【WRC】イギリスで開催される伝統の一戦は、ラピュタの舞台を走る絶景ラリー!
◆ラリー・モンテカルロに継ぐ歴史
WRC第13戦となる「ウェールズ・ラリーGB」は、ラリーの歴史を築き上げてきた伝統の一戦だ。
日本でもっとも知名度が高いモータースポーツであるF1は、1950年にイギリスのシルバーストーンでイギリスGPが初開催され、同じく1950年に開催されたイタリアGPとモナコGPが、現在まで一度も途切れることなく続く伝統のF1レースとなっている。
そして、ラリー界においては、この「ウェールズ・ラリーGB」と「ラリー・モンテカルロ」が別格の地位にあるイベントとなる。
「ウェールズ・ラリーGB」のラリー初開催は1932年。日本ではJAF(日本自動車連盟)にあたるRAC(ロイヤル・オートモービル・クラブ)が主催し、その後長く「RACラリー」として知られていった。「ウェールズ・ラリーGB」となったのは2003年からである。
そのため、ラリーファンの多くには「RACラリー」の方が聞き覚えがある。また、1988年から1990年に連載された新谷かおる著の漫画『ガッデム』では、「RACラリー」として登場しているので、日本ではいまだに「RACラリー」の方が一般的知名度が高い。1973年にスタートしたWRCには当然ながら初年度から組み込まれている。
開催地は名前の通り、GB(グレートブリテンおよび北アイルランド連合国)、通称”イギリス”を構成する4つの国のひとつ、ウェールズで行われる。ウェールズと聞いても地図が思い浮かばない人もいるかもしれない。
イギリス全体を思い浮かべると、南端にロンドン、北端にスコットランドのグラスゴーやエディンバラがあり、ロンドンとエディンバラの真ん中あたり、マンチェスターやビートルズで有名なリバプールから西に行ったあたりが「ウェールズ・ラリーGB」の開催地域ウェールズとなる。
例えばリバプールからは、どのSSも数十キロ以内なので、レンタカーでイベントを観戦に行ける距離だ。
◆観光目的でも魅力溢れるウェールズ
ウェールズではないが、ここへ観戦に行ける距離の都市である、リバプール、マンチェスター、そしてバーミンガムなどは、どこも音楽の世界では非常に有名で、リバプールからはビートルズ、マンチェスターからはビージーズとオアシス、そしてバーミンガムからはブラックサバス、ジューダスプリースト、デュラン・デュランなどが誕生した。
音楽好きな人にとっては、WRCに合わせてブリティッシュ音楽の聖地を回ることも最高の体験となるはずだ。
もちろん、サッカー好きには、マンチェスター・ユナイテッド、リバプールFCのスタジアムを巡る楽しみもあるだろう。
そして最後に忘れてはいけないウェールズ最大の魅力として有名なのが、息を呑むほどの風景や大自然。アニメ『天空の城ラピュタ』が描いた自然は、このウェールズが舞台となっていることは、あまりにも有名だ。
イギリスが持つさまざまな魅力を観光としてもまとめて楽しめてしまうイベント、それが「ウェールズ・ラリーGB」なのである。
◆朝5時半スタートという体力勝負
「ウェールズ・ラリーGB」の公式スケジュールは金曜日からSS1がスタートする。
第13戦のラリー・カタルーニャでは、木曜日にイベント的な要素として、SS1がバルセロナ市内の特設ステージで開催されたが、ここではそうしたイベントはない。森林を中心とした高速グラベル(未舗装)ラリーとなる。
金曜日はSS1からSS8まで、土曜日はSS9からSS16まで、そして最終日の日曜日はSS17からSS22までが予定されている。
ラリーは、サービスパークと呼ばれるマシンを整備する拠点からスタートする時間が朝早いのだが、ここ「ウェールズ・ラリーGB」の朝はとくに早く、金曜日は朝5時30分に第一走者がサービスパークを出発することとなる。
◆王者オジェの牙城は揺るがない?
さて、注目のドライバーは、前戦ラリー・カタルーニャで史上3人目の4連覇を達成したセバスチャン・オジェ(VW)だろう。彼は2013年から3年連続で勝利しており、ここ「ウェールズ・ラリーGB」においても4連覇を達成する可能性が高い。
そこにヒュンダイやシトロエン、そしてフォードを駆るドライバーたちが、どのように挑戦していくのか。林道という高速グラベル(未舗装)では、天候次第では非常に滑りやすく、スノー(雪道)で強い北欧系ドライバーたちにも大いにチャンスが生まれてくる。
シーズン残り2戦となった伝統の「ウェールズ・ラリーGB」。イベントはまもなく始まる。
<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>
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