーを変更。慣れた4バック制に戻り、トップ下にはMF香川真司(29=ドルトムント)を起用する。代表戦の先発は約8カ月ぶりの背番号10が機能して、MF本田圭佑(31=パチューカ)との定位置争いに勝てるか注目だ。
国際サッカー連盟(FIFA)ランク6位のスイス戦で、先発の本田は振るわなかった。トップ下でパス出しのタイミングが1テンポ遅れて、自らペナルティーエリアに攻め込む場面もあまりなかった。
守りでも、1トップのFW大迫勇也(28=ブレーメン)が高い位置で相手にプレスをかけても、本田のバックアップが少なく、ガス欠で攻守に孤立。DF長友佑都(31=ガラタサライ)、そして香川も本田に「もっと走らないと」とダメ出しした。
世界のトレンド戦術は今、攻守で柔軟に布陣を変化させる「可変システム」。そして数人で相手にプレスをかけてボールを奪い、縦パスで一気に攻め上がる「ゲーゲンプレス」が主流になってきた。可変システムは、例えばW杯の優勝候補ブラジルなら、基本形の4-3-3(4バック)から攻撃に転じると、両サイドバック(SB)が最前線まで走り込んで2-3-5に変化する。
ドイツで生まれたゲーゲンプレスは、敵陣で激しい「プレッシング」を仕掛けてボールを奪い、速い縦パスをつないでゲーゲン(カウンター攻撃)に転じる。攻撃陣の守備意識、素早い攻守の切り替えがポイントだ。
緻密な連携ができなければ機能せず、ディフェンスラインが高いので、逆襲のリスクを負うことになる(電撃解任されたバヒド・ハリルホジッチ前監督も当初この戦術を生かそうとしたようだが、最後は「1対1の強さ(デュエル)」「縦に速いパス」と言うだけになってしまった)。
急造の西野JAPANは、この世界トレンドに取り組む時間がない。西野朗監督(63)は選手の声に応じて、ハリル体制が否定した「ポゼッション(ボール保持)」を容認。2014年ブラジルW杯を制したドイツ代表が採用していた「プログレッション」、つまり「プレッシング」と「ポゼッション」の両方を用いた戦術を意識してか、日本流にはタメも必要と判断した。
だが、スイス戦で本田は相手を追い切れず、攻撃でも「ノッキング」を起こしてしまった。チーム全体でも、欧州組がそろいながらハリルホジッチ前監督が指摘していたデュエル、積極性を欠いて、世界のスピードに置き去りにされた感がある。得点力不足は、相変わらずだ。
ドルトムントでドイツ流を体感している香川が、仮想コロンビアのパラグアイ戦で機能すれば、代表戦3連敗で暗雲漂う日本にとって、まさしく「光明」になる(パラグアイはW杯に出場せずFIFAランク32位だが、同61位の日本より格上)。
左足首の負傷を心配された香川が、ラストチャンスをつかむことができるか。西野JAPANはW杯直前になっても、なかなか盛り上がらない。注目度でも「救世主」になってほしい。