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平均年齢32.5歳、ロコ・ソラーレが直面する壁。女子カーリング戦国時代、3度目の五輪に黄信号のなか起こした“奇跡”

平均年齢32.5歳、ロコ・ソラーレが直面する壁。女子カーリング戦国時代、3度目の五輪に黄信号のなか起こした“奇跡”

2025年2月、横浜で開催されたカーリング日本選手権。

史上初の首都圏開催となった同大会は、連日チケットが完売し、のべ1万3千人が客席を埋める盛況ぶり。

北海道や長野の定員200名程度の会場で行われ、観客のほとんどは関係者だった時代から考えると、カーリングの認知度向上と進化を大いに実感させる大会となった。

そのなかでも注目を集めたのは、五輪2大会連続メダルのロコ・ソラーレ。会場・横浜BUNTAIには、彼女たちを見ようと早朝から長蛇の列ができた。

しかしフタを開けてみると、初戦で若手チームに敗退し、その後もなんとか勝利する展開が続く。

五輪での活躍で鮮烈な印象を残し、日本におけるカーリングの代名詞となったロコ・ソラーレ。彼女たちによってけん引された女子カーリングは、もはや「一強」ではなく、群雄割拠の戦国時代へと突入していた。

3度目の五輪で金メダルはおろか、その出場すら危うい。

そこで今季、テレビ朝日ではロコ・ソラーレを徹底取材。カーリング取材歴18年、累計1500近い試合を見続けてきた専任ディレクターが密着した。

すると、彼女たちの明るい笑顔の裏にある、必死の“もがき”が見えてきた。平均年齢32.5歳のベテランチームは、「このままでは勝てない」と苦しみながら、歯を食いしばっていた。

そして、台頭してきた新世代や、どん底から這い上がった“宿命のライバル”の存在も。

1年後のミラノ・コルティナ五輪に向けて、今あえて問う。ロコ・ソラーレは限界なのか?

スポーツ番組『GET SPORTS』では、彼女たちの「限界」と「可能性」に迫った。放送権の関係や映像で伝えきれなかった部分も含め、本記事でその内容を紹介する。

◆強さの秘密はコミュニケーション

ロコ・ソラーレは2010年、当時チーム青森でオリンピック2大会に出場した本橋麻里が、北海道北見市常呂町に戻り、地元の若手とともに結成したクラブチーム。

常呂町は人口3000人ほどながら、1980年代初頭にカーリングが持ち込まれ、やがて国内初の専用リンクが作られるなど、多くの五輪選手を輩出した“カーリングの聖地”だ。

結成メンバーの吉田夕梨花、鈴木夕湖、途中加入の吉田知那美は常呂中出身。中学は違うが、同じ北見市出身の藤澤五月が最後に合流した。

子どもの頃から互いを知る同郷の4人。彼女たちの強さの秘密はコミュニケーションにある。

試合中のやりとりを聞いてみると…。

鈴木:「ちょっと(氷)重いかな」
藤澤:「センター曲がるね」
吉田(知):「ここね。11とかだとけっこう曲がっちゃいそう」
藤澤:「ちょっと今、ラインに寄ってたかな」
吉田(知):「あ、OK。重さもちょっとあったかな」
鈴木:「ちょっと(氷)重くなりそうだね」
吉田(知):「そだねー」

このような会話を4人が止めどなく続けている。その内容は、氷にまつわるリアルタイムの情報だ。

カーリングのリンクの表面には、「ペブル」と呼ばれる無数の水滴が撒かれており、温度や湿度などの諸条件で変化し続ける。そのコンディションは会場ごと、日ごと、時間ごと、ひいては観客やマスコミの数によって微妙に変化をとげていく。

たとえば、正確に同じ力で投げても、氷の状態が違えばストーンが数センチ伸びることもあるという。

この氷の変化やクセを精緻に把握すれば、正確無比なショットに繋がる。そして有利な位置にストーンを置くことができ、優勢な展開に繋げられるのだ。

平均身長152センチ。体格では海外勢に劣り、力勝負では勝ち目がない。ならばと見出した活路が、情報伝達と意思疎通の徹底だった。

ちなみにロコ・ソラーレは、テクニックもすごい。ストーンから手が離れる直前に回転を強くかけたり、ミスの許容範囲を決めたり…テクニカルのチェック項目も数多く存在する。その項目は超極秘事項、門外不出の職人技だ。

銀メダル獲得後もグランドスラムを主戦場に結果を出し続けた。2023年1月にはアジア勢として初の優勝。世界ランクも最高3位にまでアップさせた。

◆「やっぱりロコ・ソラーレはすごい!!」

2024年10月、グランドスラム初戦・ツアーチャレンジ。

番組で取り上げたのは、北京五輪アメリカ代表・チームピーターソンとの一戦。

ロコ・ソラーレは公式練習で氷の状態を確認し、全員が同じ情報を共有。試合では話し合いを重ね、相手が弾きづらい場所にストーンを並べるなどミスを誘う戦術を実行し、勝利を手繰り寄せた。

リードの吉田夕梨花はこう語る。

「自分たちが勝っている試合は、しっかりコミュニケーションが取れているとき。どんどんコミュニケーションをしていこうという積み重ねで今の形になっているのかなと思います」

長年指導にあたってきたJ.D.リンドコーチも、ロコの強みを次のように分析する。

「彼女たちは才能にあふれ、世界トップクラスの選手と言えます。最大の強みのひとつは、長い間一緒にプレーしていること。これだけ長く一緒にいると、お互いをよく理解し合えます。カーリングはすべてのショットをみんなで協力して作り上げるから、コミュニケーションが大事なんです。始めたときからたゆまず磨き続け、大変大きな強みになったと思います」

その後、ロコ・ソラーレはグランドスラム初戦で決勝トーナメントに進出。準々決勝では当時世界ランク3位の韓国チーム相手にも理想の形を作ってミスを誘い、準決勝進出。優勝した大会以来、2年ぶりのベスト4以上の成績を収めた。

表題では「限界」を引き合いに出したが、そんな限界など感じられない。取材したディレクターから見た印象は、「やっぱりロコ・ソラーレはすごい!!」。それに尽きた。

◆ぶち当たった壁。台頭する新世代

しかし、代表選考レースが始まった2024年の日本選手権で、優勝候補ロコ・ソラーレはまさかの予選敗退に終わった。現メンバーでの予選敗退は、五輪出場で不参加だった2018年を除いて初めてのことだった。

藤澤は予選敗退後、こう振り返った。

「多くのチームが日本の中で切磋琢磨し合って、日本全体のレベルがすごく高くなっていると感じた大会だったので、私たちもまだまだ頑張らなきゃいけないなと思いました」

ロコ・ソラーレに続く勢力が急速に力を伸ばしてきていた。

2025年1月のチーム別・世界ランキングを見てみると、トップ15までに日本のチームが4つもランクインしている。ロコ・ソラーレを追いかけ、ほかのチームも急成長を続けているのだ。

すぐ後ろにつけているのは、札幌に拠点を置く平均年齢22歳の北海道銀行リラーズ。

2021年12月に企業チームとしてスタートした同チームは、北海道が行うアスリート発掘育成事業出身の選手が軸となってチームを編成。発足直後から優勝戦線に絡み続けている。

番組では、結成初年度のトレーニング風景を取材していた。取材者目線で言えば、女子カーリングの世界でこれほど激しい筋トレは見たことがない。

ストーンを弾く破壊力も軌道を伸ばすスイープの効果も、筋力があれば増大する。だからこその筋トレ。当時から男子さながらのパワーカーリングを目指していた。

結成から3年が経ち、その力はもはや疑いようがない。今季ツアーで5勝を挙げ、世界ランクは過去1年間で30近くもアップさせた。

そして実は、1月のグランドスラム前までロコ・ソラーレに5戦3勝と勝ち越していた。いわば“ロコ・ソラーレ キラー”だ。

リーダーの田畑百菜はこう話す。

「チームがだんだん世界でも勝てるようになってきて、ランキングも上がってきているという状況に、正直私たちも驚いている部分もある。今そういう状況に自分たちがいるので、チャンスをつかめる位置にいると思う。チャンスがあるのであれば、そこに向かって全力で目指していきたい」

◆平均年齢32.5歳の伸びしろ

混沌とした勢力争いのなか、ロコ・ソラーレはどんな策に出たのか?

柱となる情報戦略は変えずに、そこまでの積み上げはイチから見直した。普段の練習はもとより、個々のトレーニングに至るまで。

そんななか、不思議な光景を目にした。

吉田(知):「夕湖ちゃんは“人間ばん馬”という置戸町で開かれている毎年大人気のイベント(に出て)、私たちも戦ってる勇姿を見届けました」

2024年6月末、北海道置戸町で行われた「人間ばん馬」。500キロの丸太を運び着順を競うレースに、男性に混じって鈴木夕湖が参戦していた。そして観客席にはロコのメンバーたち。

参加の意味を質問すると、当の鈴木からこんな答えが返ってきた。

鈴木:「来年まったく同じチームで10シーズン目を迎えます。普通に仲は良いんですけど、やっぱり10年も一緒にいると、わざわざどこかに行こうかみたいなこともなくなってきて…。

どこかにご飯を一緒に食べに行くだけでも、チームビルディングに繋がっていくという話を、昨シーズンにミーティングでしていました。自分たちで面白いことをどんどん作って、自分たちで自分たちをワクワクさせていこうという話をしました」

※写真提供:置戸町/ロコ ソラーレ

些細なことでも強化の手がかりとしたい。人間ばん馬も「何か新しいことを」という危機感の表れだった。

現体制となって10年近くたち、チームは伸びしろを探したが、練習方法も体作りもメンタルコントロールも、さまざまにやり尽くしてきた。

だからこそ一番身近である「仲間との距離感」も再構築しようと考えた。

今のロコ・ソラーレは、仲は良いが馴れ合いの熟年夫婦のようなもの。ときめきという勢いは、自ら努力しなければ生まれない。

そういえば、昨シーズンまでロコ・ソラーレのメンバーだった石崎琴美さんに、10年一緒の体制でやってきた大変さを聞いたことがある。

石崎:「勝手なイメージですけど、刺激的なものを作り出すのは難しいのかなと思います。例えば新しい人が入ってきたら、やることすべてが新しくなるじゃないですか。その人との関係性も築いていかなきゃいけないし、作戦やショットの選択も変わってきたり。

でもずっと同じメンバーだったら、誰かからもらう刺激はなく、自分たちで刺激を作り出さなきゃいけない。そういう点で難しいところもあるのかなと思います」

「刺激」というキーワードは、まさに今ロコ・ソラーレに当てはまっていると感じた。

10年走り続け、気が付けば三十路のロコ・ソラーレ。平均年齢32.5歳で伸びしろを探すのは容易なことではない。

しかし、難しいお題に真っ向から立ち向かうのもロコ・ソラーレだ。

お互いを再確認しながら、グランドスラムに限らず今季多くのツアーに出場。負けに負けて予選敗退となったこともあったが、その負けも糧にしようとした。

◆“ロコ・ソラーレらしさ”――あくなきチャレンジ精神

2025年1月。カナダ・グランドスラム第4戦「マスターズ」。再起を期すロコ・ソラーレに、現状を確かめる絶好の機会が来た。ロコキラー・北海道銀行との対戦だ。

しかし、試合がはじまると、北海道銀行はロコのストーンを豪快に弾き、主導権を握る。

逆にロコ・ソラーレは、藤澤がフィニッシュでミスショット。パワーカーリングにまたも競り負け、今季通算6戦4敗となった。

藤澤:「私のところでしっかり決めきれなかったのが、敗因かなと思います。特に今シーズン、(北海道銀行は)日本のチームの中でも一番試合をしているチーム。なかなか勝てていないんですけど、たくさんやってるぶん、チームの戦い方やどういうチームかはだいぶわかってきたので、あとは私が最後決めるだけという感じまできてるのかなとは思います」

苦境にもがくなか、チームでは今季、たびたび使われる言葉がある。

「ロコ・ソラーレらしい戦い」
「ロコ・ソラーレらしい戦いぶりを見せられるように」
「ロコ・ソラーレらしさとして、氷の上でパフォーマンスができるか」

“ロコ・ソラーレらしさ”。これまでロコ・ソラーレは、平昌五輪で逆転での銅メダル。北京五輪代表決定戦は、2連敗してからの大逆転。北京本番では予選敗退の危機を乗り越え、メダルへと繋げた。

逆転、逆転、また逆転。土壇場での強さの理由も、またコミュニケーション力。どんなに劣勢であってもあきらめず、最後まで話し合い、道を探し続ける。

1月のこの大会も、強豪相手に2敗となり予選敗退ギリギリだったが、背水の陣でこんな行動を起こした。

吉田知那美がハイタッチを促すと、全員が高いポジションでハイタッチ。

吉田(知):「ハイタッチをハイタッチにしました。ミドルタッチみたいになっていたんですけど、せっかくやるんだったらちゃんとハイタッチしようって。本当に小さなことも全部私たちの完璧を求めて、もう1試合も1投も出し惜しまない、全部完璧を目指して頑張っています」

同じ気持ちの強さで同じ可能性を信じ、ときには運をも味方につける。そんなロコ・ソラーレらしさが奇跡を呼び込み、2試合連続、延長戦での逆転勝利をはたした。

吉田(知):「かっこ悪く、泥臭くやるのが私たちのカーリング。私たちらしさを捨てないで、全試合出し切ります」

ちなみに、死にかけたところから這い上がる逆転型スタイルを、彼女たちは「ゾンビゲーム」と呼んでいる。

オリンピック2回連続メダル。「誰よりも強い」と思っている人は多いかも知れない。しかし、一番そう思っていないのは、当の本人たちだ。

今年の日本選手権のインタビューで、藤澤にロコ・ソラーレの実力について聞いたことがある。

藤澤:「言っても私たち、日本選手権、何回優勝してます? 連覇は一昨年の1回だけ。日本選手権に勝つのは本当に難しいって年々感じています。それこそ今、世界のトップランキングにもグランドスラムにも、日本のチームが3チームも4チームも出るぐらい日本のレベルは確実に上がっているので、私たちは常にチャレンジャーだと思っています」

もっとうまくなりたい。もっといいカーリングがしたい。勝利はその内容の先にある。そうしたあくなきチャレンジ精神で走り続け、今もなおもがき続けている。

◆向日葵と月見草――宿命のライバル

2025年2月、横浜。オリンピック予選も兼ねた日本選手権は、連日1000~2000の観客が見守るなか、白熱した戦いが繰り広げられた。

昨年の優勝チーム・SC軽井沢クラブと3位だった中部電力が一次予選敗退。

男子に目を向けると、決勝戦のラストロックは目視でわからず、ミリレベルの計測に。SC軽井沢クラブ・山口剛史はうなり、男子ロコ・ソラーレの前田拓海は涙した。

五輪の夢をかけ、磨き上げてきた気持ちの大きさに、観客は万感の拍手を送る。この国のカーリングは大きな飛躍を遂げ、その転換に横浜開催があったと幾度も感じた。

注目のロコ・ソラーレは、初戦でロコキラー北海道銀行にまたも敗退。しかしその後は勝ち続け、二次予選進出を果たす。

迎えた相手は、札幌拠点のフォルティウス。

チームの中心であるスキップの吉村紗也香は、ロコ・ソラーレの藤澤や鈴木、吉田知那美の同級生で、ジュニア時代から世界で活躍。ロコの壁に阻まれ、五輪選考会を4度敗退していた。

前回、北京五輪代表決定戦では、2連勝で王手をかけながら、ロコの粘りの前によもやの3連敗。あと一歩で夢を逃した。

その後、メインスポンサーが撤退。活動資金がなくなり、貯金を切り崩す日々に。海外遠征の費用を作るためクラウドファンディングまで利用し、活動を続けた。

向日葵と月見草――。かつてプロ野球界で使われた言葉だが、この2チームはそんな光と影を感じさせるところがある。

吉村:「ロコ・ソラーレっていうライバルがなければ、自分たちもここまで強くなれなかったし、ここまで変わることもできなかったと思います。お互いライバル意識はあると思うので、日本一に立ちたいという思いがお互い強かったと思いますし、そういった相手がいなかったら今の自分はなかったと思います」

フォルティウスはその後、選手たちの雇用を確保し、北京五輪金メダル選手をチームコーチに招聘。メンタルコーチとして元侍ジャパンヘッドコーチの白井一幸氏も入閣させた。自らの弱みにも目をそらさず立ち向かい、やれることはすべてやったという。

◆実現したライバル対決は名勝負に

そんな吉村が率いるフォルティウスとロコ・ソラーレのライバル対決は、序盤からフォルティウスがゲームをコントロールする形となった。

ロコ・ソラーレ後攻で迎えた第3エンド。ここまでも決定力で上回るフォルティウスが、がっちりとハウスを固めていく。

そのラストショットは、自らの赤のナンバー1をがっちり隠した。

ロコ・ソラーレとしては、左側は進路が狭く、自らの黄色が連なっているため間接的に飛ばすのも難しい。図に比べて通すルートは比較的あるが、ウエイトと曲がり幅の関係からドローで中心のナンバー1を狙うのは至難に見えた。

そんななか、藤澤が放ったショットは、なんと手前のガードストーンにかすらせ、進路をほんの少しだけ変えた。結果そのストーンは中心に向かい、ナンバー1に。

これまで見たことのない、奇跡のスーパーショットだ。

その後もフォルティウスは攻撃の手を緩めず、いい形を作る。それをロコは何とかしのぐ。まさに泥臭く、カッコ悪く、粘り強さを前面に打ち出し、食い下がった。

2点ビハインドで迎えた最終第10エンドでも、後攻ロコは粘りに粘り、相手が打ちにくい形を狙う。その結果、全員が思惑通りに進め、スキップ藤澤の第1投を終えた時点で最大3得点のチャンスを残した。

先攻フォルティウス、スキップ吉村のラストショット。ロコ・ソラーレの黄色よりも内側、中心近くに入れて逃げ切りたい。

しかし…放ったストーンはハウスに届かなかった。ロコ・ソラーレ3点獲得。7対6の大逆転勝利となった。まさに「ゾンビゲーム」だった。

こうして規定により、9月のオリンピック代表決定戦へ進むことが決まったロコ・ソラーレ。

藤澤は「ゾンビのように粘り強く、這い上がってくるような気持ちで終始戦えたので、それがすごく良かった」と手ごたえを口にした。

◆ロコ・ソラーレ限界論の結論

ゾンビというと、もう1試合印象に残った試合があった。

準決勝のロコ・ソラーレと北海道銀行の対戦だ。結果的にまたも北海道銀行が勝利するのだが、印象的だったのは試合終了直後に北海道銀行スキップ・仁平美来が涙を見せたこと。

うれし涙の雰囲気ではなく、その理由は試合後に語られた。

仁平:「ロコ・ソラーレの精度が高くて、すごく食らいついてくる感じもあって、どんどん気持ち的に追い詰められてる感じが、私に1人だけあって、本当につらくて、作戦もこれでいいのかとか考える場面も多くて不安でした」

北海道銀行は第3エンドで4点をとったが、その直後からロコにじりじりと差を詰められた。終盤には連続スチールで突き放したが、そんななかでもロコはあきらめず、あの手この手で食い下がってきた。その不屈の闘志と迫力に、仁平は人知れず怯えていた。だからこそコンシードの瞬間、解放感から涙を流したという。

その後の決勝では、唯一ロコ・ソラーレに敗れたフォルティウスが優勝し、9月の代表決定戦の出場権を獲得。ロコキラーながら、その迫力に怯えた北海道銀行は紙一重の差で準優勝。ミラノ・コルティナ五輪の夢は絶たれた。

代表決定戦は9月11日より北海道・稚内の専用リンクで開催される。昨年度優勝のSC軽井沢クラブ、本年度優勝のフォルティウス、そして世界ランク最上位で3位の結果を残したロコ・ソラーレの3つ巴で争われる。

今回、あえて「限界論」というキーワードでロコ・ソラーレを見てきた。記者の結論としては、まったくもって道半ばであり、限界は微塵も感じなかった。

そう思えるのは、チームが大切にしている「ロコらしさ」にあるからだと思う。最後の最後まで糸口を探す。これまで生み出されたいくつもの奇跡は、すべてロコらしさによって生まれてきた。

仮に限界があるとしたら、それはメンバーそれぞれの中に感じていると思うが、全身全霊をかけてそれを突破していくのだろう。

1月のグランドスラムで、藤澤はこう語っていた。

「まだまだ私たちには伸びしろがあるし、もっともっと強くなれると思っているので、それを信じてやっています。自分たちが満足できる試合を全員がしっかりできたらきっと世界一になれますし、もう限界だなって思ったときが辞め時になると思うけど、私たちはまだまだできると思っているので」

およそ半年後、新たに脱皮したロコ・ソラーレはどんな戦いを見せてくれるか。引き続き注目していきたい。

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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