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遠藤保仁、日本サッカー界“最高の頭脳”と称される極意「動いていないって言われますけど…」

テレビ朝日のスポーツ番組GET SPORTSでは、Jリーグ30周年を記念し、遠藤保仁と中村憲剛の対談を放送。

日本サッカー界を代表する2人がJリーグを語り尽くした。

テレ朝POSTでは対談の模様を全6回に分けて紹介。今回は、遠藤の日本一ともいわれる技術を徹底解剖。ボールを「止める・蹴る」極意を解説している。

◆「カーテンのようにトラップするイメージ」

これまで正確無比なパスで多くの得点を演出してきた遠藤。

ではパスを出す際、どんな技術を駆使しているのか? 同世代の松井大輔は、遠藤の卓越した技術について次のように語る。

松井:「ボールを止めるのが上手いです。やっぱり止めることができないと蹴られないので。超一流はボールがどんな状態でもしっかり止めて、蹴られるところにボールを置いている。試合の中でいつもそう。それがすごいんじゃないですかね」

パスそのものの技術ではなく、パスを出す前の「ボールの止め方」。遠藤はその「ボールを止める」技術について詳しく解説した。

中村:「僕けっこう“遠藤保仁マニア”だったので、プレーを何回も見たんですけど…」

そう言って中村は、遠藤がボールを受けるしぐさを再現してみせた。すると、その場で軽くジャンプしているのがわかる。

遠藤:「確かに、それは散々言われてきた」

中村:「たぶん無意識だと思うんですよ。だから、ボールを止める時に力を入れるのか、リラックスしてやるのかというと、リラックスになる。脱力」

ボールを止める際、余計な体の力を抜くため無意識のうちにおこなっている。さらに、ボールを受ける右足には、ある独特なイメージを重ね合わせているという。

遠藤:「僕はトラップする時は、カーテンのようにトラップするイメージ。分厚いカーテンに思いっきりボールをぶつけてもフワッて下に落ちるでしょ。それをイメージしている。どちらかというと、吸収型タイプ。自分からボールを受けにいかない。

極端な話、前でトラップしたら、(ボールは)そこから後ろに行くことはない。絶対前に行くけど、前に行きすぎたらプレーしづらくなる。後ろでトラップすれば、勝手にボールは転がる。ジャンプしながら、引くようなトラップになっているはず。カーテンのようにトラップするというのは小さい頃から意識している」

ボールを受ける際、右足を後ろに引くことで勢いを吸収。するとボールは自然に蹴りやすく、目の前に転がっていく。ボールを目の前にトラップすることで、正面や横など自由自在、どこでも蹴ることができるという。

これぞ、長年に渡り培ったパスの「極意」だった。

◆「目は大事だと思ってる」

さらに、「ボールを止める前」の動きにも極意があるという。

中村:「ヤットさんよく首を振るじゃないですか。その時何を意識されているんですか?回数ですか?見るものですか?」

遠藤:「とにかく目から(情報が)入ってくるので、周りを見ることも大事だし、視野をどれだけ広げられるか。極力ボールを見ないで周りを見られれば一番いい。(パスコースを)見たら相手に読まれるので」

中村:「目?」

遠藤:「そう、情報はほぼ目なので。ギリギリまで周りを見られるかっていうのと、ギリギリまでボールを見ないで蹴られるかが勝負」

中村:「では、止めると蹴るは一緒なんですね」

遠藤:「俺の中では一連の動作」

重視しているのは、ボールを受けるまでの間。ボールではなく、周りを見ること。フィールドに視線を向け、味方や敵の動きを観察することで、ベストなプレーを選択できるという。

では、そうした瞬時の観察眼はどうやって鍛えたのか?

中村:「やっぱりものを見る時間って長ければ長いほどいいですよね?」

遠藤:「もちろん」

中村:「それを意識して行きついたのが、引いて懐で(トラップ)ですか」

遠藤:「そう。引いたり、(ボールを)見ないでトラップするとか。間接視野でトラップする練習(をしている)」

中村:「見ないでトラップする練習もしていたんですね」

遠藤:「リフティングとかもボール見ないで。アップ中とかに」

中村:「ああ、やってましたね!」

遠藤:「俺試合のアップ中にリフティングするけど、あれはただ(リフティングを)しているんじゃなくて、相手の動きを見ながらリフティングしている。意外に遊びだと思われるけど、“見る”練習をしているの。見ながら間接視野でリフティングしている」

中村:「目を鍛えなきゃダメってことですね」

遠藤:「そう。俺は目は大事だと思ってる。最終的には、自分の近くにプレッシャーがそんなになかったら、下を見なくてもボールを止められたらプラスじゃないって思っちゃう」

僅かな時間で周囲の動きを見る技術が凝縮されたプレーがある。ブラジルワールドカップ出場をかけた最終予選のヨルダン戦。

1対0で迎えた前半21分。遠藤がゴール前に走りこんだ本田にダイレクトパスを送り、2点目をアシストしたシーンだ。

中村:「あのシーンを解説してもらっていいですか? この時にボールとどこを見ていたんですか?」

遠藤:「ここに来るまで時間があって、周りを見る余裕があったなかで、岡崎(慎司)の背後のスペースがあるとわかっていた。誰かが走れればと思っていたし、もし何もなかったら自分がトラップしようかなという選択だったと思う。自分に(ボールが)来るまでに本田が走り出してくれたので(スルーパスを選択した)」

遠藤はボールを受けるまでの間、本田が走り込んだ姿を確認。空いたスペースにパスを出していた。

◆「動いていないって言われますけど」

さらに中村が注目したのは…。

中村:「ヤットさんスピードがまったくの0ですよね」

遠藤:「うん、0。立っているだけだもん」

中村:「ヤットさんがパスを出す時って0の時が多いんですよ。それは何でですか?」

遠藤:「止まっているほうがミスが少ないから。それだけ。だからボールが来る前に予測して動く。止まっている風に見えると思うんですけど」

ボールが来る位置を予測し先回りしたことで、パスを出す直前はほぼ止まっている。だからこそ、正確なパスにつながっていたのだ。

遠藤:「運転も徐行した方が事故が起こりにくい」

中村:「ヤットさんの運転の話でずっと聞きたかったことがあるんです。都市伝説みたいな話があるじゃないですか。“ヤット渋滞” 」

遠藤:「あるね」

中村:「それは今のヤットさんの考えから生まれてくるものだということですね?」

遠藤:「そう!事故して時間がかかるより、間に合うんだったらそれでよくないって」

中村:「それは今も?」

遠藤:「今も変わらず。それと一緒で、トップスピードや8割のスピードではボールを触らない。1~2秒先に動いて6割のスピードでボールを扱ったほうがプレーの精度は絶対落ちない。それを意識して動いてる。動いていないって言われますけど」

中村:「ヤットさんが動いていないと言われることは、逆に言えばそれまでにもうケリをつけていると」

遠藤:「自分の中ではその感じで動いています」

中村:「しかもこのプレー、(本田が)ゴールしてるので正解じゃないですか」

遠藤:「うん、それを別に伝えたいとは思わないけど。せっかくなんで言っとくわ」

中村:「伝えてください(笑)」

“日本サッカー界最高の頭脳”遠藤の技術は、ボールを極力見ず、周りを見ること。そして正確なパスを出すため「止まる」ことにあった。

遠藤保仁×中村憲剛対談、次回は、2人が「海外移籍」についての本音を語る。

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)