オット・タナックが勝利!トヨタ、今季初優勝を果たす【WRC:ラリー・アルゼンチン最終結果】
現地時間の4月29日、FIA世界ラリー選手権(WRC)第5戦「ラリー・アルゼンチン」のデイ4が開催。SS 16からSS 18まで3本のSS(スペシャルステージ)で競われた。
最終結果は、1位オット・タナック(トヨタ)、2位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ/1位から37秒7遅れ)、3位ダニ・ソルド(ヒュンダイ/同1分15秒7遅れ)、4位セバスチャン・オジェ(フォード/同1分58秒6遅れ)、5位アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ/同2分2秒6遅れ)、6位エルフィン・エバンス(フォード/同3分6秒3遅れ)、7位クリス・ミーク(シトロエン/同3分25秒7遅れ)、8位エサペッカ・ラッピ(トヨタ/同4分32秒6遅れ)。
トヨタにとって今シーズン初優勝となり、オット・タナックにとってもラリー・アルゼンチン初優勝であるとともにトヨタに加入して初の勝利をチームにプレゼントすることとなった。
優勝したタナックは、以下のようにコメント。
「ここでの勝利は特別だね。本当に誰が勝つのかわからないラリーだった。
素晴らしかったのは、素早く状況に対応しどんどん調子を上げていったこと。マシンは最初から僕の好みの挙動だったし、チームスタッフが常に背後で僕を支えてくれた。チームには本当に感謝している。彼らは素晴らしい仕事をしてくれた。このように力強くプッシュできたのも、僕たちチームが求めていたことであったしね。このまま2勝目を目指すよ。
18本中10本のSSで勝利できたのは、自信を持ってマシンをドライビングできたから。マシンには本当に力強い速さがあるよ。だから、ハードにドライビングしていても、集中することは楽だった」
このように、チームのサポートとヤリスWRC(日本名:ヴィッツ)のポテンシャルの高さが勝利に大きく貢献してくれたと説明している。
◇
また、この勝利をチーム代表のトミ・マキネンも大いに喜ぶ。
「この週末は本当に強さを見せることができた。ただ、最終日は難しいこともわかっていたので、大きなリスクを取ることなく今季初勝利を獲得してくれたことは嬉しい。ここラリー・アルゼンチンは最も難しいラリーのひとつ。このマシンに厳しいコンディションで勝てたことで、マシンに十分な強さがあることを証明できたと思う」と語り、トヨタはチャンピオンシップにも挑戦できる強さがあると示した。
◆大量のリードを上手く消化し優勝
最終日は、16.43kmのSS 16、22.41kmのSS17、そして上位5台にエクストラポイントが加算されるパワーステージ、16.43kmのSS 18だった。
3日目までに46秒5のリードを築いたトヨタのタナックにとっては、油断はしないが無理に攻めてタイヤのパンクやクラッシュは避けたいところ。
デイ2とデイ3では7本あったSSでそれぞれ5本を獲得する圧倒的な速さを見せていたが、SS16ではトップを獲得したミケルセン(ヒュンダイ)から2秒1遅れの3番手、SS17ではトップのヌービル(ヒュンダイ)から8秒1遅れの4番手と、大量のリードを上手く消化してトップのまま最後のSS18を迎えた。
タナックはSS 16では、「もちろん最後までベストを尽くすけど、最後まで何があるかわからないから、多少なりとも楽な走りも必要かもね。まあ、どうだったかは最後に話せれば良いと思うよ」と語り、SS 17では「クリーンでいい走りが出来たよ。それは嬉しく思う。最後のパワーステージで5ポイントを狙うかって? どうだろう。実際に走らなければわからないけれど、ポイントを加算できたらいいね」と、最後のSS 18を前に自信に満ちた顔で答えていた。
◇
そして迎えた最後のSS 18。ここはパワーステージと呼ばれ、1位のドライバーには5ポイント、以下1ポイントずつ減算され5位の1ポイントまでドライバーズポイントが可算される。トラブルなどで本来の力を発揮できなかったドライバーには絶好の挽回チャンスだ。
もちろん、上位ドライバーにとっては更なるポイント加算のチャンスであり、誰もがポイント加算を狙う、最後まで見所たっぷりのステージとなっている。
このパワーステージを制したのは、ヒュンダイのヌービル。大きくポイントを稼いで、王者オジェを追う。2位はオジェ(フォード)、3位にはミケルセン(ヒュンダイ)、4位にタナック(トヨタ)、5位はミーク(シトロエン)が入り、この上位5台にポイントが加算された。
その結果、ドライバーズチャンピオンシップポイントは、1位オジェ(フォード/100ポイント)、2位ヌービル(ヒュンダイ/90ポイント)、3位タナック(トヨタ/72ポイント)、4位ミケルセン(ヒュンダイ/54ポイント)、5位ソルド(ヒュンダイ/45ポイント)という上位陣となった。タナックはここでの勝利で一気にチャンピオンシップ争いに名乗りをあげた。
マニュファクチュアラーズポイントは、1位ヒュンダイ/144ポイント、2位フォード/129ポイント、3位トヨタ/124ポイント、4位シトロエン/93ポイントとなっている。トヨタは2位フォードの背中を完全に捉えた。
◇
こうして、ラリー・アルゼンチンはトヨタの今季初勝利で終了した。
次のラリーは、5月17日から20日の予定で開催される「ラリー・ポルトガル」。トヨタのラッピにとっては、昨年WRCデビューを果たした記念ラリーだ。
今回マシンの速さを証明したトヨタにとっては、是非とも連続して好成績を納め、王者オジェ(フォード)や、マニュファクチュアラーズポイントで大きくリードするヒュンダイ勢との差を縮めたいところ。
今シーズン、第2戦以降不運が続くエースのヤリ‐マティ・ラトバラの復活にも期待したいところだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>