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<WBC初選出>ヤクルト高橋奎二、急成長のウラに敬愛する先輩・石川雅規。「ダメというルールはない」打者を翻弄する新たな武器

3月に開催が迫る第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。

14年ぶりの頂点へ挑む侍ジャパンのメンバーに、東京ヤクルトスワローズの高橋奎二(25歳)が初選出された。

最速155キロを誇るサウスポーは、昨シーズン先発の柱として活躍。自己最多の8勝で29年ぶりのリーグ連覇に貢献した。

さらに昨年11月には、強化試合で初めて侍ジャパンに選出。2イニング4奪三振と猛アピールを見せた。

その活躍の裏にあったのは、偉大な“大先輩”の存在。

テレビ朝日のスポーツ番組GET SPORTSでは、急成長を遂げる25歳の軌跡を辿った。

◆「奎二に19番背負ってほしい」

2022年12月、ハワイでの優勝旅行を満喫していた東京ヤクルトスワローズ。

そのなかで高橋が多くの時間をともにしたのは、球界最年長の43歳、石川雅規。18も年齢の離れた2人だが、同じ左ピッチャーという共通点もあり、気心知れた仲だ。

日頃から高橋に目をかけている石川は、実は高校時代から彼に注目していた。

石川:「独特な足の上げ方というか、(ノーラン・)ライアンみたいな足の上げ方をするすごいピッチャーだなと思いました。線は細いけどいい球投げるなと。ヤクルトに入ってきて実際に見たら、自分のイメージよりすごくいい球を投げていたのでびっくりしたのが第一印象です」

高校時代、名門・龍谷大平安高校で通算3度の甲子園に出場した高橋。

当時最速145キロの速球派として素質が評価されると、ドラフト3位でヤクルトに入団。将来のエース候補として大きな期待を受けた。

しかし入団後、左肩や腰を痛めるなど、度重なる怪我に苦しめられることに。プロ5年間でわずか6勝10敗と、結果を残せていなかった。

6年目となった2022年、手を差し伸べたのが石川だったという。

石川:「やはりポテンシャルの高さを感じていたので、怪我さえなければという思いはあった。奎二に19番を背負ってほしいと思っています

自らの背番号を受け継いでほしい――。それほど高橋に期待していたという石川は、怪我防止のために“ウェイトトレーニング”をすすめていた。

高橋:「石川さんに紹介していただいて(ジムに)行きはじめました。正直言ってウェイトトレーニングとか好きではなかったんですけど、僕の身体は体幹とか抜けていたし、筋量も追いついていなかったので怪我をしてしまうことが多かった」

プロ野球に適応するだけの身体ができていなかったという高橋は、石川とともに筋力強化に努めた。

高橋:「勝てるピッチャーの身体にしていきたい。その一番いい例が石川さん。石川さん以上にやらないと石川さんみたいになれない。石川さん目指してやっていきたい」

◆「自分のフォームを見つけられました」

さらにもうひとつ、石川は高橋の“弱み”を見出していた。

石川:「暴れてボール、ボール、ボールってなって、ストライクを投げないといけない時に打たれていた。結局僕らってストライクゾーンに投げ込まないといけないので…」

とにかくボールが多かったという高橋。フォアボールやデッドボールをどれだけ出しているかを表す与四球率は、二軍でも一軍に上がってからもワーストクラスだった。

そんなコントロールの改善にも、石川のトレーニングは活きた。

高橋が取り組んだのは、フォームを安定させるためのトレーニング。とくに重視していたのは体幹や下半身の強化だ。

高橋:「手で操作するからボールがばらけるんです。軸足に残した力を下半身から(腕に)連動させて投げる

コントロールをよくするためには腕の操作に目がいきがちだが、本当に大切なのは軸足の安定。軸足を安定させることで、コントロールの改善につなげるのだという。

実際に、トレーニングをはじめる前と現在のフォームを比べてみると、明らかに現在の方が軸足に体重を乗せる時間が長くなっている。

※2018年のフォーム(写真・左)と2022年のフォーム(写真・右)

高橋:「体幹がしっかりして足に乗ってから、上半身に力をつなげてくる。今は体幹もしっかりしているし、立ったときもしっかり立てているので、そこをしっかり意識してフォームにつなげるためのウェイトが大事。それがコントロールにもつながってきていると思う」

トレーニング改革に着手した2021年、高橋はシーズン後半から先発ローテーションに定着。前年に比べ、フォアボールの割合は3.93から2.88と劇的に減少した。

極めつけは、その年の日本シリーズだ。

オリックスとの第3戦に先発した高橋は、ストライク先行の安定した投球を披露。9回133球を投げ、与えたフォアボールはわずか2球。生まれ変わった投球フォームで制球難を克服した。

高橋:「自分のフォームを見つけられましたし、初球から真っ直ぐでカウントが取れると楽だったので、『こうやっていけるんだ!』という感覚も出てきました」

◆バッターを翻弄する新たな武器

大先輩・石川にすすめられたトレーニングによって、チームの中心選手にまで成長を遂げた高橋。

さらに昨年は、石川の影響でもうひとつの改革に乗り出していた。それは、“プレートの踏む位置”を変えること。

昨シーズンの投球を見てみると、1塁側に立つ時もあれば、3塁側に立つ時も。それはまさに、石川が実践してきた投球術そのものだった。

かつて石川はその効果について、次のように語っていた。

石川:「プレートって足が端っこでもかかっていれば投げてもいいので、1球ずつ変えてダメというルールはない。青木(宣親)選手といろいろ話して、『1球1球変えると見え方変わる?』と聞くと、『変わる!』と言うので、だったらやってみようと

プレートの踏む位置を変えることで、打者からの見え方が変わるという。高橋もその方法を実践していた。

高橋:「(前の打席で)打たれたら1球ごとに変えたり。1塁側から投げるスライダーと3塁側から投げるスライダーは角度が違うので」

キーワードは“角度”。

右バッターを相手に、1塁側と3塁側から同じインコースに投げるボールを比べてみる。すると、ストレートを同じコースに投げても、プレートの位置を変えることで違う軌道を描いていた。

バッターから見たアングルでは、これだけ角度に差がつく。

ちなみに、一般的に左ピッチャーは、一塁側から右バッターのインコースへのストレートを武器にしている。いわゆる“クロスファイヤー”。左投手は約3割と数が圧倒的に少ないため、打者が慣れていないこのボールを駆使しているのだ。

かつては高橋もそのひとり。1塁側からクロスファイヤーを投げていた。

しかし、現在はクロスファイヤーを多投するよりも、3塁側にも立ちバリエーションを持たせた投球を実践している。

昨シーズン、その挑戦が実を結んだ象徴的なシーンがあった。

高橋:「中日戦があったんですけど、レビーラ選手に投げた時の真っ直ぐは非常によかった。あの投球はすごくよかったかなと思いました」

高橋が挙げたのは、8月2日の中日戦、7回無失点で白星を飾った試合。

迎えたバッターは来日1年目のレビーラ。キューバの国内リーグでホームラン王を獲得したこともある右の強打者だ。

2ストライクに追い込んでからの4球目。ストレートなら1塁側からインコースへ、左投手の決め球として使わることの多いクロスファイヤーを投じてもいい場面。

しかし、その時高橋が立ったのはプレートの3塁側だった。

外角へ153キロのストレートを投げ、空振り三振。クロスファイヤーとは正反対、もっとも角度のつかない球で仕留めてみせた。

高橋:「バッターも絞り球が増えると思う。その1球がバッターの残像に残ると思うので、そういう駆け引きもしながら投げていけば、球種を増やす必要ないですし。そういうところを大事にしていきたいと思います

◆「日の丸を背負って戦いたい」

石川の助言で投球改革に取り組んできた高橋。そんな愛弟子に対し、石川はさらなる飛躍を期待している。

石川:「左だと日本を代表するピッチャーになっていると思う。でももっともっと。今年の8勝は自分でも歯がゆいと思うんですけど、毎年最多勝争いする力を2、3年と続けて、高いレベルで野球をしている奎二を見たいと思います」

高橋:「来シーズンは二桁以上勝ち、今年目標にしていた規定投球回もしっかりクリアして、何かしらのタイトルを取れるようにがんばります。応援よろしくお願いします」

石川:「いいぞ!いけるいける!」

そして3月は、侍ジャパンとしてはじめてのWBCへ――。

高橋:「(WBCは)小さいころからテレビで見ていた大会。なんとか日の丸を背負って戦いたい。やっぱり自分の投球をしたいですし、真っ直ぐがどこまで通用するのか見てみたいですし、三振をたくさん取りたいです」

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜 深夜1:25より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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