「圧倒的なオーラ」テレビ朝日・清水俊輔アナ、実況席から見た星野仙一さんの胴上げ
プロ野球のペナントレースから、日本シリーズ、そしてWBCまで…。これまで多くの野球の試合で実況を担当してきたテレビ朝日の清水俊輔アナウンサー。
清水アナが約3時間の野球実況の際に放送席に持ち込む自作の資料は、A4サイズの2枚の紙を繋げたA3の“ペライチ”だけです。
「最新の情報や覚えきれない可能性がある数字データを中心に記載する」、「書かなくても分かっていることは書かない」、「試合中はめくれないから何がなんでも1枚におさめる」、そして、「すべてが大事な情報だから太字や色付きの箇所はつくらない」など、長年の経験によってどんどん洗練され削ぎ落とされていった清水アナの資料。
この“ペライチ”をもとに、これまで数々の名場面が日本中に実況されてきました。
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圧倒的にボールや試合が動いていない時間のほうが長く、そのなかで約3時間話し続けなければならない野球実況。
その性質をもって、清水アナは「野球実況はアナウンサーの仕事のなかでも最も難しい仕事のひとつです」と話しますが、これまでの実況の中で自らが最も印象に残っている場面を聞くと、“話し続ける”ということをやめた場面を挙げてくれました。
その場面が訪れたのは、野球ファンなら説明不要な伝説の試合、2013年の日本シリーズ第7戦です。星野仙一監督(当時)率いる東北楽天ゴールデンイーグルスが初の日本一を達成し、同時に星野監督が自身初の日本一を果たすこととなったこの一戦。
清水アナは、次のように振り返ります。
「この日本シリーズで僕は7試合中3試合で実況させてもらったのですが、最後の第7戦は特に忘れられません。
この年は田中将大投手がペナントレースで24勝0敗を成し遂げた年で、まさに“田中投手の年”でした。そして、楽天にとって初の日本一がかかった最後の試合の9回、前日の第6戦で160球投げた田中投手が、抑えで出てきたんです。
田中投手がマウンドに向かうとき、球場には田中投手のテーマソングであるファンキーモンキーベイビーズの『あとひとつ』が流れていて、仙台のファンはみなさんそれを歌っている。
それで僕は、“あぁ、大合唱しているなぁ”と思いながら言葉少なにポツポツと実況していたのですが、ついに曲のサビがくるとき、『サビがくる、ここは喋っちゃダメだ、黙らなきゃ』と思って、球場の異様な雰囲気を伝えるためにサビが始まる瞬間から30秒くらい完全に黙りました。
あの球史に残る一瞬に実況として立ち会えたことは、忘れられないですね」
◆放送席から見た星野仙一さんの胴上げ
そして、このプロ野球史に残る場面の後に訪れた、星野監督の胴上げ。
今年1月に急逝した星野仙一さん。星野さんの初めての“日本一の胴上げ”は、放送席の清水アナからどのように見えたのでしょうか。
「星野さんとは、楽天の監督に就任される以前、何度も放送席でご一緒させていただきました。私にもいつも穏やかな笑顔で話しかけてくださり、お会いするたびに“男”としての懐の深さを感じていました。
それまで届かなかった日本一という夢が、仙台の地でついに叶ったあの瞬間。人の心を鷲掴みにし、生きるその土地さえも巻き込んでしまう星野さんの圧倒的なオーラが、震災から立ち上がろうという強い意志に包まれた東北の空気と融合し、背番号77の体はより一層輝いて見えました」
清水アナがこう話すように、“生きるその土地さえも巻き込んでしまう圧倒的なオーラ”で各地の地元野球ファンを魅了してきた星野さん。
次に清水アナが実況を担当する3月3日(土)の「侍ジャパンシリーズ2018・日本×オーストラリア」は、そんな星野さんが現役時代を過ごし、監督としても最も長く身を置いた名古屋(ナゴヤドーム)で行われます。
侍ジャパンを率いるのは、稲葉篤紀監督。稲葉監督は、星野さんが日本代表監督を務めた北京五輪に選手として出場していました。
このとき、メダルを逃がし4位に終わった悔しさを星野監督と共に味わった稲葉監督は、「オリンピックの借りはオリンピックでしか返せない。東京オリンピックで金メダルをとって、星野監督にやりましたという報告がしたい」と熱い気持ちをコメントしています。
稲葉ジャパンに初めて年齢制限のないフル代表が集う今回の一戦。名古屋からスタートする東京オリンピックへの第一歩に注目です。
●試合情報:「野球・侍ジャパンシリーズ2018」日本×オーストラリア
3月3日(土)よる6時56分~ テレビ朝日系列地上波にて生中継(9時54分以降、試合が続いている場合は、引き続きBS朝日で試合終了まで放送)
※当日は、星野仙一さんの追悼セレモニーも行われます。
※放送では、テレビ朝日の野球中継で初めてとなるTwitter連動が実施されます。(※参加方法は、「#侍野球」のハッシュタグでTwitterにつぶやくだけ!)