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“世界初のバーチャルスイマー”はこうして生まれた。キャラデザイナー・PALOW. が語る、リアリティとキャラクター性のバランス

7月14日(金)の開幕後、アーティスティックスイミングでの金メダル獲得などで盛り上がりを見せている世界水泳福岡2023。7月23日(日)からは競泳のレースが始まり、日本選手たちの活躍にますます期待が高まる。

そんななか、日本代表とともに戦い注目を集めている一人の若きスイマーがいる。

そのスイマーの名前は、“速水永遠(はやみ・とわ)”。世界初のバーチャルスイマーだ。

彼女のCV(キャラクターボイス)を橋本環奈さんが務めていることでも話題になっている。

2001年、福岡で行われた世界水泳に登場したCGキャラクター・速水亜矢(はやみ・あや)の娘である速水永遠。

幼い頃から水泳を始め、世界水泳福岡2023を目指して日々練習に励む大学生で、得意な種目は自由形。そして、好きなものはとんこつラーメンと最速の魚メカジキだという。

そんな速水永遠のキャラクターデザインを手がけたのが、イラストレーターでありキャラクターデザイナーでもあるPALOW. 氏。このたび、PALOW. 氏に速水永遠誕生に込めた想いを聞いた。

◆福岡出身のPALOW. が抱く特別な想い

――今回世界水泳のバーチャルスイマーのキャラクターデザインの打診を受けたとき、どんな気持ちでしたか?

「感慨深かったです。福岡出身の自分としては、2001年大会の記憶がちゃんと残っていて。小さい頃に見ていた記憶にあるものに、大人になって関わらせていただくっていうのはすごくうれしいことだなと思いました」

――2001年の大会のときは、福岡にいらしたんですか?

「はい。多分中学1年生くらいだったと思います。

当時のことはよく覚えています。福岡市自体が「応援しようぜ」というムードになっていました。そして、『ultra soul』(B’z)がめちゃくちゃ流行っていました。

水泳という競技に多くの人の目が向いていたし、周りの友だちで、この大会をきっかけに水泳競技に興味を持った人が多かったなと思います。

それから、速水永遠の“母親”、速水亜矢(※)のPR動画もよく覚えていて、あのキャラクターの次の展開に、自分が関わらせていただけるのかと、とてもうれしい気持ちになりました」

※2001年の福岡大会で活躍したCGキャラクター、速水亜矢。俳優の深田恭子が声を担当し話題となった。

―― テレビでのPR動画の放送や東京駅の広告展開に、反響はありましたか?

「母はツイッターで知って、とても嬉しそうでしたし、地元の友人が結構連絡をくれたりしました。

(反響は)結構ありますね。自分のことを知ってくださっている人が世界水泳のPR動画を見て、『もしかしてこれはPALOW.さんが?』と聞いてきてくださることもあったりします。

広告についても今回出場される選手の方々と一緒に並んでいるのを見ると、光栄だなぁと思います」

◆リアリティの追求とキャラクター性のバランス

――キャラクターデザインをしていく上で苦労された点はありましたか?

「リアリティとキャラクター性の塩梅が結構難しかったですね。

水泳競技をやっている、アスリートの女の子という点が重要な部分だったので、最初はスポーティーな雰囲気かつリアリティに寄ったタッチで描いてみたんです。

でも描いた絵を見て、もう少しキャラクター性を強めた方がいいかなと思い、最終的には当初よりかわいらしい方向にまとまっていきました。

どの競技でもそうですけど、アスリートって競技によって体つきが違うんですよね。水泳は、たとえば背筋や肩にかっこよく筋肉がついている印象があったので、そのあたりは特徴として打ち出せるように気をつけました」

 

――今回は練習着や水着姿など、色々なバリエーションも制作したのですか?

「そうですね。たとえば持ち物だと、水に濡れても大丈夫なリュックサックを調べて描いてみたりしましたね。

水着のデザインも2種類作ったんです。実際の競技の規定に沿った水着と、少し見栄えを重視したデザインのもの。

キャラクターそのものも洋服も、キャラクター的なわかりやすさと、リアルな姿のバランスをとりながらデザインを進めていきました」

――普段着姿と水着姿のどちらもデザインされたんですね。

「普段と泳いでるときの姿のギャップも大事にしました。キャラクターの表情集も作ったんですけど、どんなにすごいアスリートにもプライベートあるんですよね。

そして、戦うときは、戦う顔になる。そのギャップがあればあるほど、キャラクターとして生き生きとするような気がしていて。

今回僕のイラストを、3Dのクリエイターチームがいい形でアニメーションにしてくださったので、このキャラクターの魅力がしっかりと伝わる仕上がりになったのでは、と思っています」

――動き出した速水永遠の姿を初めてご覧になったとき、どんな印象でした?

「泳いでいるのを見たとき、すごく嬉しかったです。

やっぱり最初からスイマーとしてデザインしてきたので、泳いでいるシーンを見たかったんです。PR動画はフォームもリアルでしたし、どのカットもすごく素敵なものになっていました。

とくに『ultra soul』を使った最終バージョンを見たときに、「やっぱりこれだよな」という感覚になりましたし、「いざ本番」という気持ちが沸き上がってきましたね。小さいときに刷り込まれた記憶ってすごいですよね(笑)」

◆キャラクターデザイナーの進化の先にあるもの

――最近は速水永遠のほかにどのような活動をされていますか。

「もともとはそのイラストレーターとしてゲーム業界や音楽業界を舞台に、アートワークを手がけてきたんです。それからキャラクターデザイナーとしても色々な媒体のキャラクターをデザインするようになりました。

そして、最近では僕が所属しているアーティストチーム「SSS」の展覧会をプロデューサーとして企画制作したりしています」

――活動領域がどんどん広がっていますね。

「そうですね。これからの活動として重要視していることのひとつが「人材育成」です。

先ほどお伝えした通り、自分が手がけていることが多角化してきたので、ひとりでやるだけではなくて、後進を育てながら色々なパートナーと一緒に実現していきたいなと思っています。

それから、もっともっとキャラクターデザイナーとしてできることが増えていくといいなとも思っています。僕のことをバーチャルシンガー・花譜のデザイナーとして知ってくださっている方が多いのかもしれませんが、そもそもはゲームのコンセプトメイキングやキャラクター開発などの素地があるので、わりと何でもできるというのが強みでもあります。

幅広い分野の企画に携わって、キャラクターデザインの側面からそのプロジェクトが実現したいことを後押ししたいなと思います。企画に寄り添いながら何かを創り出すことが結構好きで、だから作家的な活動だけでなく、クライアントワークもずっと続けていきたいんです。

自分が見ておもしろいと感じるか。自分の作ったものがどんな見方をしてもらえるのか、という点にはこだわっていきたいですね。効率性を重視するとルーチンになっていって、おもしろいことを見落としてしまうこともあるので、一見無駄に見えることも能動的にやってみる、ということがとても大事なことだったりします」

7月23日(日)午後2:50より放送の『世界水泳福岡 競泳開幕SP!』に速水永遠も登場することが予定されているが、バーチャルを超えて福岡会場でどんな泳ぎを見せてくれるのか注目したい。

※PALOW. 
キャラクターデザイナー・イラストレーター。

Forbes JAPAN 30 UNDER 30にも選出され最先端を走るバーチャルシンガー「花譜」をうみだし、アニメ・ゲーム・広告・音楽・出版など、幅広い業界でアートワークを手掛ける。

アーティストとしては、幾何学模様とファンタジーやSF的モチーフを組み合わせた作風で知られる。近年は展示会「Re\arise」をプロデュースするなど、多岐にわたって活動中。

※大会情報:『世界水泳福岡2023
【大会日程】2023年7月14日(金)~30日(日)
競泳は7月23日(日)~30日(日)、テレビ朝日系24局で8夜連続ゴールデン放送!

【アーティスティックスイミング】 7月14日(金)~22日(土)
【飛込】 7月14日(金)~22日(土)
【水球】 7月16日(日)~29日(土)
【オープンウォーター】 7月15日(土)~20日(木)
【競泳】 7月23日(日)~30日(日)
【ハイダイビング】 7月25日(火)~27日(木)

速水永遠 Twitter