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映画で共演した安藤玉恵が明かす大泉洋のスゴさ「絶対大丈夫という安心感がある」

映画、テレビ、舞台で一癖もふた癖もある個性的なキャラを演じ、注目を集めている安藤玉恵さん。リアリティのある演技で風俗嬢を演じた映画『夢売るふたり』では第27回高崎映画祭最優秀助演女優賞受賞。

人気シリーズの映画『探偵はBARにいる』の峰子役など、今や日本映画に欠かせない存在だが、劇団時代は全く収入がないどころか、公演を行う度に出費がかさむ日々だった。

◆安藤玉恵、実家のとんかつ屋のお座敷で稽古!?

-大学卒業後、劇団「ポツドール」時代の生活はどのように?-
「実家のとんかつ屋『どん平』でアルバイトをしていました。ひとり暮らしじゃないし、食べることには困らなかったので何とかやっていました。みんな大変じゃないですか。それが私は実家暮らしで、残り物でも食べる物があったので(笑)」

-ほかの方々はかなりきつかったようですね-
「ひとり暮らしの人は特に大変でしたね。家賃や生活費の他に、公演をやるたびに色々お金がかかるんですよ。アルバイトも休まなきゃいけないし…」

-ご家族はお芝居をやることに対しては?-
「反対はしていなかったです。最初に大学をやめた時点であきらめられているところもあって。

ただ、役者は、努力をしても必ずしも認められるわけではないから、演出とか作家になったほうが良いとは言ってましたけど、応援してくれました。兄が『どん平』を継いだんですが、お店がわりと広かったので、稽古場に使わせてくれたり、とんかつの余ったお肉でカレーを作ってみんなに食べさせてくれたり…」

-良いご家族ですね-
「だから、恩返しとして、私は広告係になってお店の宣伝をしているんです。(笑)『うちはとんかつ屋なんです。来て下さい』って、色んなところで。そうすると、ドラマで共演した人たちがみんなで来てくれたりしています」

◆安藤玉恵、ドキドキの連続で手が震えた

-映画デビューは廣木隆一監督の『ヴァイブレータ』ですね-
「はい。廣木監督が『ポツドール』の公演を見に来て下さっていて、出演させていただけることに。連絡先を伺っていたので、公演のお知らせをしていたら、ほかの映画監督がいらっしゃるときなどに、『今、誰々と飲んでいるからおいでよ』という連絡をくださったりして。それで『ちゃんとお芝居やったら』と、事務所も紹介して下さったんです。何せ『ポツドール』は3人だけで活動していたので」

-何でもやらなくてはいけない状態ですか-
「そうですね。途中から制作さんが入りましたけど、基本的にはそうです。

あまり劇団以外のことは考えられない状態だったときに、そういう風に声をかけて下さったので、広がりましたね、一気に」

-それは『ヴァイブレータ』の後ですか-
「そうです。うれしかったです。映画が好きで見ていたんですけど、足がかりが全くなかったので。事務所に入る前は、ほかにも知り合った監督に『演劇見に来て下さい』と手紙を書いたり、『次の作品で何かあったら出して下さい』とやっていましたが。事務所に入ってからは、それはもう全部やっていただいているので」

-ほかにも、園子温監督や山下敦弘監督、橋口亮輔監督など名だたる監督とお仕事をされていますね-
「はい。『ポツドール』やペヤンヌマキさんの公演にも来て下さって、映画に呼んで下さいました」

-皆さん、舞台女優としての安藤さんをご覧になってのキャスティング-
「舞台でやっているのをご覧になっているから、多分すごく度胸があるみたいに思われていて…。でもそうでもないんですよ。テレビでしか見たことのない方たちが目の前にいて、稽古をせずに一緒に芝居するなんて、どうしたら良いんだろうって。ものすごく緊張していました」

-全然緊張したりせず、体当たりで演じる方だと思っていました-
「そんなことはないです。緊張しますよ。ドキドキしちゃって、女優さんはきれいだし、手足も長いし。手が震えていました(笑)」

◆映画『探偵はBARにいる』はお尻で?

NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で広く知られるようになった安藤さん。映画『探偵はBARにいる』シリーズの峰子役で大泉洋さんとのエロティシズムあふれるコミカルなやりとりも話題に。

-『探偵はBARにいる』シリーズの峰子も過激ですね-
「3作あるんですけど、1と2に関してはお尻の出演ですから。(笑)カメラマンさんが『お尻は撮ってないよ』っておっしゃっていたんですけど、見てみたら、全部お尻じゃないかって(笑)」

-あと、おっぱいも。衣装も見せるための下着という感じですね-
「そうでした。面白いと思って喜んでやっています。『いないだろう?こんなウエイトレス』って(笑)」

-大泉さんとのやり取りが絶妙。どんどん乱暴に扱われていきますが-
「今回はひどかったですね。新聞で殴られたり…。あれはアドリブなんですよ。

結構アドリブが多くて、監督が直前に『大泉さんがどうリアクションをするか見たいから、やってみて』とコソコソ耳もとで言うので、やってみたりとか(笑)」

-大泉さんも舞台や生番組をやっているので臨機応変にされるのでしょうね-
「大泉さんは笑いの間とかすごいですよね。本当に面白いですもん。私が何をしても絶対大丈夫という安心感があります」

-お二人のやり取りは毎回楽しみです-
「うれしいです。あそこで楽しんでもらわないとね(笑)

でも撮影で使わせていただいていた喫茶店が撮影後に閉店しちゃったんです。ススキノにある50年続いていた喫茶店だったんですけど、ご主人がもうご高齢で。だから、もし次があるとしたら、全く同じセットを組むのか、私の役がいなくなるんじゃないかとか、すごい今ドキドキしています」

-名物シーンですからね-
「セットを作ってくれるとしたら、札幌に行けなくなるので、それはまた寂しいですね。夜早く撮影が終わると、札幌でみんなと飲みに行ったりしてすごく楽しいんですよ(笑)」

◆安藤玉恵、月~木は禁酒するはずが…

昭和大学医学部在学中に「庭劇団ペニノ」を旗揚げして、劇団代表・劇作家・演出家で精神科医でもあったタニノクロウさんと結婚。演出家と女優として出会い、それまで見たこともない舞台を作るクリエイティブな才能にひかれたという。2007年には長男が誕生。女優業だけでなく、妻として、母としても多忙な毎日を送っている。

-Twitterには「月~木禁酒」とありましたが、結構飲むんですか-
「そうなんです。外にいたら結構飲んじゃいますけど、家でも飲むので。ちょっと気を付けようと思って、月曜から木曜まではやめようと思ったんですけど…」

-「大変よくできました」とお花のマークを書いていましたが-
「全然大変よくできてない。(笑)冷蔵庫にノンアルコールビールの缶と普通のビールの缶を混ぜておいて、手探りで出たものにしようとか、色々工夫はしたんですけど。

あれは7月くらいにたてた目標なんですね、夏のリーディング公演の練習で、楽しくなっちゃって、毎日飲んでいたんです(笑)」

-でも、すごい朝型の生活をしているとか-
「子どもがまだ小学生ですから、朝6時には起きます。それは朝ご飯とか、色々やらなくてはならないことがあるので」

-どんなに飲んで帰っても6時には起きるんですか-
「それから寝るんですけどね。朝ご飯や洗濯とかをして。

稽古などがあるときは、午前中のうちに夕飯を作らなくちゃいけないので、それを全部終わらせて、稽古に行く前にちょっと寝たりするんですけど、最近はそういうことがきつくなってきたんですよ。それで月~木を禁酒にしてみようかなって。飲まないとからだが楽なんですよね」

-量にもよると思いますが-
「『ソーダストリーム』という炭酸水を作る機械を買っちゃったんですよ。何で買っちゃったんだろうって思うんですけど。それでおいしいハイボールが家でできるようになっちゃって…。(笑)それでやめようと思ってウィスキーはやめて芋焼酎にしたりして」

-あまり変わらないのでは?-
「でも、25度と40度じゃ違いますから、焼酎の炭酸割りのほうがまだ良いかなって(笑)」

◆からだを張るサービス精神のルーツは…

-これまでヌードや大胆なシーンもありました-
「台本にもよりますけど、やると決めたら大丈夫です。映画『夢売るふたり』の濡れ場のシーンのときにはすごく気を使って下さって、監督とカメラマンと助監督だけにしてくれましたが、スタッフさんはいても大丈夫なんですけどね、やると決めたんだから」

-度胸とサービス精神がすごいですね-
「父が人を楽しませることが大好きだったんです。亡くなる3日前に、親族が病室に集まっていたんですけど、酸素マスクを目のところまで引き上げて、それはもう決死のギャグだって言ってるんですけど、『死ぬ、苦しい、死ぬ』って。(笑)

そこからがもっと面白くて、本当に意識がなくなって、息を引き取る寸前、母が声をかけても全く反応しないのに、私が『お父さん』というと、心電図の機械がピーンって反応するんですよ。それもまた爆笑で。私の声にだけ反応しているって。母は『冗談じゃないわよ。反応しなさいよ、私の声に』と言うし、夫婦漫才のようで、病室に20人くらいいたんですけど、みんな笑っちゃって。(笑)亡くなる悲しさもあったんですけど。本当にその場は面白かったですね。面白いと言って良いと思います」

-人を楽しませようというサービス精神はお父様譲りなんですね-
「そうだと思います(笑)」

-映画、テレビ、舞台、作品が続いていますね-
「去年ぐらいからは舞台が多くなりました。舞台はだいたい1年半から2年前にオファーがあります。その間に映画やテレビもやらせていただいているので、ありがたいです」

-今、舞台稽古の真っ最中だそうですね-
「『夜、ナク、鳥』の読み合わせが始まったんですけど、作家の方が大阪出身で、全編大阪弁なんです。私はもうずっと東京ですから、まずそこからですね」

-どんなお話ですか-
「2002年に福岡県久留米市で実際に起こった看護師4人による保険金連続殺人事件をモチーフに描いた作品なんです。私はこの事件を知らなかったんですが、色々資料を調べたり、本を読んで引き込まれました。キーポイントは『友情』なんですけど、結局、殺人に至りますからね」

-衝撃的な事件でした-
「実際にあった事件を舞台でやることにすごく興味があるので面白いです」

-2月は、映画『羊の木』も公開ですね。さびれた町で国家の秘密プロジェクトとして6人の元殺人犯を受け入れたことがきっかけで事件が…という展開ですが、面白かったです-
「良かったです。私は元殺人犯のひとりである田中泯さんが働くことになるクリーニング屋の店主役です。素性を知っていてというか、最初は『何だろうこの人は』というちょっと疑いの目で見ているのですが、揺れている感情を出さないといけないということで、監督と話し合いました。泯さんがタダモノじゃない感がすごいですから。さらに顔に傷までつけていたので…」

-迫力がありますよね-
「そうなんですよ。この佇まいで、このリアリティで、となると、特に最初のシーンはどうしようってなって。普通に受け入れちゃいけないだろうなというのがあったので、難しかったですね」

-すごく良かったです-
「うれしい。有り難うございます。社会的にも問題提起ができる作品だと思います」

-息子さんはまだ10歳ですが、安藤さんの映画や舞台は見てますか-
「R指定がない作品は息子に見せています。内容の難しい会話劇でも、私が何かやっていることが面白いみたいです。意外と冷静なんですよね。『面白かったし、ママみたいな脇役というのは必要だよね』なんて言ってます(笑)」

キャストのなかに名前があるとワクワクさせてくれる女優・安藤さん。毎回、予想をはるかに超える迫力の演技に圧倒される。これからも強烈なインパクトで記憶に残る女優として輝き続けて欲しい。(津島令子)

※オフィスコットーネプロデュース『夜、ナク、鳥』
2月17日(土)~24日(土)吉祥寺シアター
作:大竹野正典 演出:瀬戸山美咲(ミナモザ)
出演:松永玲子(ナイロン100℃)、高橋由美子、松本紀保、安藤玉恵ほか
http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/yoru-naku-tori/

© 2018『羊の木』製作委員会 © 山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

※『羊の木』2月3日(土)公開
監督:吉田大八
http://hitsujinoki-movie.com