【WRC】2016年WRCラリー最終戦は、オーストラリアの地を走る!
◆赤土の大地を走るグラベルラリー
WRC第14戦、今シーズン最後のラリーイベント会場は、シドニーから北に約540キロ、そしてゴールドコーストからは南に約300キロ離れた、東海岸の観光都市コフスハーバーとなる。WRCラリーとしては、1988年から加わっている。
ラリー・オーストラリアの特徴は、他の地にはない赤土のグラベル(未舗装路)を走行するラリーだということ。
この赤土は粒子が非常に細かく、乾いた状態では派手に土煙を上げるし、雨に濡れた状態だと泥が酷くなり、時にはマシンがスタックするほど。「MUD RALLY」(泥んこラリー)の異名を取る。オーストラリアで赤土の地と聞くと、ウルル(エアーズロック)のような何もない、赤土の砂漠地帯を思い浮かべるかもしれない。
このコフスハーバーがあるニューサウスウェールズ州(NSW)は、豊かな自然が有名な地域で、オーストラリアでも屈指の観光地域だ。サーフィンや海水浴、森林トレイル、キャンピングやワイナリー等々、個人でも家族でも楽しめるものが多く、この地を訪れるだけで、さまざまな形で豊かな自然と人間が共存している姿を見ることができる。
◆オージーは大のスポーツ好き
オーストラリアといえば、スポーツ好きの国民性が有名だ。
日本の北海道・ニセコスキー場は、オーストラリア人が世界的に有名にしたと言っても過言ではない。わざわざ日本にまでスキーを楽しみにやってくる。他にも自分で楽しむスポーツとしては、水泳、テニス、サッカー、自転車、ゴルフなどの人気が高く、観戦するスポーツとしては、オーストラリアンフットボール、ラグビー、サッカー、テニスなどが人気だ。
もちろん、モータースポーツ人気も高い。WRC以外にも、F1は1985年から継続開催しているし、2輪の世界最高峰であるMotoやスーパーバイク世界選手権なども開催している。
さらに、ローカルモータースポーツとして、ツーリングカーが競うスーパーカーチャンピオンシップなどがある。これらはどれも観客動員数が多く、人口が2300万人強と日本の約18%程度であることを考えると、これほど数多くの大会を開催してもすべて成立していることがスポーツ好きな国民性を表している証拠といえるだろう。
◆注目されるVWの行方
「ラリー・オーストラリア」はグラベルラリーで、シーズン最終戦。しかもチャンピオンシップも確定したことで、例年ならある種緊張感というより、各チームごとにより戦いと共に最終戦を楽しむ雰囲気がある。
しかし、今年は少々事情が違っている。というのも、前戦の「ウェールズ・ラリーGB」で4連覇を果たしたVWが、今シーズン限りでのWRC撤退を発表したからだ。突然の発表だったことから、WRCファンの間には衝撃が走った。
そして、そのニュースによって注目を集めているのが、ドライバーズチャンピオンシップを4連覇したセバスチャン・オジェを筆頭に、ヤリ・マティ・ラトバラとアンドレアス・ミケルセンという才能あるVWドライバーたちが、来年どのチームへ移籍するのか、というストーブリーグの話題だ。
メディアだけでなくファンも彼らの動向に注目していて、今年の「ラリー・オーストラリア」は各チームが集合しているサービスパークがドタバタしそうである。
◆VWが有終の美を飾る?
人々の注目はストーブリーグに集まっているが、各チームにとってはここがシーズン最後のイベントだけに、やはり有終の美を飾りたいものだ。
その最有力は、やはりVWのオジェ。昨年も優勝していて、2位もVWのラトバラ、そして4位もVWのミケルセンが占めた。
果たして、ヒュンダイやシトロエン、フォードなどの他の自動車メーカーがVWの勝ち逃げを阻止するのか。それともVWが有終の美を飾って、王者らしさを見せつけるのか。WRC2016年シーズンの最終戦は注目だ。
<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>
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