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高樹澪、大ヒット曲・映画主演…80年代の大活躍の前に意外な経歴。一度就職した先では「モラハラ、パワハラ、セクハラ…」

1981年、映画『モーニング・ムーンは粗雑に』(渡辺正憲監督)で女優デビューし、映画『チルソクの夏』(佐々部清監督)、『スチュワーデス物語』(TBS系)、『ウルトラマンティガ』(TBS系)など多くの映画、テレビに出演してきた高樹澪さん。

大きな瞳とエクボが印象的な美貌と艶やかなロングヘアで人気を集め、1982年には3rdシングル『ダンスはうまく踊れない』が大ヒットを記録。歌手としても活躍。

2003年、片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)を患い、2004年から芸能活動を休止し、2009年に復帰。『みんなの家庭の医学』(テレビ朝日系)で病気について明かして話題に。

復帰後、映画、ドラマ、舞台に出演。2023年6月23日(金)には映画『アトのセカイ』(天野裕充監督)が公開される高樹澪さんにインタビュー。

デビュー当時(事務所提供)

◆引っ込み思案を心配した母親が劇団へ

福岡県で生まれた高樹さんは、2歳のときに北海道に引っ越し、4歳からは神奈川県横浜市で暮らすようになったという。

「小さいときはほとんど何もしゃべらない子どもだったので、母がすごく心配して、小学校2年生のときに『劇団いろは』に入ることになりました。そのときはあまり子どもがいなかったということもあって『柔道一直線』(TBS系)など、結構ドラマ出演が多かったです」

-お芝居はすんなりできたのですか-

「とんでもないです。最初は声が一つも出なくて(笑)。『ヒーッ』って引きつっているような感じでしたけど、だんだんお友だちもできたりして慣れていきました。

でも、やっぱり大人の世界じゃないですか。どっちかというと、子どもは名前で呼ばれることもなかったし、朝がたまで撮影して車で送ってもらえるんですけど、私は横浜だったので、都内の他の子たちを先に全部送ってから最後に帰ることになるんです。

だから朝4時半くらいに帰って、2時間か3時間くらい仮眠したら小学校に行って、結局早退してまたテレビ局に行くという感じでした。大人になってからは出たことないんですけど、大河ドラマにも出ていました(笑)」

-子役をされていたのはいつ頃までですか?-

「小学校6年までです。中学生になると勉強の内容も違ってくるので少し休みたいと。でも、なんとなく人前に出る癖みたいなものがあったので、16歳のときから2年間グラビアや雑誌、カタログなどのモデルをしていました」

-高校卒業後、銀行に就職されて-

「はい。1年と1カ月だけだったんですけど(笑)。昔はどこでもそういうことはあったと思いますが、モラハラ、パワハラ、セクハラ…とてつもなかったです。胸が大きかったので女性に意地悪はすごくされました。

仕事は教えてもらえないし、『教えてください』と言うと黙ってしまって1日中一言も言ってくれないし、教えてもらえない。そりゃあもう辞めるしかないですよね(笑)。もちろん良くしてくれる人もいたんですけど」

-高校を卒業したとき、芸能界で仕事をしようとは考えなかったのですか?-

「全然。どちらかというと、世の中のことをあまり把握していなかったものですから、退職した後、貯めていたお金でアメリカに渡って、アメリカの映画業界でスタッフの仕事をしたいと思っていたんです。

米軍の子どもたちがすぐそばにいて、4歳くらいからその子たちと遊んでいたので日常生活には問題なかったんですけど、実際にアメリカへ行ったらどこの馬の骨ともわからない女の子が(映画業界に)入れるわけがないんですよね(笑)。バイトする場所もないみたいな感じで。

働くところを探したんだけどなくて、イギリスに行こうと思って行ったら、アメリカよりもっとなくて、これはダメだなあって(笑)。ビザがなければ働けないという知識もなかったんです。お金もなくなってきたし、1カ月半くらいで帰って来ちゃいました」

※高樹澪プロフィル
1959年12月31日生まれ。福岡県生まれ。1981年、映画『モーニング・ムーンは粗雑に』で女優デビュー。挿入歌『恋の女のストーリー』も歌唱。映画『無力の王』(石黒健治監督)、映画『となりのボブ・マーリィ』(大鶴義丹監督)、『HOTEL』シリーズ(TBS系)、舞台『袖屏風』などに出演。『ダンスはうまく踊れない』が大ヒットを記録し、歌手としても活動。『11PM』(日本テレビ系)など幅広いジャンルで活躍。片側顔面痙攣で5年間芸能活動を休止し、2009年に復帰。2023年3月に映画『宮古島物語 ふたたヴィラ』(上西雄大監督)が公開。6月23日(金)には映画『アトのセカイ』の公開が控えている。

 

◆芸能事務所のマネジャーになるはずが女優に

海外で映画スタッフになることを諦めた高樹さんは、日本でスタッフになろうと思い、芸能事務所に応募したという。

「当時の社長は、ダブルのスーツに黄色のレイバンのサングラスで、怖い方みたいな感じだったんです。こんな事務所だったら、すぐに逃げなきゃって思ったんですけど、すごくいい人で、『私はマネジャーになりたいんです』って言ったら、『とりあえず事務員からやってみない?』って言われて。

それで、事務員として働いて3カ月ぐらい経ってから、急に『オーディションがあるんだけど、女の子がいないから代わりにちょっと見に行ってみない?』って言われたんですけど、お化粧もしていないし、GパンにTシャツだったんですよ。でも、そのほうがいいんだよって言われて行ったんです。

そうしたら、当時有名だったモデルさんたちや女優さんたちがいっぱいいて、『こんなきらびやかなところに私が行っていいのかな』という感じだったんですけど、気づいたら残されていて(笑)。

『台本を覚えて』って言われて『覚えなくちゃいけないんですか?』って聞いちゃったんですよ。そうしたら『覚えられるだけ覚えて。残りたいでしょう?』って言われて。『えっ?残っているのかな?』って思ったんですけど、結局私じゃなくて、他の方が先に決まったんです。

ところが、その方が降りちゃったらしくて、それでまた急遽、1週間後に私が呼ばれて、やる気があるのか聞かれたんですけど、やる気があるとかないとか、そういう話じゃないんだけど、とりあえず『勉強のためにやってみたいです』って言ったら、やりましょうという話になって、『ミオ』という名前も付けてもらえたんです」

映画『モーニング・ムーンは粗雑に』は、横浜を舞台に、ふとしたことで出会った青年と女子大生の一日を描いたもの。高樹さんは、自作の歌を妻子あるアメリカ人の恋人にプレゼントするために音楽祭の予選に応募したヒロイン・ミオ役。1位で予選を通過するが音楽祭出場を辞退し、録音テープを受け取って成田空港に向かうことに。

-挿入歌も歌っていますが、オーディションのときには歌もあったのですか?-

「ありました。私は洋楽ばかり聞いていたので、日本の歌は『長崎は今日も雨だった』しか知らなかったんです。それで一応歌ったんですけど、弾く方もいやになっていたし、歌えないし、もうダメだって(笑)。

そのときに初めてわかったんですけど、桑田(佳祐)さんがスタジオに降りてきて、ギターをポロンって鳴らして、『この音出せる?そうそう、じゃあね、恋をしている女のストーリー~って歌って』って『恋の女のストーリー』(挿入歌)を作ってくださって。

『今ちょうどレコーディングをしているから、ちょっと録音してみようか』って言ってくださってカセットに録ったんです。

それで、そのテープをアミューズの事務所でずっと流していたら、『誰の声だ?』という話になって、オーディションを受けに来た子だとわかって、レコードにという話になったみたいです。やっぱり桑田さんがすごいんですよね」

-妻子ある外国人を好きになるのですが、あまりパッとしないおじさんで-

「そう。何か普通すぎますよね(笑)。多分その人が好きというよりも、男性は早く童貞を捨てたくて、女性は処女を…という感じで、早く大人になりたかったということなんでしょうね。」

-予選を1位で通過してデビュー間違いなしと言われても欲がなくて-

「そうなんですよね。きちんと録音したテープをもらうことができるから、それを彼に渡したくて予選に参加しただけということなので、すごいなあって。思い出深いですね。

アメリカから帰国した彼は奥さんと幼い子どもも一緒で。成田空港でなんとなく現実と自分の思い描いていた夢は違うんだなって知ることになるんですけど。でも、19から20歳になる頃の女性って、あんな感じなのかなって思います」

-そのあと『無力の王』のヒロインに-

「はい。それもまたちょっと変わった女子大生の役で。撮影はほぼ同時進行でした。同じ横浜が舞台で。私も横浜で育っているので、なんとなく横浜臭がしたんだと思います(笑)」

 

◆『ダンスはうまく踊れない』が大ヒットに

デビュー翌年の1982年、高樹さんは3rdシングル『ダンスはうまく踊れない』が大ヒットとなり、歌番組にも多数出演。さらに『スチュワーデス物語』、『11PM』、映画『凶弾』など出演作品が続くことに。

-『ダンスはうまく踊れない』が大ヒットして、昔は歌番組も多かったので大変だったでしょうね-

「そうですね。それはすごかったです。私は家が遠かったので、その頃も東横線で通っていたんです。車だと港北インターのあたりだとか絶対に混む道なので、車よりは電車という感じで。

でも、渋谷駅の改札でワーッと囲まれて髪の毛をバリバリパリッてむしられたことがあって。あれはすごい集団心理ですね。今だったらそういうことはあまりないと思いますが。

当時は黒い洋服が流行り出す前でしたから、女性が黒い洋服を着るのが稀(まれ)だったんですよ。それで、黒い夏用のマントを羽織って東横線に乗っていたら、前の座席に座っている親子のお父さんのほうが、小さい声で子どもに『見てごらん、大きなカラスがいるね』って言っているのが聞こえてきて、『ウワーッ、カラスなんだ』って(笑)。そういう時代でしたね」

 

◆『スチュワーデス物語』の劇中で長い髪をバッサリと…

スチュワーデス訓練生たちの青春をドキュメンタリータッチで描いたドラマ『スチュワーデス物語』では、優等生でおとなしい性格だがしっかり者で面倒見がいい石田信子役。第3話では訓練生の決まりということで、婚約者のために伸ばしていた長い黒髪を実際にバッサリと切るシーンも。

-ドラマの中で長い髪をバッサリ切られて-

「はい。しかも裁ちばさみですよ(笑)。私は今も短いんですけど、どっちかというと切りたくてしょうがなくて。イメージ的に伸ばしていただけだったので。

いろんなことにチャレンジしたいほうだったから、そういう意味では『髪の毛を切ります』と言われたときには『やらせてください』ってすぐに言ったんですけど、まさか裁ちばさみで切るとは思わなかったです(笑)」

-撮影をしているので失敗はできないですしね-

「そうですね。一応美容師の先生にやってもらったので失敗はしないですけど。野添和子さんという有名なプロデューサーの方が、『もうちょっと上、もっと切って』と言っている声が聞こえてきておもしろかったです」

-髪の毛が短くなった姿を見ていかがでした?-

「ちょっとワクワクしました。すごくうれしかったです。ただ、ものすごく不評でした(笑)。ものすごくブーイングが多かったです」

-ロングヘアのイメージがありましたからね-

「そうですね。いまだに言われます。『何で髪の毛そんなふうにしちゃったの?』って(笑)。この年齢で髪の毛を伸ばしていると、似合っている方はいいんですけど、私はすごく老けるんですよ。白髪もそれなりにすごくありますし。あと自由がきかないんですよね。

まとめるしかないので、そういう自分じゃない、自分っぽくないのは私じゃないなと思っているので、今のほうがすごく私らしいというか。洗うのもすごく楽ですし(笑)。

シャンプーをしたあとに乾かさないのが私流なんです。乾かさないと髪には良くなかったらしいですけど、私は髪の毛が丈夫すぎてキラキラとハレーションを起こすんですよね。だから『高樹さんの頭には照明を入れないで』って言われるくらいで、照明が当たると髪の毛が銀色に光るんですよ。ゴキブリみたいな感じ(笑)」

-さらさらのロングヘアに憧れている女性ファンも多かったですからね-

「あのときはちょっとだけ流行(はや)りましたね」

-かなりハードな毎日だったと思いますが-

「『11PM』という番組の金曜日の司会をやっていたのですが、『スチュワーデス物語』の撮影は、羽田空港が土日はわりと離発着がちょっと少ない場所があって、そこを使わせてもらえるというので、金曜日は絶対に寝ない日でした。

『11PM』が終わって横浜に帰って、すぐに『スチュワーデス物語』の撮影に入るので。ほかにもいろいろやっていたので、週のうちの3日間ぐらいは寝ないという感じでした」

-昔は27時(午前3時)終了で午前7時開始というようなこともありましたしね-

「ありましたよね。それでフィルムの時代なので、だいたい26人主要の子がいるんですけど、26人全員入れるんですよ。冬に夏のシーンを撮っていたんですけど、『半袖の下に着ているのをみなさんやめなさい』って言われて、みんな脱いで。それでずっとやっていたら、『後ろの山の雪をどけて』っていう話になって(笑)」

-当時のドラマの撮影は本当にハードでしたよね-

「はい。とくにフィルムだったのでなおさら。『そこ、ちょっとでも動くと、もう入れないよ』みたいなことでカメラマンさんにも怒られたりするので。まあ、なかなかいい経験でした。

先輩、たとえば風間杜夫さんとかも休まないんですよ。あんなに忙しい方なのにすごいなあと思って。『スチュワーデス物語』の中ではメインでずっとやっているのに、嫌な顔一つしないというのはすごいなあって。そういうすごくいい先輩がたがいっぱいいたので、いい時代だったなあって思います」

『HOTEL』シリーズ(TBS系)、『ウルトラマンティガ』、映画『チルソクの夏』など仕事は順調だった高樹さんだったが、1997年に異変が。片側顔面痙攣を発症し、2004年に休業することに。

次回は撮影エピソード、闘病の日々も紹介。(津島令子)

2023 SEIGI

※映画『アトのセカイ』
2023年6月23日(金)より池袋シネマ・ロサにて1週間限定ロードショー(ほか全国順次公開)
配給:グランピクス
監督:天野裕充
出演:土田卓弥 石崎なつみ 永嶋柊吾 三浦和也 川添野愛 高樹澪
恩師の死をきっかけに高校時代の仲間が集まった通夜振る舞いの席で、内に秘めていたそれぞれの思いが吹き出す。巷では未知のウイルスが蔓延していく。そして彼らは現実に気付くことに…。

※mio+sara『高樹澪と吉村沙羅と歌仲間』
2023年6月24日(土)
賢島ホテルベイガーデン
17:00開場 18:00開演
事務所の後輩【吉村沙羅】の地元である三重県志摩市にある賢島ホテルベイガーデンで、三重県出身のゲストとおいしい料理・お酒を楽しみながらのトーク&ライブ。日常から少し離れて、賢島の穏やかな自然と皆さまとともに、これからの明るい未来に乾杯!