【WRC】トヨタ昨年優勝のラリー・スウェーデンが開催!今年も『君が代』が響くか
WRC(世界ラリー選手権)の2018年シーズン第2戦「ラリー・スウェーデン」が、2月15日からスタートする(2月15日~18日)。
全13戦あるWRCで、全ステージが雪道となる“スノーラリー”はこのラリー・スウェーデンだけ。4日間で予定されている全SS(スペシャルステージ)は19箇所だ。
ラリー・スウェーデンは、開幕戦のラリー・モンテカルロに続くウインターラリーとしてWRCイベントの中でも人気が高い。
というのも、ウインターラリーと言われるにふさわしく、開催地北欧のイメージそのまま真っ白な雪景色のなかで争われるからだ。しかも、一般的に雪道と聞くと、スピードが出せずゆっくりと走っているイメージだが、ここラリー・スウェーデンは直線のトップスピードが時速160キロから170キロも出るWRCを代表する高速コース。
さらにラリーの名物であるジャンプには「コリンズ・クレスト」と呼ばれる名所があり、ここでは飛距離にして50m以上の大ジャンプを観ることができる。こうしたラリー・スウェーデンならではの個性もあって、寒いウインターラリーにも関わらず世界中から多くのファンが集まる人気を誇っているのだ。
そんな「ラリー・スウェーデン」において、マシンが自在にコーナーを攻められ、また滑りやすいはずの雪道で時速160キロから170キロも出せるのには秘密がある。それが、スノーラリーだけで見ることができる、スタッドと呼ばれる金属ピンが埋め込まれた特別なタイヤ「スパイクタイヤ」だ。
ちなみに、昔は日本も含め世界中の雪道で一般のクルマもスパイクタイヤを使用していたが、アスファルトを削りダメージを与えること、そしてその削られた粉が人体に影響を与える粉塵問題などから1980~90年代に世界中で使用が禁止されていった。現在、一般的なクルマが冬用タイヤとして使用している“スタッドレスタイヤ”は、その名の通りスタッド(金属ピン)がレス(使わない)となったタイヤなのである。
◆トヨタのラトバラ、ラリー・スウェーデン5勝目を狙う
ラリー・スウェーデンは、北欧ドライバーが圧倒的に強いことでも知られている。
1973年のWRC初開催時から昨年までのラリー・スウェーデンにおいて、北欧ドライバー以外で優勝したことがあるのは2004年に勝利したセバスチャン・ローブ(フランス人)と、2013年・2015年・2016年に勝利したセバスチャン・オジェ(フランス人)だけ。
この2人のフランス人以外は、すべてスウェーデン、フィンランド、ノルウェー出身ドライバーが優勝している。まさに、北欧ドライバーにとって地の利があるラリー・イベントだ。
そんな北欧ドライバーのなかでも通算4勝しているのが、トヨタのエース、ヤリ‐マティ・ラトバラ(2008年・2012年・2014年・2017年)だ。
昨シーズンは、18年振りにWRC復帰を果たしたトヨタに、2戦目にしていきなり優勝をもたらした。2017年シーズン、チームの誰もが予想以上の結果を残したと感じたトヨタのWRC挑戦。それを勢いづけたのが、ラリー・スウェーデンにおけるラトバラの勝利だったと言っても過言ではないだろう。
◆各チームとも強力な体制
北欧ドライバーが有利と言われるラリー・スウェーデンだが、今年4つの自動車メーカーが争うWRCにおいては、それぞれのチームがここを得意といえそうなドライバーを起用している。
まず、昨シーズン優勝したトヨタは、エースのラトバラ、そしてエストニア出身のオット・タナック、フィンランド出身のエサペッカ・ラッピと、全員が北欧ドライバーだ。因みにコ・ドライバーも全員北欧出身である。ラリー・スウェーデンは必勝体制で挑むことになるだろう。
次に、王者セバスチャン・オジェがいるフォードは、北欧出身ではないが3度優勝しているオジェ、フィンランド出身のティーム・スンニネンが有力だ。
マシンの速さは今季も頭ひとつ抜けそうなヒュンダイは、ノルウェー出身のアンドレアス・ミケルセン、ここにヒュンダイのエースであるティエリー・ヌービル(ベルギー人)がどこまで迫れるか。
そして、開幕戦の最終パワーステージで速さをみせたシトロエンは、ノルウェー出身でジャンプを得意とするマッズ・オストベルグに加えて、エースのクリス・ミーク(イギリス人)が続きそうだ。
WRC公式テレビのインタビューを受けた昨年の優勝者ラトバラは、ラリー・スウェーデンについてこう語っている。
「正直、昨年の優勝は想像もしていませんでした。私も嬉しかったのですが、それ以上にチーム代表のトミ・マキネンの喜んでいた姿が印象に残っています。彼は優勝が決まった瞬間にジャンプして、手を叩いて、大声を出して喜んでいました。
(ここで過去4度優勝していますが)私にとっては、毎年が学びの年です。経験は買えませんからね。目標はここも表彰台を獲得することです。今シーズンはすべてのラリーで表彰台が目標です。継続して好成績を残すことでワールドチャンピオンも見えてきます。
僕たちのヤリスWRCは雪道で良いパフォーマンスを発揮してくれると思います。フィンランドで行ったテストも良い感触でした。間違いなくラリー・スウェーデンでは高い競争力があると思います」(ラトバラ)
ラリー・スウェーデン開催地と日本の時差は8時間。SS1のスタート時間は現地時間15日の午後8時8分を予定しており、日本時間では16日金曜日午前4時8分に最初のマシンがタイムアタックスタートとなる。
果たして、ラトバラが通算5勝目となるラリー・スウェーデン勝利を果たすことができるのか。そして、全ドライバーとコ・ドライバーが北欧出身のトヨタは、昨シーズンに続いてここラリー・スウェーデンで『君が代』を聞かせることができるのか。注目したい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>