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“インスタ発”から大型個展開催へ。クリエイター・Pantoviscoの圧倒的にブレない姿勢

大小含め数えきれないほど多くのムーブメントを発している巨大SNS「Instagram(インスタグラム)」。昨今、「インスタで大人気!」「インスタ発!」という言葉をメディアで見たり聞いたりしない日はないといっても過言ではないだろう。

そんななか最近では、Instagramをきっかけに人気を集めた人物がネットの世界を飛び出して活躍する事例も増えてきた。“クリエイター”としてそのような動きの先陣を切っているのが、Pantovisco(パントビスコ)だ。

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Instagram上で投稿してきたイラストがじわじわと人気を集め、いまや33万超という数のフォロワー(2018年6月時点)を得ているマルチクリエイター・Pantovisco。

その作風は、“ユーモア”や“あるある”を軸に多様な枠(シリーズ)のイラストや言葉で日常の気付きを表現していくというもので、これまでに投稿したイラストは6000点以上。多くの人をクスッとさせ、多くの人に共感や勇気を与えてきた結果、若い層や女性を中心に絶大な支持を獲得している。

そんなPantoviscoがこのたび、東京・池袋PARCOにて特別展「パントビスコの本当にくだらない個展」を開催(※6月24日まで開催中)。SNSを飛び出し、イラストだけでなくオブジェ・ムービー・フォト・ミュージックなど表現手法を問わない様々な作品が“くだらなく”具現化され展示されている。

 

◆Pantoviscoの“ユーモア”観

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これまでにもInstagramから飛び出して様々な活動を見せていたPantoviscoだが、ついには池袋PARCOで2週間以上の大型個展を開くことに。今回、そんな彼に作風やSNSでの表現スタンス、そして個展を開いた思いについて話を聞いてみた。

――Pantoviscoさんは、一貫して“ユーモアある投稿”をすることからブレないように見えます。ユーモアには強い“こだわり”が?

「いえ、こだわりはそんなにないんです。ただ僕が面白いと思ったものを、『みんなどう思う?みんなもこれ面白いと思う?』ってクラスのみんなに絵にして見せるみたいな、その延長線という感じがしますね。

だから、それを面白くないよって思う人はフォローしないでしょうし、スルーするでしょう。ただ、運良く僕と同じような笑いのツボというか、発信を理解してくれる方がたくさん集まってくれた結果、より面白いことを追求してやらせてもらえるようになりました。今回の個展もそうです」

――では、Pantoviscoさんにとって“ユーモア”とはどんな役割のものですか?

「いま頭に浮かんだのは、調味料や香辛料みたいなものですかね。例えば、僕はかけない派ですけど、うどんに唐辛子をかける人がいるじゃないですか。別になくてもいいんだけど、好きな人にとってはあれば生活がちょっとだけピリッと刺激的になる。そしてそれは、『お前唐辛子食えよ』って押し付けるべきものでもないし、その人自身が必要か不必要かは選択できる。ユーモアもそういうものだと思います」

 

◆絶妙なバランスや距離感の秘訣。「誰も傷つけたくない」

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――Pantoviscoさんの投稿の特徴には、見る人に強く共感を与えたり少し勇気を授けたりという点もあります。たとえば、“乙女に捧げるレクイエム”シリーズなど。このような投稿の言葉はどう考えているのでしょうか?

「僕は、特定の誰かを指定して考えるということは、ほぼしないんです。また、“乙女に捧げる”と銘打ってはいますが、実は僕自身がこう言われたいなというのもありますね。自分が美味しいと思えるものしか人には勧められないのと同じで、自分が疲れたり傷ついたりしている時にこういうことを言われたら嬉しいなっていう言葉でないと書けない。

そして、それ(言葉)を皆さんに渡しているというわけではなく、自分のまわりに置いているだけなんです。あとはもう『必要な人は勝手に拾っていってください』というスタンスで、やっぱり別に押し付けようとは思わない。そういうほうが共感に繋がるのかもしれないですね」

――その押し付けられないバランスや距離感、確かにすごく絶妙に感じられます。

「“テイクフリー”というところがあるのかな。僕は、『おいこれ見てくれ、これ買ってくれ!』というのがあまり好きじゃないんです。そのスタンスは、たぶん嫌われてしまいますよね。僕は嫌われたくないので(笑)。打たれ弱いので。そういう性格が出ているのかもしれません」

――では、投稿において意識的に何か心がけているルールなどはありますか?

「誰かを1ミリでも傷つけるようなことがないか、というのは投稿の前に絶対にチェックします。

好きの裏返しは嫌いということも忘れてはいけなくて、たとえば赤組と白組がいるとして、僕が『赤組めっちゃ好きなんですよ』って言ったら、白組の人たちが『は?』ってなるじゃないですか。そういうようなことも、やらないようにしています。『どっちもなんか、いいですよね』っていう。

だから、そういう意味では僕は薄口なのかもしれないです。ガンガンに“これがこうでああで大好き!”っていうことを言わないようにしていますから。でも、それでいいかなと思うんです。僕は敵を作りたいわけじゃなく、味方ばっかりがいいので(笑)」

 

◆プライベート投稿を一切しない理由

――“ブレない”という意味では、Pantoviscoさんは一貫してほとんどイラストを中心とした作品しかアップしません。30万人以上のフォロワーに向け、イラストだけでなく自分のプライベートやイラストだけじゃない部分を発信したいとか、そのようなSNS的自己顕示欲は出ないのでしょうか?

「いや、自己顕示欲がないということはないですよ。だからこそ僕もちょっと映像に出たりしているので。

ただ、そこは別に求められてないだろうなと。やっぱり皆さんイラストやクリエイティブのファンになってくださったっていうのは理解しているので、たとえば突然友達との飲み会の写真をアップし始めても、『いや求めてないですよ』ってなるのは全然わかります。

あとは、そうすることによって“根拠ができる”ことを避けてるっていう意味もありますね」

――根拠ができる?

「はい、“根拠”を避けてるんですよ。例えば、『あー今日もつらいことあったー。早く立ち直りたい』とかって僕がSNSでつぶやくとするじゃないですか。そうしたら、失恋したのかなとかって憶測されますよね。それが余計なんです。

『なんだ、この言葉ってPantoviscoが好きな女の子に宛てて書いたやつなんだ』って思われてしまうと、一気にターゲットが1人になってしまう。そうならないようにという意味ですね、根拠ができるのを避けるっていうのは。

そういう根拠は極力排除して、ゼロベースで(作品を)見てほしいっていうのが僕の思いです」

 

◆月並みだけど…「続ける」ことの大切さ

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――Pantoviscoさんは今まで、数多い依頼に対してあまり積極的にはメディア露出はされてこなかったと聞いています。そんななか、池袋PARCOという大きな場所で個展を開き、世の中に大きく出ようと思われたのはなぜですか?

「僕自身もそこに頼っている部分もあるかもしれませんが、僕をメディアの皆さんが取り上げてくださるとき、“インスタグラマー”や“インフルエンサー”、あと“インスタのフォロワー30万人”という言葉があって、それは大変すごいことだと思うのですが、そこに頼りっぱなしっていうのはちょっと違うかなというのもあって。

今回ポスターで顔も大きく出しましたし、やっぱりクリエイターとして次の次のステップにいきたいなっていうのが今回の個展の大きなテーマなんです。インスタグラマーやインフルエンサーというバックボーンを持つクリエイターがこんなに大きい会場での個展開催を実現できたということは、新しいタイプのクリエイター像の先駆けになれたんじゃないかなとも思います。

そして、そうなるともうインスタは関係ない。きっと(Instagramを)知らずに見る人からすると作家でありアーティストなので、その土壌でもやっていくっていう決心ですね。それを今回の個展で出したいっていうのがイチバンの目的です」

――InstagramなどSNSで活動している若い人たちの大きな道標になりそうですね。そのような人たちにメッセージはありますか?

「偉そうに言ってしまいますけど、こんなに夢があるよ、こんなに可能性があるよっていうことですね。

僕自身、ちっちゃい頃から絵を描いてて、『よくわかんない絵描くね』とか『なんか変だね』って言われ続けてきて大人になったんです。ただ、それをずーっとやっていたら、こんなところで個展ができるようになった。

やっぱり続けることが大事ですね。別に人に評価されなくても自分が楽しんで続けていたら、なにかカタチになっていく。そういうことが最近やけに多いんです。だから、月並みですけど、続けましょう!」

約7割が未公開初出し作品で構成されているという今回の「パントビスコの本当にくだらない個展」。“くだらない”と銘打ちながらも、そこには自ら新しいステージに立って“くだらない”をより追求し続けていく、やはりブレない一貫した熱い姿勢があることがわかった。

今回の個展、「続けてきた」という言葉にこれ以上ないほどの説得力を与える圧巻の展示量は必見だ。そしてその中には必ず、“持って帰りたい”と思ってしまうほどあなたに寄り添った作品があるだろう。

※特別展「パントビスコの本当にくだらない個展」開催概要

日程:6月24日(日)まで開催
場所:池袋PARCO 本館7F パルコミュージアム
時間:午前10時~午後9時まで(※入場は閉場の30分前まで/最終日は午後6時閉場予定)
入場料:一般500円・学生400円・小学生以下無料

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