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『星降る夜に』第5話、ディーン・フジオカの魅力が猛威をふるう。傷ができるほど色っぽく…

<ドラマ『星降る夜に』第5話レビュー 文:横川良明>

世の中には、大型犬を好きな人もいれば小型犬が好きな人もいる。

どちらがより優れているということは一切ない。どちらもそれぞれに愛らしい。

だからこそ、この世からこの手の論争が尽きることはないのだ。「あなたは、大型犬男子が好き? それとも小型犬男子が好き?」と。

『星降る夜に』第5話は、我らが小型犬男子・柊一星(北村匠海)に対し、大型犬男子・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)の猛威が牙をむいた回だった。

◆傷ができるほど色っぽくなる男。それが、ディーン・フジオカです

大人の男の魅力は、包容力だと思う。どんなときも温かく受け止めて、おおらかに包み込んでくれる大人の余裕。そこに関して言うと、深夜は最初から包容力しかなかった。

なんて言ったってディーン・フジオカである。器の大きさが国境を越えている。大抵のことは受け止めてくれそう。キャパシティが、IKEAのショッピングバッグくらいデカい。1週間分くらいの洗濯物は余裕で入るので、コインランドリーに行くときに大変重宝します。

そんなディーン・フジオカの包容力を、このドラマではあえて封印していた。その代わりに、ひたすらディーン・フジオカをコケさせ続けた。吉本新喜劇でもそんなにコケねえっていうくらいコケさせることで、あえて私たちに気づかせないようにしてきた、ディーン・フジオカのカッコよさに。

それが、この第5話はどうだろう。ネットで誹謗中傷にさらされる雪宮鈴(吉高由里子)に対し、深夜は大人の包容力で包み込む。鈴が強がろうものなら、「大丈夫じゃないときは大丈夫じゃないって言ってください」と優しく気遣う。

なんだその働く女子が言ってほしい台詞ナンバーワンは。弱ってるときにそんなこと言われた日には絶対に飲みに付き合ってもらう。2軒目では飽き足らず、カラオケまで連れ回す。ひたすら『うっせぇわ』を歌うから、横でタンバリンを叩いてほしい。

さらに、鈴に恨みを抱く誰かによって、家の前に中傷ビラまで貼られてしまう。恐怖に震える鈴のもとへやってきたのは、深夜。急いで鈴を家の中に避難させ、外からブロックを投げられようものなら、身を挺して庇ってくれる。

ただの同僚の鈴のためにここまでしてくれるなんてと思うけど、きっとこれは深夜にとっての罪滅ぼしなんだろうな。自分は、奥さんと子どものために何もしてやれなかった。だから、せめて目の前にいる人を救いたい。そんな胸の内を思うと、なんだか深夜のことがめちゃくちゃカッコよく見えてきた…!

しかも、顔にすり傷ができればできるほど色気が増してくるのがすごい。傷の手当てをするためにあらわになった肩から上腕二頭筋にかけてのラインなんて、ひっくり返るような色っぽさ。この人、ポンコツに見せかけていますが、たぶん腹筋は6つに割れています!

そんなカッコいいところがダダ漏れになったからこそ、これまで前面に押し出してきたちょっと鈍臭いところもやたら可愛く見える。

「白衣オン白衣」のトンチキ感も良かったけど、振り向いて「頑張るぞー!」と拳を掲げるところなんてめちゃくちゃ可愛かった。なんというか、あのガッツポーズし慣れていない感がいい。とてもLINE CUBE SHIBUYAを1人で埋める男とは思えない。

おディーン様の知らなかった一面に胸が高鳴りっぱなしの第5話です。

◆こんなにも胸がときめくのは、2人の愛が揺るぎないから

しかし、一星とて負けてはいない。今回は深夜との対比を効かせるためか、より小型犬男子のキャンキャン感が強めだった。

いいムードだったところを深夜からの電話に邪魔されてベンチを引っこ抜こうとしているシーンなんて、意味がわからない可愛らしさ。いじけて八つ当たりしている男の子ほど可愛いものはありません。

30も過ぎると嫉妬してくる男なんざ面倒くさいという感情しか湧いてきませんが、一星なら許す。

鈴とのデートが決まって喜びの舞を踊っているところも、職場の同僚がやっていたら「働けよ」としか思いませんが、一星ならずっとくるくる回っててほしい。それを眺めながら、私、VLOOKUP関数とか組みますんで!

が、何より今回の一星のいちばんのシーンは、あの車内キスだろう。あのじゃれつくようなキスもいいけど、なんというか、鈴を見つめているときの一星の口角がたまらない。いつもちょっと上がってて、たぶん北村匠海の口角からはセロトニンが常時生成されている。見ているだけで幸せな気持ちになる。

しかも、そこの吉高由里子がまた良くて。あの「わ〜い」は誰にも真似できない。下手に真似したら、一瞬でその場がシベリアになる。あの仕草をあれだけ可愛く成立させられるのが、吉高由里子が吉高由里子たる所以なんだと思う。

一星にキスされたあと、うれしさを持て余したように一星のアゴを二度突っつくところも、完全に飼い主と子犬だった。名犬ラッシーだった。

何が良いって、このドラマ、鈴と一星の関係がブレないところがいい。もちろん深夜は深夜で魅力的なんだけど、深夜自身、鈴に恋愛感情を持っているわけではなさそうだし、鈴も男性として意識はしていない。あくまで鈴の心は一星にある。2人の男性の間でフラフラしているヒロインじゃないところが見ていて気持ちいい。

一星にしてもそうで。北斗桜(吉柳咲良)は一星に好意を寄せているみたいだけど、一星は桜を妹みたいにしか見ていない。どこまでも鈴一筋。ラストで鈴は一星と桜がキスしているところを目撃したけど、たぶんそこで2人の間に変なヒビが入ったりはしないと思う。

今、私たちが見たいのは、何があっても揺るぎない愛。常に相手を大切に思う真心。鈴と一星にはそれをすごく感じる。だから、2人にこんなにもときめくし癒されるんだと思う。

◆大切なのは、目の前の人を信じる気持ち

物語としても、第5話に通底していたのは、目の前の人を信じる気持ちだった。

鈴の過去が明らかとなり、患者からの問い合わせが殺到するマロニエ産婦人科医院。世間体を考えた看護師長の犬山鶴子(猫背椿)は、院長の麻呂川三平(光石研)に、鈴に2〜3日休んでもらうように提案する。

けれど、麻呂川はその申し出を柔らかくはねのけ、鈴にはいつも通り働いてもらうと宣言する。

何もやましいことなんてないんだから、堂々としていればいい。麻呂川の鈴を信じる気持ちに鶴子も打たれ、すぐに自分の非を認めた。

誰が書いているかもわからないネットの声に振り回されるのではなく、目の前にいる人を信じる。それは、いろんな声が可視化されるようになった今だからこそ、大切な姿勢だと思う。

佐藤春(千葉雄大)とうた(若月佑美)もそうだ。春は自分の苦しみにいっぱいいっぱいだった。だから、うたがどう思っているかまでなかなか考えられなかった。

でも、一星に促され、目の前にいるうたとちゃんと向き合うことを決意する。自分の弱さは簡単に克服できなくても、目の前にいるうたが自分を信じてくれるなら、もう少しだけ自分を信じてみよう。そうやって春は親になる決心を固めた。

一星がつい深夜に嫉妬してしまうのも、余計なことを気にしすぎて、目の前にいる鈴のことをちゃんと信じられないからだ。鈴を見ていれば、不安になる必要なんてないことがわかる。それくらい鈴は一星だけを見ている。

私たちはつい遠くのことばかりに目がいったり、必要のないものに目を向けてしまうけれど、本当に大切にしなきゃいけないものや、自分がやらなくちゃいけないことは、意外に少ない。

目の前の人をただ信じること。目の前のことを精一杯頑張ること。幸せとは、そういうところにあるんじゃないかと『星降る夜に』を観ながら思った。(文:横川良明)

※番組情報:『星降る夜に
【毎週火曜】よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局

※『星降る夜に』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

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