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【WRC】シーズン折返しの“ガチンコ勝負” サルディーニャ島で第7戦開幕

現地時間の6月7日~10日、WRC(FIA世界ラリー選手権)の第7戦「ラリー・イタリア」が開催される。地中海に浮かぶサルディーニャ島で行われるグラベル(未舗装路)ラリーだ。

©WRC

4月には同じ地中海に浮かぶコルス島で「ラリー・フランス」が行われたが、全面ターマック(舗装路)で「1万のコーナーがある」と称されるラリー・フランスとは違い、サルディーニャ島で行われるラリー・イタリアはグラベル(未舗装路)ラリー。似たような気候にも関わらず、マシンセッティングの方向性がまったく違う。

やはりグラベル(未舗装路)ラリーのほうが、路面状況にマシンが合わなかったり、石や砂がマシンの可動部分に入り込むなどの理由でクラッシュやトラブルのリスクが高い。そんなリスクと背中合わせに戦い抜くわけだが、今年のWRCは接戦が続いている。

その接戦を生んでいるのは、ヒュンダイ、フォード、トヨタの3社だ。

 

◆拮抗状態の今シーズン

ドライバーズチャンピオンシップでは、1位ティエリー・ヌービル(119ポイント/シーズン2勝/ヒュンダイ)、2位セバスチャン・オジェ(100ポイント/シーズン3勝/フォード)、3位オット・タナック(72ポイント/シーズン1勝/トヨタ)と続いている。

一見、3位のタナックは引き離されているように見えるが、今シーズンのトヨタはマシントラブルや不運に見舞われることが多く、ポイント差とマシンやドライバーによる実力差はほぼない、拮抗した状態なのだ。

全13戦のうち第7戦となるラリー・イタリアは、シーズンの折返し。どのマシンも一定の熟成が進み、“ガチンコ勝負”の舞台となる。

©WRC

ポイントとしては、気温が高く、マシンの熱対策が非常に重要で、それと同じくタイヤ選択が勝負の決め手だ。どのドライバーも、高い気温のなか走行中の集中力をどう継続させるかも重要なポイントだと語る。その一方で食べ物がとても美味しく、ドライバーたちが「いつもよりも食べすぎてしまう」と笑うところも特徴だ。

そんなラリー・イタリアで昨年勝利したのが、(現在)トヨタのタナック。昨シーズンはフォードのマシンで勝利している。

タナックは、「昨シーズンは初日からいい感じだった。2日目は自分により自信を持って走ることができた。そしてラリーをリードして、最終日まで大きなプレッシャーを感じることなく勝つことができたんだ。最終日の日曜日にちょっとしたミスもあったけど、大きなトラブルにつながることはなかった。幸運もあったね。ただ、勝った後に僕はマシンのルーフに乗って喜んだのだけど、チームからはマシンのルーフには乗らないようにって言われていたんだ(笑)」と、昨シーズンの思い出を語っている。

©WRC

◆シトロエン、クリス・ミークの解雇を発表

ラリー・イタリアは20のSS(スペシャルステージ)で戦うが、木曜日はSSS(スペシャルスーパーステージ)と呼ばれる特設ステージを走行する。まずはマシンのお披露目といったところだ。

金曜日は8つのSS、土曜日は7つのSSを走行。そして最終日は4つのSSを走行する。2009年に勝利しているトヨタのヤリ-マティ・ラトバラは、ラリー・イタリアのSSをこう解説する。

「ここラリー・イタリアのグラベル(未舗装路)は、すごくタイヤへの負担が大きいラリーです。グラベル(未舗装路)なのにグリップ力があるステージがいくつかあり、そこでは1本のSSを走行しただけでタイヤが完全に摩耗した状態となってしまいます。毎日のタイヤ選択が鍵となり、シーズンで最もタイヤへの負担が大きいと言っていいでしょう」

©TOYOTA GAZOO Racing

シーズン折返し、かつシーズンを占う意味においても重要なラリー・イタリアで勝利を競うメンバーとしては、過去にここで勝利経験を持つラトバラ(トヨタ)、オジェ(フォード)、ヌービル(ヒュンダイ)、そしてタナック(トヨタ)が筆頭に上がるだろう。さらに言えば、今シーズンSSでの速さが目立つようになったエサペッカ・ラッピ(トヨタ)の存在も侮れない。

その一方で、ここラリー・イタリアの前にひとつの残念なニュースが飛び込んできた。シトロエンが、ドライバーのクリス・ミークの解雇を発表したのだ。シトロエンのエースドライバーだったが、クラッシュの多さが目立ち、チームともギクシャクしていたのは事実。だが、シーズン途中での突然の解雇は驚きをもって世界に伝わった。ミークはグラベル(未舗装路)ラリーを得意としていただけに、シトロエンにとっても苦渋の決断だったのだろう。

木曜日のSSS1は午後6時スタート予定。日本との時差は7時間あり、金曜日午前1時スタートとなる。

果たしてトヨタは、後半戦への巻きかえしの狼煙をここで上げることができるのか。注目していきたい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>