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貫地谷しほり、3度目の挑戦で掴んだ朝ドラ主演。プロデューサーに言われた「今まで受からないでくれて、ありがとう」

2004年、映画『スウィングガールズ』(矢口史靖監督)で注目を集め、2007年の連続テレビ小説『ちりとてちん』(NHK)で初主演を務めた貫地谷しほりさん。

2013年の初主演映画『くちづけ』(堤幸彦監督)では第56回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)、映画『夕陽のあと』(越川道夫監督)、舞台『頭痛肩こり樋口一葉』など多くのテレビ、映画、舞台に出演。

『アストリッドとラファエル 文書係の事件録』(NHK)で「第17回声優アワード」外国映画・ドラマ賞を受賞するなど、ナレーター、声優としても活躍。2023年6月30日(金)に主演映画が公開される貫地谷しほりさんにインタビュー。

 

◆学校帰りに新宿駅のホームでスカウト

東京で生まれ育った貫地谷さんは、『霊幻道士』シリーズのキョンシーのマネをしたりする明るい子どもだったという。

「変な踊りをしたり、キョンシーのお札を額に貼られたら、ピタって止まるみたいなお調子者の子どもだったみたいです(笑)」

-芸能界にということは?-

「考えていませんでした。興味がないということではなくて、考えたことがない世界というか。スカウトされて、急に目の前にそういう選択肢があるんだと知った感じです」

-中学2年生のときに新宿駅でスカウトされたそうですね-

「はい。『もしよかったら連絡ください。事務所にぜひ遊びに来てください』という感じで名刺をいただいたんですけど、きれいな女性だったので、怪しいともなんとも思わず(笑)。

学校の帰りだったので友だちと一緒だったし、下校している同級生もいっぱいいたので、『しーちゃんがスカウトされている。ワーッ』みたいな感じでした(笑)」

-家に帰ってご両親に相談されたのですか-

「はい。『お前がスカウト?嘘だろう?』みたいな感じでした(笑)。親は最初反対だったんですけど、母も若い頃スカウトされたことがあったみたいで。母は祖母に反対されて断念したので、『興味があるんだったらやってみたら?』って背中を押してくれて。私の通っていた学校は芸能活動禁止だったので転校しました」

-演技のレッスンにも通われていたのですね-

「はい。オーディションに全然受からなくて(笑)。歌手とかモデルは、背が高いとか、もっている要素がすごく大きいので、今から伸ばせるとしたら演劇なのかなと思って、演技のレッスンに行きはじめました。3年くらい行っていたと思います」

-だから、お芝居がしっかりしているのですね-

「いえいえ。でも、その先生はすごくおもしろくて、お芝居とか発声を教えてくれないんですよ。半年に1回、舞台形式で発表会があって、それも岸田國士さんとか、わりとテーマがわかりにくいものを選んでやるんです。

先生は演技に関して『あまりにおかしかったら言うから、とにかく自由にやってみろ』という感じで。

お芝居を教えてもらったというよりも、ディスカッションですね。当時『911』があったので、そこから1カ月間はずっとみんなで『なんでこういうことが起きたと思う?』とか、そういうことを話し合っていました。

あと、『君たちはまだ若くて観る目が養われてないから、50年経っても、名作と言われているものを観なさい』って言われて、チャップリンを観たり…そういうことを教えてもらった感じです」

※貫地谷しほりプロフィル
1985年12月12日生まれ。東京都出身。2002年、映画『修羅の群れ』(辻裕之監督)で映画デビュー。映画『スウィングガールズ』(矢口史靖監督)、映画『夜のピクニック』(長澤雅彦監督)、『H2~君といた日々』(TBS系)に出演。2007年、連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインに抜てきされ、同年、『キミ犯人じゃないよね?』(テレビ朝日系)と『あんどーなつ』(TBS系)に主演。2010年、舞台『余命1ヶ月の花嫁』で舞台初主演。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)などナレーション、声優としても活躍。2023年6月30日(金)に主演映画『オレンジ・ランプ』の公開が控えている。

 

◆映画『スウィングガールズ』の合宿でトランペットの猛特訓

2004年に公開された映画『スウィングガールズ』は、東北地方の田舎町でジャズに魅了され、ビッグバンドを結成した田舎の女子高生たちの奮闘と成長を描いたもの。貫地谷さんは、トランペット担当の斉藤良江役を演じた。

「オーディションが何度もあって、決まった人からどんどん練習に合流するんですけど、やっと決まってすごくうれしかったです」

-同年代の女の子たちがいっぱいいましたね-

「はい。やっぱり10代って目指している子もたくさんいるので、オーディションには、その世代のいろんな子が来ていました」

-多くの女の子が出てくるなかでも、ちょっとおませで目立つキャラでしたね-

「ありがとうございます。すごくうれしかったです。あんなに出番がある役は初めてだったから、台本にいっぱいセリフがあるのがうれしかったです(笑)」

-合宿もあったそうですが、どんな感じでした?-

「『とにかく楽器を吹けるようになる』という合宿でした。メインの5人はみんな初めての楽器だったので、すごく苦戦して、いつも本仮屋ユイカちゃんと励まし合いながらやっていました。2人が居残り組だったんです(笑)。なので、いつも2人で『頑張ろうね』って言ってやっていました」

-撮影は順調でした?-

「順調だったと思います。みんなで合宿とか、初めてのこともたくさんあったので、楽しかったですけど、めちゃくちゃ難しかったです。トランペットはとくに難しかったですね。

私は今までトランペットもそうですけど、落語とか三味線など、演じる役でやったものは一気に詰め込まなきゃいけないから、もう二度とやりたくないみたいな感じになってしまって(笑)。

落語も朝ドラ以降全然聞いてなかったですし、トランペットも『スウィングガールズ』以来吹いてないんです。去年、テレビ番組で落語を朝ドラ以来、初めて聞いたんです。いろんなことを思い出して涙が出ました(笑)」

 

◆縁がないと思っていた朝ドラのオーディションに挑戦

貫地谷さんは、2007年~2008年に放送された連続テレビ小説『ちりとてちん』に主演。これは、小浜(福井県)で生まれ育ったネガティブ思考のヒロインが、大阪で上方落語と出会い、落語家の徒然亭草若(渡瀬恒彦)に弟子入り。修業を経て成長していく様を描いたもの。貫地谷さんが朝ドラのオーディションを受けるのは、3回目だったという。

「2回オーディションに落ちていたので、朝ドラはもう縁がないんだろうと思っていました。その頃、いろいろ映画などにも出させてもらっていたので、『別にやらなくていいのではないか』って思っていたんですけど、チーフマネジャーに『最後のチャンスに受けよう』って言われて受けたら受かりました(笑)」

-ヒロインにピッタリでしたね-

「ありがとうございます。決まったときは本当にうれしかったです」

-朝ドラはかなり何度もオーディションがあると聞きましたが、いかがでした?-

「最終オーディションでカメラテストがあって、セットが組まれていてセリフを渡されてやるんですけど、 モニターチェックをしているときに、プロデューサーさんに『今まで受からないでくれて、ありがとう』って言われて。『これで落ちたらすごいショックだなあ』って思ったのを覚えています(笑)」

-聞いた瞬間、受かったと確信したでしょうね-

「ちょっと期待はしましたけど、マネジャーに『最終オーディションがもう1回あって、大阪に行かなきゃいけないのよ。しかも白い服指定で』って言われたので、『受かったんじゃないですか?』って聞いたら『そんなこと言うものじゃないの!』ってすごい怒られて(笑)。

マネジャーは、スケジュールを押さえなきゃいけないので、受かったことを知っていたんです。それで大阪に行ったら、『10月からの朝ドラのヒロインあなたにお願いします。明日会見です』って言われて、『あっ、やっぱりそうなんだ』って(笑)。

親だけには報告したんですけど、すごく喜んでいました。そのあといろんな方が本当に喜んでくださって、良かったなあって。『どうやったら貫地谷は売れるんだろう?』みたいなことを考えてくださっている方がたくさんいたので(笑)」

-決まってからの日々はどんな感じでした?-

「セリフもですけど、三味線、落語…とにかく覚えなきゃいけないことがたくさんあって。『朝ドラってこんなに?』っていうぐらい、いっぱい撮るんです。

1日中ずっと泣きっぱなしのシーンが続いたり、かなりハードでしたけど、当時は全然平気だと思っていました。

2019年に12年ぶりに朝ドラ(『なつぞら』)に出させていただきました。そのときに(広瀬)すずちゃんに『大丈夫?寝てる?』って聞いたら『全然大丈夫です』ってサラッと言っていて、私もこんな感じだったんだろうなって思いました(笑)」

-『ちりとてちん』の放送が始まって、周囲の反応も大きく変わったでしょうね-

「役名で呼ばれたり、タクシーに乗ると『あれ、朝ドラの子やろ?』みたいなことを言われたりしたので、認知されていくうれしさはありました」

-落語の師匠・徒然亭草若(三代目)を演じた渡瀬恒彦さん、ステキでしたね-

「めちゃくちゃカッコ良かったです。本当に渡瀬さんにはたくさんお世話になりました」

-渡瀬さんが貫地谷さんのことを『女優になるために生まれてきたような子。頭が良いしタフ。感受性も豊かで表現が適格。私のライバルです』とおっしゃっていたそうですね-

「とてもうれしかったです。本当にオーディションに落ちてばかりで受からなかったので、そうおっしゃっていただいてすごくうれしかったです」

-渡瀬さんとは、『おみやさん』(テレビ朝日系)でも共演されていましたね-

「渡瀬さんは私のことを親戚の子みたいに思ってくれていたのですかね。私が『おみやさん』の前のシリーズにゲストで出させていただいたとき、私のシーン撮影場面で他の出演者の方に『お前見たか?今のシーン。この感情のもっていき方だよ』って言ってくださって。すごく恥ずかしかったのは覚えています(笑)」

-『ちりとてちん』ではお師匠さんと弟子の関係でしたけど、弟子を見守る眼差しに愛があって温かくてすてきでした-

「渡瀬さんは本当にステキな方で、いつお会いしても“師匠”という感じでしたね。渡瀬さんとの共演は、私にとってご褒美をいただいているような特別なものでした」

『ちりとてちん』で広く知られることになった貫地谷さんは、同年、『キミ犯人じゃないよね?』と『あんどーなつ』に主演。第32回エランドール賞新人賞を受賞。若手実力派として注目を集めることに。

次回は、主演ドラマ『あんどーなつ』、第56回ブルーリボン賞最優秀主演女優賞を受賞した主演映画『くちづけ』の撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:ICHIKI KITA
スタイリスト:mick(Koa Hole inc.)

©2022「オレンジ・ランプ」製作委員会

※映画『オレンジ・ランプ』
2023年6月30日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
配給:ギャガ
監督:三原光尋
主演:貫地谷しほり 和田正人
出演:伊嵜充則 山田雅人 赤間麻里子 赤井英和 / 中尾ミエ

39歳で若年性認知症とされながら、10年後の現在も会社勤務を続けつつ、認知症本人のための相談窓口の活動や自身の経験を語る講演などを行っている丹野智文さんの実話をもとに、夫婦の希望と再生を描く。39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された只野晃一(和田正人)は、妻・真央(貫地谷しほり)と2人の娘を抱え、不安に押し潰されそうになる。しかし、ある出会いをきっかけに真央と晃一の意識に変化が訪れる。やがて2人を取り巻く世界もまた、変化していき…。