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富田望生、デビュー作では15kg増量の役作り。役によって体型も容姿も自在にアプローチ「形から入ることがひとつの方法」

2015年に公開された映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』(成島出監督)の主要人物のひとり、浅井松子役でデビューして注目を集めた富田望生さん。

『ソロモンの偽証』でクラリネット、映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(河合勇人監督)でチアダンス、映画『あさひなぐ』(英勉監督)では薙刀の猛練習をすることに。

 

◆初めての海外ロケ

2017年、富田さんは映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』に出演。この作品は、ごく普通の女子高生たちによるチアリーダー部が、全米チアダンス選手権大会で優勝を果たした福井県立福井商業高等学校の実話を映画化したもの。

富田さんは、広瀬すずさん、中条あやみさん、山崎紘菜さん、福原遥さんらとともにチアリーダー部の部員・東多恵子役を演じ、キレッキレのチアダンスを披露。

――クラリネット、チアダンス、薙刀など、作品ごとにいろいろやられていますね。

「はい。練習するものが結構続いていましたね。『チア☆ダン』も撮影期間は2カ月弱ぐらいだったんですけど、撮影に入る前の4、5カ月間はチアダンスの練習がほぼ毎日あったので、部活のような感じでした。

みんなで一緒に笑うときもあれば、ともに泣くときもありました。必死で練習してもできなくて悔しいとか、『ワーッ』ってなってしまう瞬間もあって…。それぞれがそんな風になっているところも見ているし、私もそういう状態を見せている状況でのアメリカロケだったから、『やっと来られたね、ここまで』という感じもありました」

――キレッキレのダンスが印象的でした。

「ありがとうございます。良かったです。一生懸命練習した甲斐がありました」

――クライマックスである全米チアダンス大会の撮影は、アメリカ・サンディエゴ州立大学で行われたそうですね。

「はい。実際にアメリカロケがありました。私は初めて海外に行ったので、ドキドキしました。何も動けないみたいな感じで(笑)。

お姉ちゃんたち、中条あやみちゃんとか山崎紘菜ちゃんが英語がしゃべれるから、お姉ちゃんたちにちょこまかちょこまか付いて行って、『私はあれが食べたいんだけど』って言って注文してもらったり…もうてんやわんやでしたけど、とても楽しかったです」

同年、富田さんは、薙刀に青春をかける少女たちを描いた映画『あさひなぐ』(英勉監督)に出演。中学まで美術部だった東島旭(西野七瀬)は、「薙刀は高校部活界のアメリカンドリーム」といううたい文句に誘われ、なぎなた部に入部。地獄のような夏合宿を経て成長していく…という展開。富田さんは、なぎなた部の先輩・大倉文乃役を演じた。

――『あさひなぐ』では、薙刀でしたね。

「はい。薙刀の練習を毎日しました。実際に体育大学のなぎなた部の部活動に通い、一緒に部活をさせてもらっていました。本当にいろんな部活を経験させていただいて…私の青春です(笑)」

――劇中、合宿で階段を駆け上がるシーンもありましたが、かなりきつそうでしたね。

「本当にきつかったです。『あれっ?リアルにこれ撮影でつらいんじゃないの?』って思いました。本当にもうヘロヘロで。みんなでおいしいものを食べて頑張りました(笑)」

 

◆コギャルメイクにテンション爆上がり

2019年には、韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(カン・ヒョンチョル監督)のリメイク映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(大根仁監督)に出演。

90年代、青春を謳歌していた仲良し女子高生6人グループ“SUNNY”。20年後、それぞれ問題を抱えながら生きていたが、メンバーのリーダー格だった芹香(板谷由夏/山本舞香)が末期がんに侵されていることを知った奈美(篠原涼子/広瀬すず)はメンバーの消息を追いはじめる…という展開。富田さんは、“SUNNY”のメンバーのひとり・林梅役を演じた。

「韓国のオリジナル映画を見てものすごくいい作品だったので、リメイクすると聞いたときは、やりたいって思いました。『でも、これを日本の文化に移したときにどうなるんだろう?』って思ったんですけど、コギャルということになって。メイクを始めるときにまず毎朝眉を半分剃るというところから始まるのがおもしろかったです(笑)。

コギャルのメイクは初めてでしたが、テンション上がりました。もう何も恥ずかしくない子たちというか、『我が道を行く私たちって、これが一番美しくて楽しいから』っていうマインドで。私自身私生活もそんなマインドだったので、自分の生き方に正直になれたという感じでした」

――20年後を渡辺直美さんが演じられるということは意識しました?

「意識はそんなにはしてなかったですが、直美さんが踊れるので、直美さんの若い頃をやる条件として踊れる子というのがありました。オーディションを受けに行く予定ではあったんですけど、運良く『チア☆ダン』の公開の時期にオーディションだったので、『チア☆ダン』で私が踊っている映像を制作の方が監督に渡してくださって、『この子でいいよ』って」

――富田さんはリズム感がいいですよね。キレッキレのダンスのイメージがあります。

「ありがとうございます。音楽が好きなのでリズム感はいいほうだと思います。中学時代吹奏楽部に入っていたりとか、昔から地域で和太鼓をやったりするのも好きで率先して参加していたので、ダンスにも活かされたんじゃないかなって思います」

――ダンスをはじめ、作品ごとにいろいろなことにチャレンジされていますね。

「はい。とくに役で出会ったものは好きになりますね。踊りもそうですし、楽器ひとつとってもそうですけど、好きでやっています。私が役をやるために練習したというよりも、(演じる)役が好きなことなのだったら好きになる。役が嫌いなものだったら苦手になるみたいな、そういう感覚だったので、基本的に作品で経験したものは好きですね」

――カメラマンとしても活動されていて、感性も豊かでいいですね。

「やりたいと思ったことは、1回やってみないと気が済まなくて。合わないなと思ったらやめればいいと思っているから、いったんやってみてという感じです」

 

◆体型も容貌も変貌自在

デビュー作の映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』で15キロ体重を増やして主要キャストのひとり、浅井松子を演じきった富田さん。演じる役柄によって体型も容貌も変貌自在に挑むことでも知られている。

「私は体重もそうかもしれないけれど、服装にしろ髪型にしろ、形から入ることが、役が近づいてくれるひとつの方法だということを学んだからやっていました。でも、今は体重にしがらみのない役というか、もっと根っこの部分という役が最近は増えてきたので、そこはあまり気にしてはいないです。

ただ、漫画原作とか、託されたものがそうであるならば、まずそこはクリアして当たり前というか、しないで演じることに至らないというか、そういう感覚があったので、この役は(体重を)増やそうとか減らそうというのは、もう当たり前みたいな感じです」

2018年、富田さんは、“肉体の入れ替わり”を題材にした『宇宙を駆けるよだか』(Netflix)に出演。明るくて容姿端麗な小日向あゆみ(清原果耶)は、幼なじみでずっと好きだった“しろちゃん”(神山智洋)と初めてのデートの日、容姿に恵まれないクラスメイトの海根然子(富田望生)と中身が入れ替わってしまう。

誰にも信じてもらえず絶望するあゆみだったが、入れ替わりに気づいてくれた親友(重岡大毅)とともに元に戻る方法を探りはじめる…という展開。富田さんは、一見わからないほど変貌した姿で、容姿に対するコンプレックスやあゆみへの強い嫉妬心を体現した。

「『宇宙を駆けるよだか』もオーディションだったんですけど、オーディションの時期、私は『SUNNY』の撮影をしていたので、然子ちゃんとかあゆみちゃんみたいなマインドではなかったんです。

それで監督も『あれっ?富田さんってこんな感じだったの?』って戸惑われたみたいなんですけど、『SUNNY』の撮影が終わるまで待ってくださって。『撮影が終わってからもう1回会いましょう』って言ってくださったので、『SUNNY』の撮影が終わってからもう1回お会いして。

清原果耶ちゃんとふたつの役をふたりで演じるということで、彼女ともすごく濃い良い時間を過ごさせてもらいました。撮休の日は、ふたりで一緒にお出かけしたり、それぞれの役が好きなもの、一緒にケーキを食べに行ったりして。

お互いの感じたこと、そのときの役の感情を共有しながら、本当にふたりでふたつの人生を生きているということを共有していました。彼女と一緒に過ごした時間は、すごく特別な時間だったと思います。

両極端な性格の子だったので、お互いに助け合いながらやっていました。今でも本当に仲が良くて、しょっちゅう連絡を取っています。いまだに自分の思いとか感情とか、おいしかったもの、楽しかったことやつらかったこと、嫌だと思うことも共有し合える仲で、多分そこの感覚も似ているんだと思います。

だから、『わかるよ』って言われると、本当にわかってもらえているという実感があります。この関係は作品からずっと続いているので、彼女なしではああいう感じにはならなかったんじゃないかなって思います」

2019年、富田さんは連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)に出演。このドラマは、戦災孤児の少女・奥原なつ(広瀬すず)が、北海道の広大な大自然と開拓者精神溢れる強く優しい大人たちに囲まれてたくましく成長し、草創期の日本アニメの世界でアニメーターを目指す姿を描いたもの。富田さんは、なつ(なっちゃん)にとって唯一の女の子のクラスメイトで親友・居村(門倉)良子(よっちゃん)役を演じた。

「朝ドラのオーディションに行ったのは初めてだったので、わけがわからなかったです(笑)。ただ、(広瀬)すずがヒロインなのはわかっていたので、すずと一緒にできたらいいなくらいの気持ちでオーディションに行きました。

そうしたら親友の役で。すずとは仲が良いですし、一生友人みたいな役柄が多いんですよね。お互いの思っていることはわかるということも多いんですけど、お互いに感想を求め合わないというか、吐き合う仲みたいな感じです(笑)。

お互いの思いを吐き出して、『うんうん、わかる、わかる!』っていうだけで終わるのがすごく心地いいいというか。私の置かれている立場とか見ている世界と、すずがいる世界というのは結構違うと思うんですけど、『現場ってこうあってほしいよね、お芝居ってこうやってしていきたいよね』っていうことは変わらないんだなっていうことに、すごくパワーをもらっています」

――朝ドラの撮影の現場は独特の雰囲気だと思いますが、いかがでした?

「独特だったけど、楽しかったです。やっぱり長い期間やると皆さん大変っておっしゃっていたから、ときどきNHKに遊びに行ったりしていました。

『すず、どうかな?』とか思っていたのですが元気でした。『楽しい、楽しい。ただ楽しい!』って言っていたので、『こんなヒロインいるんかな?』って(笑)。やっぱりすごいパワーの子だなって思いました。一緒にできてうれしかったです」

富田さんは、2024年3月まで放送されていた連続テレビ小説『ブギウギ』にも出演。ヒロイン・福来スズ子(趣里)を支える小林小夜役を演じて話題に。

次回はその撮影エピソード、公開中の映画『日日芸術』、現在撮影中の初主演映画『港に灯(ひ)がともる』(安達もじり監督)も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:片桐直樹
スタイリスト:伊達環


※映画『日日芸術』
新宿K’s cinemaにて公開中
配給:Planetafilm
監督:伊勢朋矢
出演:富田望生 齋藤陽道 パスカルズ 伊勢佳世 万里紗 窪瀬環

セロハンテープで作られた奇妙なメガネを手にした俳優・富田望生のアートをめぐる冒険を描いたロードムービー。俳優の富田望生はふと訪れた喫茶店で、セロハンテープでつくられた奇妙なメガネをかけた店主と出会う。店主に促されてそのメガネをかけてみると、日常の景色がアートだらけの世界に変わって見える。望生はメガネに導かれるように、独創的な作品をつくるアーティストたちと出会う。個性豊かな彼らの唯一無二の表現と生き様に刺激を受け、望生は自分の表現を模索し始める…。