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竹内力、リーゼントで通した大阪の銀行マン時代。営業成績が良すぎて2年以上「辞めさせてくれなかった」

1986年、映画『彼のオートバイ、彼女の島』(大林宣彦監督)でデビュー以降、映画『彼女が水着にきがえたら』(馬場康夫監督)、『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)などに出演してきた竹内力さん。

長身で端正なルックスで人気を集めるが、Vシネマ、オリジナルビデオ作品をメインに活動することに。『難波金融伝・ミナミの帝王』シリーズ、『仁義』シリーズなど多くの作品に出演し、「Vシネマの帝王」と称される。

1997年に独立して自身の芸能事務所兼製作会社「RIKIプロジェクト」を立ち上げ、製作総指揮・企画・プロデュース作品も多数。最新オリジナル主演シリーズ『欲望の街』(U-NEXT)が2023年7月26日(水)から配信される竹内力さんにインタビュー。

 

◆担任の強烈な勧めで銀行に就職

大分県で生まれ育った力さんは、小さい頃から運動神経抜群。図画工作も得意で中学生時代には、技術の授業で作った木工作品が九州大会で銀賞を受賞したという。

「一応運動神経だけは良かったですね。体育大会とかは大体1位。あとは図画工作だけ。大工の息子なので血を受け継いでいるというか。それで今、映画の製作をしているというのは同じですよね。物づくりということでは」

-端正なルックスで目立ったでしょうね-

「まあ、それはしょうがない。親のせいです。俺のせいじゃない(笑)。でも、カッコいいとか言われるのはあんまり好きじゃなかったですね。気取っているヤツが嫌いだったから、気取って見られたくなかった。自分が嫌いな人間に自分がなるのは嫌だったんで。

幼稚園の頃とかに顔立ちがこうだから、『可愛い』って言われたりしたこともあるんだけど、それがイヤでさ。今の時代は、男の子も『きれい』とか『可愛い』って言われてうれしいみたいだけど、俺らの時代は『うーん、マンダム!』って、ヒゲが生えるのがカッコいいとか、そんな感じの時代だったじゃないですか、昭和は。

とくに俺なんかは、髪の毛は多いんだけど、手足に毛がほとんどなくてこんな感じ。脱毛も何もしてないのにツルツルでさ。オヤジなんてもっと毛がなかったから遺伝だよね。体質でヒゲも生えない。だから、余計ヒゲがカッコいいと思っていたんだよね」

-その当時、将来なりたいものは何だったのですか-

「何も考えてないですよ。単なるバカな息子だっただけ(笑)。だって、勉強もしないし、16くらいから単車に乗ってさ。原チャリから始まって、すぐに単車の免許を取って」

-高校卒業後、銀行に就職されたそうですね-

「それはもう担任が無理やり入れたという感じですかね。内申書を書き直して。イヤだったけど、そこに行かないと、『じゃあ、何をするんだ?お前』っていう感じで。『お前は普通の会社になんて入れないんだから』って担任に脅されて(笑)。

担任が銀行に入れてくれるってなって『そんなことできるわけねえじゃん。通るわけねえじゃん』って言っていたんだけど、内申書を書き直してくれたから入れただけで。『えーっ、入れるんだ』って(笑)。それで大阪が本店の銀行だけど、大阪の支店で働くことに。

就職先の候補の中で、給料が一番良かったのが都市銀行だったんだよね。給料、ボーナスも。これは仕送りができるから親孝行ができるなと思って、それで入ったんですよ。入ったら何とかなるだろうって思ったんだけど、何とかならなかった。

覚えることがいっぱいあって、勉強しなきゃいけないんですよ。色んな商品とか、これが何パーセントだからどうなってとか。俺はそんなの大嫌いだから『無理、無理、無理、無理』って(笑)」

-でも、覚えたのですか?-

「覚えないですよ。先輩とか同僚がやってくれた。俺は勧誘だけですよ。『いらっしゃいませー』って(笑)。八百屋。自分であれは八百屋だと思っていたんで。『おばちゃん、これ定期にしたほうがいいぜ』って九州弁でバーッて言って。

あとは粗品攻撃。5万でもおばちゃんが積み立てしてくれたらうれしいじゃないですか。それで、100万円の定期にしないともらえないような粗品の皿とかをさ、先輩に『裏の倉庫から持ってこい。どんどん持ってこい」って言って持ってきてもらっておばちゃんにあげて。

そうしたら、『あそこに行ったらいいもんがもらえるぞ』ってみんなが俺のところに並ぶようになって(笑)。それを“粗品攻撃”っていうわけ。みんなそこに釣られるんですよ。そんなの大量生産で作っているやつだからいっぱい腐るほど残っているんですよ。だから、『そんな出し惜しみしねえでバンバン配れや』って(笑)。

それをできるのは俺しかいないですよ。辞めるつもりだから怒られても平気だし、上司も自分の点数になるからうれしいじゃない。だから、『あいつをうまく泳がしておけば俺の成績になって俺が昇進できる』って、頭の中で思うようになったんだと思う。それで、何も言わなくなった」

高校時代からヘアスタイルをリーゼントにしていた力さんは、銀行でもリーゼントのままだったという。

「支店長にはずっと言われていましたよ。その度に『俺、辞めますから』って(笑)。でも、成績が良かったから辞めさせてくれなかった。そんなもんですよ、世の中は。2年2カ月辞めさせてくれなかったんだけど、最後までリーゼント」

-辞めて何をするのか決めていたのですか-

「いや、そんなことは何も考えてなかった。ただ、自由じゃない世界から飛び出したいなと」

※竹内力プロフィル
1964年1月4日生まれ。大分県出身。1986年、映画『彼のオートバイ、彼女の島』で俳優デビュー。映画『極道の妻たち』(五社英雄監督)、映画『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(三池崇史監督)、映画『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説』(宮坂武志監督)、『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)、『かっこいいスキヤキ』(テレビ東京系)などに出演。『闇の法執行人』(J:COMプレミアチャンネル)、『大馬鹿代(おおばかよ)』(J:COMプレミアチャンネル)など原案・製作総指揮・主演作も多数。最新オリジナル主演シリーズ『欲望の街』(U-NEXT)が2023年7月26日(水)から配信。

 

◆六本木へ単車ひとつで上京

2年2カ月間銀行に勤務し、辞めることができた力さんの送別会は17回も行われたという。退職した力さんは、大阪から大分の実家に戻ることに。

「銀行に入れてくれた担任が『俺が無理やりすすめて銀行に入れてしまった責任があるから、再就職先の世話はしてやるけ』って言ってくれたんで、安心して任せることにして。

でも、その前に東京見物、死ぬ前に一回は行きてえなと思ったんだよね。何でそう思ったかっていうと、田舎に戻ったときに、高校時代に俺もやっていたバンドの先輩が、たまたま東京から戻ってきていたんですよ、お盆で。

それで、会って何をしているのか聞いたら、六本木のライブハウスでバイトをやっているって言うんですよ。『六本木?本当かよ。有名じゃ六本木。どげえな?おもしれえか?』って聞いたら『おもしれえぞ』って言うから『本当か。いいなあ。俺も東京に行ってみてえなあ。大阪しか知らんけ』って言ったら『来りゃあいいじゃんか』って。

それで、携帯電話なんてない時代だからアパートの電話番号を聞いて行くことに。そうしたら『本当に来るのか?お前』って、だんだんイヤがられて。うるさかったから、俺。先輩にも結構好き勝手言っていたからさ(笑)。

それで先輩2人が中目黒で6畳1間に住んでいたんですよ。そこに俺が単車で乗り込んで行って。単車に乗りたかったから、銀行を退職したときのお金で単車を買って、残ったお金を腰に巻き付けて単車で東京に来たんですよ。

先輩のアパートに行くために目黒の高速道路を降りたら光化学スモッグがすごくてさ。『東京は空気が汚ねえのう。これが光化学スモッグってやつか』って(笑)。

それで中目黒の先輩のアパートに行ったら、先輩がめっちゃイヤがって、『お前、本当に来たんかよ』って。『とりあえずちょっと居させてくれや』って言って、東京に居る間暇だから、先輩に付いてライブハウスに行ってずっと飲んでいたんですよ。営業始まる前からずっと何時間も。そのうち掃除を手伝ったりとかしてさ。そうしたら『もう俺、このまま東京におろうかな』みたいな感じになって(笑)。

担任だった先生に『やっぱり俺しばらくこっちにおるわ』って電話して、その後、おとうに電話して、『もうしばらくこっちにおるわ』って(笑)。いつ帰るのか聞かれたから『わからん、わからん、もうわからんわ。気が向いたら帰るわ。先輩が、ここにおってくれって言うけ』って。先輩からは『もう早う帰れ』って言われていたんだけどさ(笑)。

6畳1間に男3人だから狭くてイヤがられていたんだけど、『もう引っ越そうや』って言って、今度は池尻大橋にある6畳と4畳半のアパートを借りたんですよ。そこで俺は4畳半、『俺の城や』って言って。自分の部屋が初めてやっとできたんですよ。先輩2人は6畳。『中目黒の6畳に2人で住んどったんだから一緒やん』って(笑)。

子どもの頃からそういう性格でやってきたから、結構図々しい性格なんですよ。でも、嫌われてないですよ。その代わり先輩を結構守っていたりするわけ。いまだに付き合いしていますから。小ずるいんだけど嫌われないというね。何かちょっと得な性格しているんですよ(笑)」

 

◆素人同然で映画デビュー

3人での生活が1年ぐらい経過した頃、力さんはアルバイトをしていたライブハウスでスカウトされて映画『彼のオートバイ、彼女の島』で俳優デビューすることに。

この映画は、信州にオートバイで一人旅に出た橋本巧(竹内力)が白石美代子(原田貴和子)と出会い、オートバイに興味を持った彼女と結ばれる様を描いたもの。大分からオートバイで上京した力さんとオーバーラップすると話題に。

-スカウトされたときはどのように?-

「芸能界に興味はもちろんありましたけど、『そのトサカ(リーゼント)みたいな頭はもう流行(はや)らんから、そんなのはやめろ』って言われて。飲食店のバイトもダメだということで、浜松町で荷物の積み降ろしのバイトをすることに」

-『彼のオートバイ、彼女の島』でデビュー、早かったですよね-

「早かったです。他の方はどんな人がオーディションを受けたのかわからないけど、角川映画にうまいこと転がり込んで(笑)。いまだに当時のプロダクションには感謝しています!」

-力さんとオーバーラップしましたよね-

「そうそう。それは覚えている。オーディションのときに、(大林宣彦)監督が『これは君のための役だ。ピッタリだ。君の話を聞いていると』って。俺もピッタリだなあと思いましたけどね」

-初めての映画出演で、それも主役。撮影はいかがでした?-

「めっちゃおもしろかったですよ。だって、銀行のときと全然違うからさ。『これが仕事?こんなに違うんかい?』って。机に向かって、お金の計算をしなくていいしね。

『これでセリフをしゃべっていれば金をもらえるのか。こんなんでスターになれるんだ』って思ったけど、実際はそんなに甘くなくてさ。でも、一応映画館で上映されたわけだから、うちの親は喜んで、『おやおや』って言っていましたよ(笑)」

-撮影で苦労されたことは?-

「もちろん、演技はほぼやってなかったんで、監督から言われても、やっぱりできないですよ、なかなかそんなのはね。

だけど大林監督は上手いんですよ。新人を育てるのが上手いじゃないですか、主役で。自分でお芝居をして、表情を作ってくれるんですよ。監督が『こういう表情で』、『こんな感じで』ってやってくれるんだよね。

俺はモノマネすりゃあいいんだから、モノマネ。監督の顔を見て、その通りに表情を作ったりとかして。セリフ回しとかは全然何もわからないですよ。だって、立ち位置もわかんないわけだから、ハッキリ言って。今思えば、よく使ったなあと思って。もっと子役から出ているような人を使ったほうがよっぽど楽なのにさ(笑)」

映画で主演デビューを飾った力さんは、映画『極道の妻たち』、『101回目のプロポーズ』、『難波金融伝・ミナミの帝王』シリーズなど話題作に出演することに。次回は撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

©2023 RIKIブランド

©2023 RIKIブランド

2023年7月26日(水)より『欲望の街 No.1 報復への道』、8月2日(水)より『欲望の街 No.2 闇のフィクサー』がU-NEXTで独占配信。
監督:萩庭貞明
出演:竹内力 田口トモロヲ 佐藤江梨子 山本裕典 竹原慎二 中野英雄

『難波金融伝 ミナミの帝王』シリーズ終了から15年。竹内力が大阪・ミナミに帰ってくる!殺人罪により9年の服役を終えて出所した男(竹内力)が、9年前の事件の報復を果たすため、暴力ではなく、法律で悪を裁いていくさまを描く。