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昨年とは違う最終戦の風景。ラリー・オーストラリア、開幕直前【世界ラリー(WRC)】

WRC(FIA世界ラリー選手権)の2017年シーズン、いよいよシーズン最終戦となる第13戦「ラリー・オーストラリア」が、11月16日~19日にかけて東海岸のコフスハーバー地域で開催される。

©WRC/無断転載禁止

コフスハーバーは、ブリスベンからは約200キロ超南下したあたり、シドニーからは北へ約300キロ北上した、ブリスベンとシドニーの間にある小さな港町だ。

ラリー・オーストラリアはWRC初開催が1989年と比較的新しいラリーなのだが、当初はオーストラリアの西海岸にあるパース周辺で開催されていた。しかし、財政的な問題などもあり2006年を最後にパース開催はなくなっている。そして、シドニーなどの大都市を含むニューサウスウェールズ州へ開催地が移り、2009年から東海岸でのラリーとなった。

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このラリー・オーストラリアの特徴は、オーストラリア台地をつかさどる赤土のグラベル(未舗装路)ラリーであるということ。晴れた状態では砂埃がひどく、一度雨が降ると最悪のマッド(泥んこ)ラリーとなる。ただし、それこそがラリー・オーストラリア最大の魅力と言える。

しかし、乾燥した砂漠のような大地を走ると想像しているとしたら、それは違う。

コフスハーバーはオーストラリアのなかでも気候が温暖な地域として知られており、豊かな緑が多い。実際、ラリーコースも森林地域を走ったり海岸線を走ったりと、バラエティに富んでいる。そのためWRCファンにも人気が高く、日本からは行きやすいこともあってツアーなども組まれている。

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2016年シーズンもラリー・オーストラリアはシーズン最終戦だったのだが、2017年シーズンの最終戦は、出場するチームやドライバーたちにとって周囲の状況が一変したようだ。というのも、2016年シーズンは突然VWが撤退を発表し、VWドライバーたちは誰も2017年シーズンの予定が決まっていなかった。

つまり、他のチームにしても、玉突きで自分たちが弾き出される可能性があるという状況。ドライバーやコドライバーだけでなくチームスタッフにしても、WRCで仕事を続けたいスタッフは他に仕事先を見つけなければならない。一見、最終戦独特の和やかな雰囲気のなかでも、どうにも例年とは空気が違っていたというのだ。たしかに、1年前のメディア報道を振り返っても、最終戦の話題というより2017年への混沌が日々報道されていた。

それに対して、今シーズンはチャンピオンこそフォードのセバスチャン・オジェが獲得したものの、フォードが5勝、ヒュンダイが3勝、トヨタとシトロエンがそれぞれ2勝ずつと、各チームの差が小さかった。

何年もVWの1強状態、さらにその前はシトロエンの1強状態が続いていたことを考慮すると、今シーズンの最終戦は非常に雰囲気の良いなか開催されることは間違いないだろう。

 

◆トヨタにとってはシーズン3勝目のチャンス?

昨シーズンの今頃はまだチーム体制も不明だったトヨタだが、すでに2018年シーズンのドライバー体制も決まり、最終戦のラリー・オーストラリアはまさに18年振りシーズンの総括とも言えるラリーとなる。

エースのヤリ‐マティ・ラトバラはチームプレビューで、「オーストラリアのSSはヤリスWRCに合っているはずです。私としては表彰台を目指して全力を尽くして戦うつもりですし、その結果として優勝争いに加わることができれば最高です」と語り、エサペッカ・ラッピも、「我々にとってラリー・グレートブリテンは望ましくない結果になってしまいましたが、オーストラリアはきっと良いラリーになると思っています。良い形でシーズンの終わりを迎えられるよう頑張ります」とラリー・GBでの悔しさを挽回できると考えている。

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しかし、ここラリー・オーストラリアでは、トヨタ同様に勝利を密かに狙っているドライバーがいる。昨シーズンの勝者であり、ヒュンダイのドライバーとなったアンドレアス・ミケルセンだ。すでにチャンピオン争いも終わり、チームメートのティエリー・ヌービルをサポートする必要もない。今季最速とも言われているヒュンダイのマシンで2年連続勝利を目指す。

インタビューを受けたミケルセンは、「実際、僕たちはここラリー・オーストラリアにおいてマシンアドバンテージがあると思う。それを最大限に生かしたい。それに何より、ラリー・オーストラリアは僕の好きなラリーイベントで、昨シーズン勝利した最高の思い出がある。今年もそれを再現したいね」と自信を見せた。

もちろん、どのドライバーもより良い成績を目指していることは間違いないが、ここ最終戦のラリー・オーストラリアに向けては、他とは違ったコメントをするドライバーが多い。

例えば、今年はチャンピオンに届かなかったティエリー・ヌービルだが、このラリー・オーストラリアはシーズンの“残り香”を楽しむという。「メキシコ、アルゼンチンなど、いくつかの熱狂的なファンが多いラリーの雰囲気とは違うね。オーストラリアはシーズン最後のイベントで、僕だけじゃなく、他のチーム含めてすべてがより落ち着いていてリラックスしている。僕たちもラリーの準備段階からこの雰囲気を楽しんでいるんだ」とコメントしている。

シトロエンのクリス・ミークも、「良いイベントだね。本当に良いステージがいくつかあって、テクニカルなロードやすごく速い区間もある。とくに土曜日のメインステージとなる50kmは本当に特別だ」としたうえで、「ただし、蛇は勘弁だ。あと大きなトカゲがいるんだ。朝食をとるホテルなんかにも普通に屋外にいる。森でマシンの外に出なくちゃいけないときは、すごく気を使うよ」と、“野生の動物を除いて”はこのラリー・オーストラリアは好きなラリーだと語った。

そして勝利を狙うミケルセンも、「僕はオフのときにゴルフをするんだけど、ここオーストラリアではボールをいっぱい買うんだ。他のコースではボールがブッシュ(草が多く生えた場所)に入ったときはボールを捜しに行くけど、ここオーストラリアではさっさと諦める。どんな動物がいるかわからないからね」と、オーストラリア独特の雰囲気を語った。

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欧州出身のドライバーが多いだけに、オーストラリアの野生動物にはどのドライバーも興味はあるが、おっかなびっくりな対応になってしまうようだ。とくに爬虫類を苦手とするドライバーは多い。

そうした非日常的な環境が最後のラリーイベントにあることも、ラリー・オーストラリアがドライバーに人気であり、普段とは違った感じになる要因なのかもしれない。

 

◆最後の勝利は誰の手に?

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ラリーは、木曜日にSS1が行われ、金曜日にSS2~SS7、土曜日にSS8~SS16、日曜日はSS17~21が行われる計4日間のスタイル。

日本との時差は、サマータイムを含め2時間だ(例えば、現地時間木曜日午後7時スタートのSS1は、日本では午後5時から)。欧州のように時差がないので、ほとんどの結果を日中に知ることができる。そんなシーズン最終戦、ぜひ白熱しながらチェックしてもらいたい。<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>

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