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武尊、引退もよぎった“世紀の一戦”から1年。天国の祖母へ届けたKO勝利「もう一回勝つ姿を見せたかった」

武尊、引退もよぎった“世紀の一戦”から1年。天国の祖母へ届けたKO勝利「もう一回勝つ姿を見せたかった」

2023年6月24日、異国の地で世界戦に挑んだキックボクサー・武尊(31歳)。

1年ぶりの戦い、武尊には勝利を届けたい人がいた。

しかし、ここに至るまでには多くの苦難があった。

テレビ朝日のスポーツ番組GET SPORTSでは、1年ぶりの復帰戦に挑んだ武尊の激闘の舞台裏に密着した。

◆復帰戦へ懸ける想い

K−1のトップ選手として、長らく団体を牽引してきた武尊。

ところが昨年6月、那須川天心との世紀の一戦で敗北し、これを最後に無期限休養を発表した。

武尊:「試合負けた瞬間もう終わりだと思ったし、あの瞬間引退することを考えていた」

実に10年ぶりとなる敗戦に、引退の2文字もよぎったという。

そんな武尊の心を引き止めたのは一体何だったのか。

武尊:「THE MATCHの帰りの花道でたくさんの人たちが『ありがとう』って言葉を掛けてくれて、あの言葉があったからこそ、変わらず応援してくれてる人たちに、もう一回勝つ姿を見せたい気持ちにもなった。応援してくれてた人たちに最後負けた姿を見せて引退するのは違うのかなって」

ファンや自分を支えてくれた人たちに、もう一度勝利を届けたい。

そして何よりも、負けたままでは終われない。

一方で体は限界を迎えていたなか、痛めていた手や膝を手術し、よりパーフェクトな体を目指した。

こうした強い覚悟で復帰を決断。

その道のりをサポートしてきたのが、セコンドを務めるトレーナー・渡辺雅和だ。

渡辺トレーナー:「武尊の体はもう限界だったのもあったので、怪我もしていたし、手術するまではやめるつもりだった。でも大きなケガが治ったので、今までで一番強いと思います」

武尊:「14年間毎日一緒に練習して、僕が苦しいときに支えてくれたり、助けてくれるのは雅和さん。もう親でもないし、友達でもないし、師匠でもないし、ちょっとジャンルがないです。雅和さんというジャンルですね。本当にいなくてはならない存在です」

1年間のブランクを取り戻すべく、渡辺トレーナーと二人三脚で練習に明け暮れた。

復帰戦の舞台はフランス・パリ。

迎えた試合当日、しだいにボルテージが高まっていくなか、武尊はいつものコスチュームに身を包む。

実はこのパンツに書かれた「武尊」の文字には、強い思い入れがあった。

武尊:「おばあちゃんって僕の中ですごく大切な存在。だからこそデビューするときに、おばあちゃんが書道家だったので、『武尊って文字書いてパンツに入れたいんだよね』という話をして書いてもらって。デビューからずっと名前を書いてもらったやつで戦っている」

書道家だった祖母の道子さん。

武尊:「小さい頃とか、ずっとおばあちゃん家に行って。おばあちゃんに育ててもらったじゃないですけど、すごくたくさん面倒を見てもらって、かわいがってもらって、おばあちゃんからの愛で幸せに育てられたのはすごく感じている」

幼い頃から面倒を見てくれた祖母。武尊は試合で勝つたびに報告をしていた。

しかし昨年、祖母・道子さんは帰らぬ人に。

武尊:「最後に見た試合がTHE MATCHで、僕の負けた姿を見て亡くなっちゃったので、本当は死ぬ前にもう一回勝つ姿をおばあちゃんに見せたかった。そこがすごく心残りで、苦しさの一つでもあって」

◆激闘の先に…

亡き祖母のため、そして遥々かけつけてくれたファンへ勝利を届けるため、1年ぶりの復帰戦に挑んだ武尊。

相手はISKA王者ベイリー・サグデン。これまで一度もKO負けのない強敵だ。

試合開始のゴングが鳴り、武尊は出だしから前に出て攻めるがなかなかペースをつかめない。

そこにいち早く気づいたのはセコンドの渡辺トレーナーだった。

渡辺トレーナー:「武尊、楽しめ!」

その声に武尊から硬さが消えはじめる。

迎えた第3ラウンド、相手にボディが効きはじめる。

すると、サグデンから初めてダウンを奪う。

渡辺トレーナー:「気抜くな、頭しっかり!」

さらに左のミドルキックで再びダウン。第3ラウンドで、一気に試合が動いた。

武尊の勢いは止まらない。

セコンド陣も声を張りあげ鼓舞する。

渡辺トレーナー:「武尊、止めなくていい」

第4ラウンド、武尊がガードの下がった相手に勝負をかけるが、ここまでKO負けのないサグデンも耐える。

勝負は最終ラウンドへ。ここで武尊は戦術を変更する。

武尊:「パンチ入ってるんだけど、グローブが大きかったのもあるし、頭だと倒れないなって思って蹴りに切り替えて」

グローブがいつもより大きいため、パンチではなかなか相手は倒れない。そこで、キック主体の攻撃に。

その決断が大きく試合を動かした。

プレッシャーをかけ、サグデンをロープ側に追い込むと、武尊の強烈な左ハイキックが炸裂。そのまま劇的なKO勝利となった。

約2年ぶりの勝利をあげた武尊。

試合後には、安堵の表情を浮かべる。

武尊:「楽しい日々が帰ってきた。この1年はたくさんの人の期待を裏切ったし、応援してくれる人に喜んでもらうこともできないし、どこかに苦しさがあって、勝ったことでやっと乗り越えられた。

おばあちゃんも天国から見てくれていると思うので、いい報告ができてよかったなと思います。

世界一を目指すことは変わらないし、ここからまた全力でやっていきたいなと思っています」

動き出した世界進出への第一歩。

強さを求め続ける武尊の挑戦は始まったばかりだ。

※放送情報:『GET SPORTS
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

『GET SPORTS 井岡一翔&武尊 6月24日 同日タイトルマッチ 〜帰ってきた2人の王者〜』はABEMAで配信中!

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