本田圭佑が語る、日本の起業家への想い。「僕らは投資をさせてもらう側。期待しかしてない」
3月18日、東京・渋谷のイベントホール。壇上には、サッカー選手で起業家としても活躍中の本田圭佑氏の姿があった。
このイベントは、本田氏が立ち上げた日本の起業家に特化したファンド「X&KSK」が主催する「CREATE」と名付けられたカンファレンスイベント。会場は約400人の起業家や投資家であふれかえっていた。
「X&KSK」は、グローバル規模に成長する可能性のある日本を代表するスタートアップへの投資に特化したベンチャーキャピタル(以下VC)だ。
エンターテインメントやAI、コンシューマービジネスなどの領域で投資をおこなっている複数のファンドと共同で「X&Circle Fund」を形成し、グローバルなベンチャーコミュニティと日本の起業家を繋ぐことで、日本のスタートアップエコシステムに貢献していくことを目的に事業を展開している。
今回のイベントでは「世界最高を学ぶ」というキャッチフレーズのもと、「AI」「ヘルスケア」「エンターテインメント」などのテーマに沿って、日本及び海外の第一線で活躍中の起業家や有識者がトークセッションを展開した。
ネットワーキングの時間も設けられ、参加者同士の交流から次なる共創や新規事業の創出が実現することを期待してのプログラムだ。
本田氏が、日本のスタートアップが世界のマーケットで勝負するための支援を行う理由はどこにあるのか? そして、区をあげてスタートアップ企業の支援や誘致をおこなってきた渋谷の街でこのようなカンファレンスイベントを開催することの意義とは?
本田氏に話を聞いた。
――本田さんご自身の渋谷の印象はどのようなものですか?
本田:「渋谷は新しいことをやることに対して抵抗感が少なそうだと感じます。街全体として面白いことをやりたいという血が流れてるんじゃないかとか、失敗を恐れないとか、変化に対する考え方が他とは違うのかなという印象がありますよね」
――渋谷にスタートアップ企業が多く集まっていると聞きます。なぜ渋谷はスタートアップが生まれやすいと思いますか?
本田:「僕はそれほど詳しくないんですけど、サイバーエージェントの藤田(晋)さんたちの世代が、偶然なのか必然なのか渋谷にネット系企業をガンガン立ち上げたというのは面白いと思いますよね。そこが今も受け継がれているというのは“後付け”のような気がしますけれど、非常に魅力的な街なんだと思います。
後付けだとしても、そのDNAを受け継いだ人たちが渋谷引き続き面白くしている印象なので、今後も期待したいなと思っています」
――そもそもスタートアップが生まれるための環境とはどのようなものなのでしょうか?
本田:「スタートアップが立ち上がる時というのは、問題を解決するということがベースにあると思うので、問題が多いということが条件になると思います。なので、いま僕が勉強している国でいうと、例えばインドだと問題だらけなんですね。こういう場所ではものすごい数のスタートアップが毎日のように立ち上がっていて。
問題と企業の数が増えると金も流れてくるので、必然的に国が一気にスタートアップをサポートする流れになりますし、そうするとユニコーン、デカコーンが生まれてくる。このスパイラルをいかにして作り出すか、ということですよね。
マインドセットはすごく大事で、なぜかというと日本はスタートアップが生まれる国としては良すぎるんです。そんなに問題がない。なんだかんだみんな生き延びられるので、究極的な問題には直面していないんですよね。もちろんメディアで毎日のように問題がニュースで取り上げられるんですけど、いざ自分の今日を考えたら今日は生き延びられるし、明日も生き延びられるし、1年後もみんな生き延びられる。
でもそうじゃない国が本当にあるとした時に、(その国は)問題だらけなわけじゃないですか。そこがとてつもない人口を抱えていて、そこで志あるファウンダーがこの人たちの生活をもう一段引き上げようと志した時に、そのスタートアップはとてつもない企業になり得るということなんですよね。
スタートアップが生まれやすい環境というのは問題が散漫している状況なので、日本は向いてない。だから、意識を変えないといけないんです」
――だとすると、日本で起業家精神はどうしたら育つと思いますか?
本田:「自然にやると育たないと思うんです。成功された方の過去を見ると、普通ではない環境で育ったというケースが多い。いろんな普通じゃない環境で経験を積んできている人たちに、まさに“アントレプレナーシップ”というのは身につくんだと思います。その環境として日本は向いていないので、“いかに人工的に作り出すか?”というのが重要になるわけです。
僕はマインドセット、考え方、メンタル的なことを挙げていますけれど、それを意識的にやらないといけないと思っています。もう少し良い環境に身を置くとしたら海外に行くのが一番なんですけど、海外に行くのが現実的でないなら、付き合う人を考えるということですよね。マインドセットを重要視している人としか付き合わない、こういう時間の使い方をすると、日本にいながらでももしかしたらそういうマインドが身につく可能性があります。
それが“教育”ですよね。親が多額の教育費を払って子供に教育を受けさせようとするのはそういうことなんですよね」
――そんな日本ですでに起業している起業家に期待することはありますか?
本田:「もちろん、期待しかしてないです。起業家がいなければ僕ら(VC)はいる必要が無いので。僕らは投資をさせてもらう側なので、主役であるファウンダーの人たちに壮大なビジョンを持って会社を作っていただくというところを全面的に期待しています」
様々な立場の有識者の考えを学ぶことで、社会問題を自分ごととして認識し、課題と向き合う。そんなマインドセットを備えることが、日本の閉そく感を打破するきっかけになるかもしれない。
このイベントの模様は、4月21日(日)あさ10時から放送予定の『BooSTAR –スタートアップ応援します-』(※一部地域を除く)の中でも紹介される予定だ。
※番組情報『BooSTAR – スタートアップ応援します-』
2024年4月21日(日)あさ10:00スタート、テレビ朝日系(一部地域を除く)
(月1回放送。不定期での放送となります)
※内容
いま注目のスタートアップにフォーカスした、今までになかったビジネストレンド番組がスタート!
2022年11月に経済産業省が「スタートアップ5か年計画」を発表。世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を育成支援するプログラム「J-Startup」が進行する中、スタートアップ企業の存在に注目が集まっています。番組では起業家や有識者をスタジオに招き、ひとつのテーマを軸にクロストークを展開。さらにミニコーナーではスタートアップを取り巻く最新事情や起業のハウツーを分かりやすく紹介していきます。
様々な切り口からスタートアップを分析することで、描き出される日本の未来の姿とは? いま注目のスタートアップ企業にフォーカスし、「一歩先の未来」を分かりやすく紹介する、今までになかったビジネストレンド番組です。
※4月21日放送内容:「渋谷で進行中!スタートアップ爆増計画」
第1回のテーマは「渋谷で進行中!スタートアップ爆増計画」。
渋谷はかつてシリコンバレーならぬビットバレーともよばれ、ITベンチャーがこぞって渋谷で起業した時代がありました。それから時を経て、渋谷は、スタートアップ企業が数多く集まる街に発展しつつあります。渋谷でスタートアップが生まれる理由はいったいどこにあるのでしょうか?
渋谷に本社をかまえ、お茶の生産や流通・販売の事業を展開する株式会社TeaRoom社長・岩本涼さん、渋谷でグローバル展開するスタートアップ企業を支援する取り組みをおこなっているシブヤスタートアップス社長・渡部志保さん、経営学者・入山章栄先生をゲストに迎え、それぞれの立場から渋谷とスタートアップ企業の関係性について掘り下げていきます。 ※司会進行:野村真季(テレビ朝日アナウンサー)