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窪塚洋介、監督が“根負け”して生まれた『IWGP』キング役の強烈キャラ。当初はNGも2時間粘って「君の好きにしな」

2000年、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)の“池袋のカリスマ”安藤崇(タカシ)役で注目を集めた窪塚洋介さん。

2001年に公開された映画『GO』(行定勲監督)で日本アカデミー賞新人俳優賞と最優秀主演男優賞を受賞。『ピンポン』(曽利文彦監督)、『沈黙 -サイレンス-』(マーティン・スコセッシ監督)、『ファーストラヴ』(堤幸彦監督)、『もう一度キス』(NHK)など出演作多数。俳優だけでなく、モデル、レゲエDeeJay、カメラマン、ミュージック・ビデオ監督としても活動。幅広い分野で才能を発揮している。

18年ぶりの邦画長編映画単独主演となった『Sin Clock(読み:シンクロック)』(牧賢治監督)が2023年2月10日(金)に公開される窪塚洋介さんにインタビュー。

 

◆芸能界入りは母親の言葉に乗せられて?

神奈川県横須賀市で生まれ育った窪塚さんが俳優になったのは、母の影響だったという。

「母親が結構そういうのが好きな人だったんですよ。専業主婦で、社会に出たのも1年とか2年くらいの人なんですけど、華々しい芸能界みたいなトコが好きだったみたいで、子どもの頃から、『あんたもしかして芸能人になっちゃうんじゃないの?』みたいなことをちょいちょい言ってくることはあったんですね(笑)。

別に確信があったわけではないと思うんですけど、軽いノリで。それで、言われているうちにまんまと乗せられて芸能人になることに興味を持ちはじめるようになったというか。

中学を卒業する年にたまたま母のつながりで、当時お世話になることになる事務所の社長さんが、俺に興味があるから写真を送ってくれって言っているって言われて。うちのオヤジと横須賀の三浦海岸の浜辺に写真を撮りに行って、それを送ったら、『ぜひ一緒にやりましょう』みたいなことになって、というのがスタートだったんです」

-そこで演技のレッスンなどをされたのですか-

「はい。そこがゴリゴリの役者事務所で、『役者は歌手ではない。役者はタレントではない』というのをものすごくプラウドしている事務所だったので、『そうか。芸能人といってもいっぱいいろいろあるんだよな。そりゃあそうだよな』ってなって。

『そうか、俺は役者になるのか』という感じで、そこで英才教育と言っちゃうと言い過ぎだけど、役者の素養を耕すみたいなことをすごくしていただいて」

-基礎から叩き込まれたという感じですか-

「そうですね。発音、発声もやっていたし、エチュードもガチで公園でやっていたので、奇人変人扱いされて(笑)。

今だったら、俺のことをある程度知ってくれている人たちは、『何か仕事の関連でやってるんじゃない?』って思うだろうけど、当時は16歳くらいで誰も知らないわけですよ。

それが、公園とかで『今からあなたは江戸時代に生きていたのに、目を覚ましたら現代にタイムスリップして来ました。はい、やってみて』って言われて、先生がいなくなっちゃうんですよ。その場から離れて見ているんです。

それでいきなりベンチでパッて起きて、『何だ?ここは』なんてやっている姿は、ちょっと職質されるレベルの動きだったりするじゃないですか(笑)。

そういうことを1年間やっていたので、そこで根性を決めて芝居をするみたいなことも叩き込まれていたし、本の読み方だったり、あと自分と向かい合うということ。

自分は今どういう気持ちでどういう風に思っているから、こういう風に動いているということを芝居しながら、叩き込まれました。厳しかったけど、1年やっていたら一番大切なことが身についたし、本当にいい時間だったと思います」

※窪塚洋介プロフィル
1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)で俳優デビュー。『GTO』(フジテレビ系)、映画『GO』、『魔界転生』(平山秀幸監督)、『みをつくし料理帖』(角川春樹監督)、舞台『怪獣の教え』などに出演。2016年、マーティン・スコセッシ監督作『沈黙 -サイレンス-』でハリウッドデビュー(日本公開は2017年)。海外作品出演も多数。『同じ月を見ている』(深作健太監督)以来、18年ぶりとなる邦画長編主演映画『Sin Clock』の公開が2023年2月10日(金)に控えている。

 

◆監督の猛反対に粘り勝って誕生したカリスマキャラが話題に!

1995年、16歳のときに窪塚さんは、『金田一少年の事件簿』の第一シリーズ「首吊り学園殺人事件」で俳優デビューを飾る。いじめを苦に自殺したと言われている生徒・深町充を演じた。

「早く仕事がしたい、自分の力がどれくらい通用するのか、どこまで届くのか早く知りたい、試したいという思いが強かったですね」

-実際にやってみていかがでした?-

「はじめは死ぬ役だったんですよ。みんなから『お前、デビュー作で死ぬ役というのは、すごくいいことなんだぞ。大成するぞ』って言われて。『ああ、こうやって慰めてくれてるんだ』って思いながら聞いていたんですけど(笑)。

俳優としてという意味では、現場で学んでいったことがすごく多いので、最初の一歩目でどれぐらいのことができたかというのはわからないですけど。

きちんと届く人には届いていたんだなっていうペースで、新しいオファーをいただいて前に進むということができていたので、『あっ、やれるかも』っていう自信が少しずつ確信になっていくという感じだったと思います」

『GTO』、映画『MIDORI』(廣木隆一監督)などコンスタントに出演作が続く窪塚さんだったが、2000年、『池袋ウエストゲートパーク』で注目を集めることに。

-“池袋のカリスマ”タカシ役、インパクトがありました-

「そうですね。いまだにそれを言ってもらったりするので。まあ、不良でやってきたわけでもないので、くすぐったい部分というのはあったけど、自分のなかの不良像だったり、影響を受けたマンガだったりを投影しました。

やっぱり僕らは日本で育っていると、漫画と音楽ってすごく人格形成に関わってくるカルチャーだと思うんですよ。そこにご多分にもれず俺もいたので、そういう遊びの部分から得たことをどうアウトプットしていくかという作業といっても過言ではなかったですね。

まだ人生経験も浅かったし、本とかは読んでいたとしても、それを経験してないから、そういう意味では、張っていたアンテナっていうのは、間違っていなかったのかなっていう気もしました」

-タカシというキャラは、ご自身と監督のイメージは合致していたのですか-

「最初は、そこがぶつかって、堤幸彦監督に『ダメだ』って言われたんですよ。原作とあまりにも違うから、『何を言ってるんだ?君は』みたいな感じで、新宿で2時間くらい粘って。

本当に『このままいったらやけどするから。みんな大やけどの結果になっちゃうんで、それは本当にそうしたくない』っていうのを、多分それまでで一番頑(かたく)なに拒否して。それで、堤さんが根負けしてくれてというか折れてくれて、『もういいよ、君の好きにしな』みたいな感じだったですね。

それでやってみたら、だんだんだんだんその役が生き出すというか、1人で歩き出すみたいな感覚をみんなが共有してくれて。最後は宮藤官九郎さんも後半はもう俺にアテ書きみたいな感じで台本のセリフを書いてきてくれていたので、思いが届いたんだなという感じでした」

-すごく印象的なキャラでした-

「あのキャラは、漫画のキャラクターを何個か合体させている感じの作り方なんですよ」

 

◆主演映画『GO』で数多くの映画賞を受賞

『池袋ウエストゲートパーク』の放送が始まると圧倒的な存在感で、劇中の役柄と同じく若者たちのカリスマとなった窪塚さん。映画関係者からも熱い視線を集め、『GO』、『ピンポン』など次々と話題作に出演することに。

-『池袋ウエストゲートパーク』で業界も世間の反応も変わったと思いますが、ご自分ではどう感じてらっしゃいました?-

「あの頃は、『GO』があったりだとか、わりと一挙手一投足に社会が反応してくれて、良くも悪くも。それで叩かれもしたし、ちょうど『2ちゃんねる』とかが出はじめた頃だったので、ひどいこともたくさん言われながらだったんですけど、多分本人が一番自分が置かれている現状というのがわかっていなかったでしょうね。

『俺はもうこの道を行くんだ』みたいになっていたから、根拠のない自信と、それが確信に変わってきてしまっているタイミングだったので、ある意味怖いものもなかったし、どうにでもなると言ったら語弊(ごへい)がありますけど、敬意がなかったわけでもないけど、自分の道を歩いていけばいいんだという風に強く思っていたので、そこが支えだったし。

ただ、それが行き過ぎた結果、理由ははっきりわからないんだけど、マンションのベランダから落っこちるということにつながっていたんだろうなあとは思うんですけど」

-すごい勢いでお仕事されていましたね。『GO』で日本アカデミー賞をはじめ多くの賞を受賞されて、さらに注目を集めることになって数多くの映画にも出演されることになりますが、当時はご自身の判断で選択されていたのですか-

「そうですね。ただ、今よりもっと当時の事務所と二人三脚だったので、そこは相談しながら、そして本を読める大人の意見ももちろん聞いていました。納得しないでやったことはひとつもないけど、そこに至る過程で、手を引いてもらったり、背中を押してもらったりということは多々あったと思います」

-あえてユニークな作品に出演されていた感もありましたが-

「ちょうどそこはヒップホップ、レゲエというブラックミュージックと出会う頃と重なってくるんですけど、そのときに『フェイク、フェイク』という言葉が無茶苦茶使われていて、要はニセモノ、『あいつはニセモノだ』みたいな。

そのディスのワードっていうのがすごくパワーがあって、『俺はそうじゃねえ』って、みんなが思っていたとは思うけど、俺もそう思っていて。どこかで『自分がやっていることって作りもの』っていう感覚がすごくあった分余計にですよね。

今となっては、その作りものだからこそできること、作りもののなかにどれだけの本当のことを入れていけるかって思うんだけど、当時はまだ若かったから、たとえば『テレビドラマやダサい俳優のフェイクさとか、安っぽさ、チープな感じっていやだよね』っていう感覚がもっと強かったんですよ。

なので、そこには近づいて行かなくなったし、結果それで自分も自分の思っていることを表現するってレゲエミュージックを始めることになるんですけど、ケガをした後に。

『俺はフェイクじゃねえ』っていうのを本で表現したり、映画の宣伝なのに映画より前に出て9割自分の話をして、1割映画の話をしているみたいなやつだったので、今思うと、失礼なやつだなあと思うんですけど、そういうタイミングでした」

『GO』でさらに注目を集めた窪塚さんは、『Laundry』(森淳一監督)、『ピンポン』、『凶気の桜』(薗田賢次監督)、『魔界転生』など主演作に立て続けに出演。2016年にはマーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』に出演することに。次回はそのオーディション、撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:佐藤修司(botanica)

©2022映画「Sin Clock」製作委員会

※映画『Sin Clock』
2023年2月10日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
配給:アスミック・エース
監督・脚本:牧賢治
出演:窪塚洋介 坂口涼太郎 葵揚 他
理不尽な理由で会社をクビになり、社会からも家族からも見放されたタクシードライバー・高木(窪塚洋介)が、偶然手にした巨額の“黒いカネ”強奪のチャンス。偶然の連鎖が引き起こす、たった一夜での人生逆転計画を描く“予測不能”の犯罪活劇が誕生。

「一度つまずいたら、再起のチャンスはどこにもないのか?」そんな現代を生きる“持たざる者”のリアルな空気をスクリーンに焼き付け、想定外のラストへと走り出す新時代のサスペンス・ノワールが誕生。