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まさに「運命!」な『Destiny』第2話。12年ぶりの“残酷”な再会…全てが繋がりはじめるワクワク

<ドラマ『Destiny』第2話レビュー 文:木俣冬>

デスティニー(運命)! と叫びたくなるような第2話だった。

いきなりネタバレ全開になるが、「全ての事件は、最初から繋がっていた…?」というフレーズが第3話の予告にあり…。

第2話ではまさに、西村奏(石原さとみ)の父・辻英介(佐々木蔵之介)の死と、大学の同級生・及川カオリ(田中みな実)の死と、初恋の人・野木真樹(亀梨和也)との別れの全てが繋がっているらしく、あの日、カオリの乗った車が猛スピードで山道をうねっていったように、それぞれのエピソードがぶつかりあい巨大化しながら時間という道をひた走る。

そのうえ、奏の担当する違法薬物所持事件もそこに関係してきて……。

はたしてそんな偶然があるものだろうか。いや、ある! なぜなら、これは運命(デスティニー)だから。

「Destiny」というタイトルは万能の飛び道具である。このワードのもとにすべてを繋げることが許される。でもそれを使いこなすのは容易なことではない。が、この『Destiny』では見事に使いこなしている。

各パートをたとえバラバラに見ても、その瞬間瞬間の俳優の芝居、息遣いに真実味があり、緊張感が持続して、説得力と求心力のリボンで固く結ばれているようだ。

◆主人公・西村奏、優秀な仕事ぶりと“現在”の恋愛

例えば第2話は、奏の充実したお仕事と恋愛の物語にも見える。

2024年、奏の現在の恋人・奥田貴志(安藤政信)が勤務する病院に、真樹(亀梨和也)が患者として運ばれてきた。

これからどうなる?と思ったら、物語は一旦、奏のお仕事パートへ――。

奏は違法薬物所持事件を担当している。横浜のバーに集まった人たちが検挙されたが、ひとり川越拓海(岡村拓真)だけが当日、薬物を所持していなかった。拓海が民事党幹事長の息子だったことから事件は世間的に注目されていた。

奏は拓海を起訴に持っていかなくてはならない。が、横浜地検中央支部支部長・大畑節子(高畑淳子)に奏のやり方では決め手に欠けると指摘されてしまう。

是が非でも起訴に持ち込むため休む間もなく仕事に追われる奏に、貴志がふいにプロポーズする。

さらりと結婚の話を持ちかけたあと、爪にやすりをかけ洗面所を出ていく貴志。爪に気をつかうのはお医者さんだからであろう。

安藤政信はデビュー時から、芝居の純度が誰よりも高くて注目された俳優であったことを改めて思う。と同時に危うい人物を演じさせても迫真であるのだが、今回安藤が演じる貴志はこの上もなく誠実でやさしそうだ。

貴志は奏の2度目の恋の相手である。奏はままならないことをたくさん経験してきたけれど、貴志との出会いで救われていまがある。

カオリ(田中みな実)の事故から12年、真樹(亀梨和也)が消え、ロースクールにも落ちて、抜け殻になった奏の前に偶然現れた貴志。

当時、大学病院の研修医であった貴志は真っ白な人だった。白衣、白のスニーカー。差し出された白湯を奏は「魔法のお湯」と言う。湯気でメガネ曇って、涙が一筋。奏の凍った心は魔法で溶けた。

時間をかけてつきあいはじめた奏と貴志。お互い忙しく、もう無理かと思ったこともあったが、乗り越えて、ようやくプロポーズまで来たのだ。

ここまで、第1話を見てなかったら、優秀な検事・奏が私生活と仕事を両立させているお仕事&恋愛もののようにも見えなくもない。

だが、当然ながらそういう話ではない。間の悪いことに真樹が貴志の病院の世話になる。そしてそれがカオリの十三回忌のときとくれば、まるでカオリが呼び寄せたようにも思える。魔法が解けるように奏の仕事と恋のターンは終了。運命の真樹との再会へ――。

カオリの十三回忌の法要に参列するため長野に行くはずだった日曜日、奏は問題の違法薬物所持事件の参考人聴取を行わなくてはならなくなった。

参考人であるバーのマスター(平原テツ)をぐいぐいと追い込み、逃げ場をなくしたあと、若い事務官・加地卓也(曽田陵介)に調書を書かせ(それが彼の仕事だから)、自分は長野にすっ飛んでいく。

部下とのコミュニケーション大丈夫?とちょっと心配になったり、こんな大変な仕事しながら、新幹線の時間も考えているってすごいなーと思ったり。

このへんも、お仕事ドラマみたいなのだが、奏の淡々とした取り調べは、泣く子も黙りそうな迫力があり、彼女の優秀さがよくわかる場面で、第1話の冒頭に戻って考えると、彼女のこの才気が真樹との間でも発揮されるのかと思うとゾクゾクしてしまう。

◆まさかの再会…12年間の空白の残酷

さて。奏の大学時代の仲間の2人、森知美(宮澤エマ)と梅田祐希(矢本悠馬)は結婚し、息子がいる。

奏が長野についたら、もう法事は終わっていて、知美たち家族は帰ったあとだった。

お墓にはメロンクリームソーダ缶が供えてあり、それを見て奏は楽しかった大学時代、カオリの笑顔を思い出す。そうしたら当然、初恋の真樹のことにも想いは及ぶ。

ついふらりと母校に寄るとそこにはいたのは……。

カナカナ……とひぐらしが鳴く。

貴志の病院に入院していたはずの真樹だったが、抜け出して長野に来ていたのだ。あのクリームソーダは真樹が供えたもの?

ああ、せっかく安定した真っ白な幸福を得かかっていた奏だったのに、罪の匂いのする真樹が再び現れた。

「真樹」と名前を呼んだ瞬間、あっと言う間にあの頃に戻ってしまいそうだけれど、「泣くなよ」と真樹に触れられた瞬間、身体が思わず拒否ってしまう。それが12年間の空白の残酷だ。

真樹:「検事になったの?」
奏:「え」
真樹:「そのバッジ」
奏:「そうだよ なったよ」
真樹:「すごいな、がんばったんだな」
奏:「そうだよ、がんばったよ(後略)」

この会話が染みた。昔の親しさは残っているけれど、奏のがんばった12年を真樹が知らない切なさ。未練なのか愛情なのか、懐かしさや責めたい気持ちや、頭のなかでいろいろな想いが渦巻いているであろうことが、石原さとみの瞳や唇から伝わってきた。

だがどうにもならないまま東京へとぼとぼ帰宅する奏。

寝ているように見えた貴志は、奏が寝室を出るとそっと目を覚ます。いちいち描写が細かくてそのたび胸がざわつく。

貴志が申し分ない人過ぎて、真樹が今更現れても……とは思うけれど、あれだけ燃え上がった初恋の相手はやっぱり上書きできないものなのか。

想いを断ち切って、貴志との結婚を前向きに考えたい奏ではあったが、横浜に赴任して2年、都会には星が見えないと空を見上げていたのと同じころ、真樹も星のない空を見ているという、やっぱり運命の神様はこのふたりを結びつけようとしているとしか思えない。

「だめだよ、真樹と会ったりしちゃ」と知美(宮澤エマ)が奏に釘を刺す。なにしろ、知美はたぶん、カオリ事件の発端を知っている。むしろ発端の張本人?

知美は夫の祐希(矢本悠馬)に、奏から聞いた話を報告する。さすが仲良し5人組。みんなで真樹のことを共有した。このときの祐希の深刻な表情がまた意味深であった。いったい誰が何をどれだけ知っているのだろう。

いまのところ貴志だけが知っている真樹の頭部のレントゲンに記されたものは……。これって絶対いやな予感が当たるやつなのでは。いや、もう要素盛り盛り過ぎる。

◆不謹慎ながら思わずワクワク…“罪深い”ドラマ

1話分でこの情報量にめまいを覚えていたら、さらにまだ盛ってきた。

拓海の犯行を裏付ける供述がとれたと思った矢先、真樹の父で、敏腕弁護士・浩一郎(仲村トオル)が担当になり、あっさり不起訴になってしまった。

おそらく、拓海が民自党幹事長の息子ということでなんらかの力が動いたのだろう。浩一郎はそういうダークな弁護士のようである。その浩一郎のダークな部分と奏の父・英介の自殺事件が繋がって……。

「奏のパパは自殺じゃない。殺されたんだよ」と死の間際叫んだカオリ。あれから12年、真樹は父・浩一郎に、20年前の環境エネルギー汚職事件に関わっていた奏の父・英介を浩一郎が……と激しく追求する。

仲村トオルと亀梨和也の鋭い切れ長のまぶたがどことなく似ていて、父子役がぴったりだなあ、とか、真樹は12年、苦労したのか、燃えるような眼差しできりっといい顔になっているなあ、その差異を亀梨和也が鮮やかに演じているなあ、なんてことを考えている場合ではない。このハードな問題を奏が聞いていた。

奏がどんなに頭が良くても、これはなかなか整理しきれないだろう。混乱の要因・真樹と浩一郎の問答に、椎名林檎の主題歌『人間として』がかかり、終わりにディンドンディンドンと鳴るドラムのリズムが激しく鳴る心臓の鼓動のようだった。白湯か水を飲んでまずは落ち着きたい。

第2話にして、20年間の流れはだいたいわかった。野木父子が、共に罪を犯しているかどうかはまだわからないが、真実が明らかになっても、すでに人がふたり死んでいることは取り返しがつかない。

すっきりしそうにないことを奏がこれからどう処理して、何を選びとるのか(貴志か真樹か)、考えるだけで不謹慎ながらワクワクする。いい意味で、なんて罪深いドラマなのだろう。

※番組情報:『Destiny
毎週火曜よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局

※『Destiny』は、TVerにて無料配信中!

※動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」では過去回も含めて配信中!

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