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日本一で屈辱の2017年。巨人・菅野智之、後輩5人との海外自主トレで見せたリーダーの姿

1月29日(日)に放送されたテレビ朝日のスポーツ情報番組『Get Sports』では、読売ジャイアンツ・菅野智之投手を特集した。

原辰徳前巨人監督の甥にして、東海大学時代はリーグ通算37勝を誇った菅野智之。2012年には“浪人生活”を送るなどプロ入り前から大きな注目を集めた彼は、巨人入団を前にして富士登山を敢行していた。

そのとき、日本一高い場所で男の口から出た言葉は……「日本一の投手になる!」。この宣言通り、菅野は昨2017年シーズン、「日本一」の成績で終えてみせた

©Get Sports

しかしその一方で、歴史的屈辱を味わった1年でもある。そんな菅野の2018年シーズンに臨む「決意」に迫った。

 

◆菅野智之の2017年シーズン

菅野智之は、2017年12月中旬から年を跨いだ2018年1月下旬まで、およそ40日間にわたるハワイでの自主トレを行っていた。

厳しいメニューを課し、徹底的に己を追い込む日々。その合間には自らの昨シーズンの活躍ぶりを報じた日本のスポーツ新聞に目を通し、「365日で41回も一面の記事になるなんて、単純に9日間に1回でしょ?ヤバイね」と、まるで他人の活躍に対してのような感想がこぼれる。そう、昨シーズンの菅野は、正に八面六臂の活躍を見せた1年だった。

3月には、第4回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に日本代表のエースとして出場。ロサンゼルスのドジャー・スタジアムで開催された準決勝アメリカ戦では、名だたる現役メジャーリーガーたちを相手に6回3安打1失点の好投を見せ、その名を世界へととどろかせる。

シーズンに入っても、5月にはセ・リーグでは8年ぶりとなる3試合連続完封勝利という偉業を達成。結果、最多勝(17勝)、最優秀防御率(1.59)という2つのタイトルを獲得し、シーズン最高の投手に贈られる沢村賞も初めて受賞。名実ともに「日本一の投手」へと飛躍を遂げた。

こうした飛躍を遂げるキッカケになった試合があったと、菅野は語る。それは、4月11日の広島戦。

シーズン2度目の登板となったこの試合、5回まで無失点を続けていた菅野だが、6回に突如崩れ5失点を喫しノックアウト。初回から100%の力で飛ばしていたため、苦しくなる中盤に大量失点してしまったことで心が折れてしまったのだという。

そんな己の姿に危機感を覚えた彼の中に、ある意識の変化が芽生えた。「良い意味で手を抜くこと、ここぞという場面でギアを上げることの大切さを思い知った」―こうして、“ギアチェンジ”を心掛けるようになった菅野。

それが顕著に表われていたのが、得点圏にランナーを背負った場面。昨シーズン、得点圏にランナーでいる中で打たれたホームランは、なんとゼロ。これは去年に限れば、12球団で彼ただひとりの記録である。

また得点圏被打率も、12球団トップの数字。2016年と比較しても格段の向上である。“ギアチェンジ”を心掛けたことで勝負どころでの安定感が増し、沢村賞をはじめとする幾つものタイトルを獲得するまでに至ったのだ。

 

◆2018年シーズンに向けた新たな取り組み

こうした圧倒的な数字を残す一方で、満足していない数字もあると語る菅野。それは、昨シーズン達成できなかった2つの数字、「10完投」・「200イニング登板」。

実は、沢村賞の選考基準には、7つの項目がある。(1)15勝以上、(2)勝率6割以上、(3)防御率2.50以下、(4)奪三振150以上、(5)登板25試合以上、(6)10完投以上、(7)登板200イニング以上。菅野はこのうち、6・7の2つの項目のみクリアできなかったのだ(6完投・187回1/3)。

また、なんとWBC期間中から肘に傷みがあったことを初めて告白した菅野。そのため、予定されていた開幕戦登板を急遽回避したことも悔やむ。そこで、2018年シーズンの最重要課題を「1年間フル稼働できるだけのコンディション管理」と位置づけた。“心・技・体”という順番ではなく、“体・心・技”

この年末年始に敢行したハワイでの自主トレでは、1年間投げ抜くことが出来る「体」の強化へと徹底的に取り組んでいた。体幹を鍛え上げ、厳しいランニングメニューで己をいためつけ、ウエイトトレーニングをほぼ毎日行う。

©Get Sports

さらに、このオフに重点的に取り組んでいるのは、下半身の柔軟性の向上。

毎年夏場になると、下半身に生じる張りや痛みに悩まされてきたという菅野。その要因は自らの下半身の硬さが関係していると分析し、ケガのリスクを減らすトレーニングを加える。足首・腰・股関節などに刺激を与える4種類・約30分のトレーニングを日課とした。

さらなる進化へ、貪欲に取り組みを続ける。

 

◆2017年の屈辱と、チームリーダーとしての責任感

これまでもエースとして大きな責任を担ってきた菅野は、今シーズンから巨人の選手会長に就任。名実ともにチームリーダーとしての自覚を促されることとなった。

昨シーズン、巨人は5月25日から6月8日にかけて、球団ワースト記録となる13連敗という不名誉な数字を残している。その間、菅野も2度先発として登板し、いずれも敗戦。チームの連敗を止めることが出来なかった。さらに、チームは11年ぶりにBクラスに転落し、球団史上初めてクライマックスシリーズ進出を逃している。

©Get Sports

個人としては最高の成績を収める一方、チームの一員としては歴史的な屈辱を味わった1年。そこで菅野は、ある決意も胸に秘めて今回のハワイ自主トレに臨んでいた。若手の底上げを図るため、後輩投手5人を同行。去年の1人から、一気に5倍増である。

メンバーは、2013年の開幕投手・宮國椋丞(みやぐに・りょうすけ)、3年前のドラフト1位・桜井俊貴(さくらい・としき)、去年プロ1年目で6勝を挙げた畠世周(はたけ・せいしゅう)ら。サポートするスタッフは1人もなく、菅野が全てを取り仕切る。

「日本一の投手」の練習に、後輩たち全員の視線は釘づけ。キャッチボールひとつにしても、そのキレイなフォームに感嘆の声が漏れる。

©Get Sports

この自主トレで菅野は、事前に後輩ひとりひとりと明確な目標を話し合い、それぞれに適したメニューを提案、具体的なアドバイスも行った

例えば、今シーズンの活躍が期待される3年目の左腕・中川皓太(なかがわ・こうた)の課題が“スライダー”と聞き、その曲がり具合をチェック。曲がる幅は良いが、曲がり始めが早いため好打者を打ち取るのは難しいと指摘し、その場で自らのスライダーの握り方・投げ方を伝授する。

中川の欠点を瞬時に見抜き、的確なアドバイスを送る姿には、「日本一の投手」ならではの才気と「チームリーダー」としての自覚が垣間見えた。

©Get Sports

一方で、後輩たちに社会人としての教育指導も怠らない。普段の生活のなかで相応しくない振る舞いがあれば、厳しい言葉も飛ぶ。

「仲良しこよしでやっている限り巨人は強くならないし、一社会人として、時には言いたくないことも言わなきゃいけない場面も絶対ある」

野球人である前に、一社会人。菅野には強い信念がある。こうして“兄貴分”として若手を指導しながら自らも厳しく追い込むハワイでの40日間を送っていた。

「教えることによって自分が何かに気づかされることもあるし、自分を戒めることにも繋がる。若手には、自分を脅かすような存在に成長してほしい。そうなれば、自分ももっと頑張れるし、それがチームの底上げになると信じている」

 

◆巨人復活への決意と、メジャーへの想い

©Get Sports

チーム4年ぶりの優勝へ、今年菅野が掲げたテーマは…「決意」。

「2018年は、自分にとってもチームにとっても真価が問われる1年。その先頭に立つ身として決意を持って臨みたい。自分が未だ経験していないチームの日本一を達成して、自らも最高の成績を残すことが出来れば、また違ったモノが見えてくるはず」

最後に、菅野にどうしても聞きたいことがあった。それは、メジャーリーグへの想い。

「正直に言って、メジャーは夢としてある。どんどん上のステージに上っていきたいと思うのは自然の流れ。でも、ジャイアンツが大好きだし、メジャーに行きたいと思う向上心を持って臨んでいくことは、ジャイアンツのためにもなると思う。そのためにも成長を続けたいと思う」

菅野智之、28歳。巨人復活のカギは、この男が握っている。<制作:Get Sports>

※番組情報:『Get Sports
毎週日曜日夜25時10分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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